第一歩
――まさかこれほどまでに辛いものだとは……
【Fランク】
この称号があるおかげで周囲からは笑われ、明らかに
他のランクの能力者との扱いが目に見えて違っていた。
いわゆる冷遇されてるって奴だ。
おまけに能力者として認定されたからにはプレートを装着する事が
義務付けられている。 これは能力者の紋様を投影する魔道具だ。
基本的に常時、紋様を投影している訳ではないが、
紋様を映し出している能力者のプレートを見てみると
明らかに派手さとかっこよさが俺のと違い過ぎる。
俺のプレートに紋様を映し出しても、目を凝らさないと
見えないレベルの小さい黒い点が出てくるだけだ。
……恥ずかしい。 この紋様で
「俺は能力者だ」なんて言える訳がない。
俺のプレートは今はただの薄い板にすぎないのだから。
「……やってやろうじゃねえか」
おれは今のこの状況には絶対に屈しない、屈してたまるか。
ここから這い上がって這い上がって、這い上がって見せる。
Fランク能力者の底力って物を見せてやる!
俺は握り締めていた拳を空高くかかげた。
苦難の道? そんなもの簡単にわたりきって見せる。
どんな境遇に立とうが、俺がやりたい事は変わらない。
ギルドを立ち上げ、人助けをする、それだけだ!
――こうして俺は自分のギルドを持つため、放浪の旅に出た。
年数にして3年。 俺はその旅でギルド立ち上げに必要な仲間を集め
自分を限界まで鍛え上げた。
そして俺は戻ってきた。
ここから始まる俺の物語。
王都の門を抜け俺は、3年越しにギルドに訪れた。
ギルドを持つ為の条件はすべて満たしている。
今度こそ、俺は自分のギルドを持つ事が出来るだろう。
ここからだ。 俺は期待に胸を膨らませながら
ギルドマスター生活への第一歩を踏み出そうとしていた。