提案
王都に着き、俺は他の物には目を向けず、一目散に
ギルドの申請を行うために、ギルドの本部へ出向いた。
「こんにちは。 今回はどういったご用件ですか?」
「自分のギルドを持つために、ギルド申請をしに来ました」
声を張り、元気よく。 受付のカウンターに
ドン、と手を叩きつけながらそう伝える。
「そ、そうですか。 ならまずは能力者の証明として
プレートをご提示ください」
「プレート? なんですかそれは?」
受付の女性はポカンとした顔をして俺を見つめていた。
もしかして、ギルドを持つには何か条件を満たしていないと
いけないのだろうか。
俺は恥ずかしながらもギルドを持つために知っておくべき基礎知識を説明してもらった。
説明によると、ギルドを持つためには二つ条件があり
一つ目は俺が資格の儀という儀式を受けて
能力者としての力をその身に宿す事。
二つ目が、最低でも3人のギルドメンバーが必要だと説明を受けた。
俺は受付から資格の儀はどこで受けられるのかと聞き、
初めての方ならこの本部内で儀式を受ける事が出来ると教えてもらい
儀式を行う場所に案内された。
――そして
「あなたには能力がありません」
あまりにも悲痛な宣告に俺は酷く困惑していた。
え、じゃあ それってそういう事だよな。
いや、何かの間違いなのかもしれない。
……でも確かに能力が無いって言っていたよな。
現実を受け入れられない。
いや受け入れられなくて当然だった。
――それじゃあ俺は何だ、このままじゃあギルドを持つことが出来ないってのか?
俺が費やして来た時間は何だっていうんだ?
言葉として喉まで出そうになったが、何とか持ちこたえた。
まだ色々な感情が自分の中で巡り巡るが、まずは冷静になるんだ。
俺は深く、深く 今までにした事のないくらいの深呼吸をし、
少し落ち着いた頃にどうにかギルドを持つ方法はないかと聞いた。
「何とかして俺を能力者として認める方法は無いんですか!?」
内なる気持ちが爆発してしまい、荒っぽい声で質問してしまった。
無理だ、この状況で落ち着けるわけが無い。
冷静になっていられるか。
俺には叶えたい夢があるんだ、引き下がるわけにはいかない。
俺は押しつけがましく鑑定士に迫った。
何度も何度も、ねだるように能力者として認める事は出来ないのかと。
鑑定士は何度も口を開こうとしていたが
その度に、言うのをためらい口を閉じる。
俺はここでふと我に返る。
何か言いたくない事情でもあるのだろうか。
俺はそう感づき、自分の取っていた行動を改まった。
らしくもない事をしてしまった事に情けなくなり俺は
鑑定士含め、周りの人の顔を見る事が出来なかった。
「……無礼な行為を働いた事と
無理な相談をしてしまった事を許してください。 そしてすみませんでした。
何か事情があるのならこれ以上、俺も無理強いはしません」
非を認め心の底から謝った。
誤ったがそれでも――。
能力者として認めてもらえなければ
俺の夢はあえなく潰える事になる。
……だが、迷惑だけはかけられない。
俺は困っている人を助ける為にギルドを持つと決めたんだ。
俺が困らせる立場になってどうする。
悔しいけど、俺には資格がなかった。 ただそれだけの事なんだ。
事実を認めたくはないけど、これ以上迷惑をかける事は出来ない。
俺は足取りを重くしながらここから立ち去ろうとしていた。
だがそんな俺の様子を見てか、鑑定士の方から俺に声を掛けた。
「……能力者として認定する方法が
あるにはあるのですが、あなたは特例なんです」
「特例!? どういう事ですか?」
まだ希望はある。
その言葉に俺は食いつくように反応を示した。
しばらくして鑑定士が俺の顔色をうかがいながらその口を開いた。
「能力者としての反応が出ている以上、
私たちもあなたを能力者じゃないと認定する事は出来ません」
俺に能力者としての反応がある?
じゃあ何で俺は能力が無いって言われたんだ?
鑑定士がどうしてこんな訳の分からない事を言っている?
あるならあるとハッキリ言って欲しい。
……もしかして全く使い物にならない能力の反応が出たとかそういうパターン?
俺は独り言のようにブツブツと呟いていたらしく、鑑定士の耳にも届いていた。
鑑定士は、俺には使い物にならない以前に
本当に能力すら無いと申し訳なさそうに告げた。
でも反応があるってどういう事なんだ。
俺は不安と希望と焦りでどうにかなりそうだったが、鑑定士の口から
俺にとっては嬉しい言葉、俺以外は与えられるのを拒む称号
【Fランク能力者】として認定する事は出来るという提案を持ちかけられた。