2つの魔剣 2
最後に選択肢があります。次話の2Aか、2Bにおすすみください
翌朝・・・ショックなことはあったけれど、そんなことで試験に支障をきたすわけにはいかない。
ライオネスは何も言わず、何もなかったかのような態度だった。それがすごくありがたかった。
私は正騎士承認試験をなんなくこなし、あとは結果を待つだけになった。
結果は団長の部屋で発表される。
私はドキドキしながら団長の部屋に向かった。
部屋の前までくると、なにやら話し声が聞こえる。
ライオネスと団長と・・・もうひとりは・・誰だろう?
「・・・決闘していいって言ったのはそっちだろう?だから・・・」
この声・・どこかで聞いたことがあるような気がする・・。
「剣は使うなっていってあったはずだろうが!」
ライオネスはちょっと怒ってるみたい。
「・・・正当防衛だ。先に得物をぬいたのはあっちだった。俺はやむなく・・・」
「証拠もないのに信じられるか!!」
なにやらライオネスが声の主と言い争いになっているようだ。
団長が間に入った。
「まあまて。ライオネス。今回のことはお前にも責任があるのだからな。
直接手を下したのが彼だったとしても、決闘を促し、放置した罪も軽くは無いぞ。」
「う・・・」
言葉につまるライオネス。決闘を促し・・ってことは、酒場での傭兵さんの件だろうか。
「それでも世界最強と謳われたクレール王国騎士団の騎士なのか?
噂で聞いてるよりたいしたことないな」
「!!!・・てめ・・」
傭兵さんらしき人にそういわれて、ライオネスが敵意をむきだしにしている。
「国王陛下からは、こちらで処分を決めるようにとのお達しだ。
・・・クライストといったか、傭兵」
「はい」
団長の声・・・。やっぱり傭兵さんの一人らしい。クライストって名前なのか・・・。
「貴様には、国内で事件を起こした罰として、しばらくここの騎士団で働いてもらう。」
ええっ!?
「団長!?本気ですか!?」
ライオネスの驚いたような声。
「こちらは猫の手でも借りたいほどなんだ。騎士団内なら妙なまねもできんだろう。
もちろん監視役はつける。存分にこきつかってやるから、覚悟しておけ」
「・・・わかりました。やむなくだったとはいえ、罪は罪だ。裁きは受けますよ」
嫌だというかと思えば、傭兵・・クライストはあっさりと承諾した。
「・・うむ。トリスタン!」」
団長はトリスタンを呼ぶ。セレさんとともに団長の補佐をしている騎士だ。部屋の中にいたらしい。
「はい、団長」
「物置部屋がひとつあいていただろう、こいつをそこに案内してやれ。目を離すなよ」
「了解しました!ほら、さっさと来い!」
そんな怒鳴り声が聞こえたかと思うと、がちゃりとドアが開いて、トリスタンと傭兵・・クライストが出てきた。
トリスタンは私に気づいて、くいっと指のジェスチャーで部屋の中に入るよう促す。
トリスタンのあとから出てきたクライストは、私の姿を見ると一度立ち止まった。
あ・・・あの青い髪のほうの人だったんだ
彼が私を見つめて、私も彼を見つめ返す。やはり一見して傭兵とは思えないような風貌だ。
線が細く、中性的ですごく綺麗な顔立ち。しなやかな体つきに傭兵の装備が少し違和感があるほどだった。
彼の瞳の奥の瞳孔が一瞬だけ青く光った気がして、私は瞬きする。
瞬間、クライストがふっと微笑んだ。トリスタンがクライストに叫ぶ。
「何やってんだ!さっさとこい!!」
クライストは意味ありげな笑みを私に向けてから、きびすを返してトリスタンのあとに続いた。
なんだったんだろう・・・彼のあの瞳・・・
私は疑問に思いながらも団長の部屋に入った。
「・・・ずいぶんと素直だったな。正当防衛だというのは信じてもいいかもしれない」
団長がクライストの出て行った方向を見てつぶやいている。
「正当防衛でも、人殺してあんな平気な顔してるやつ、俺は信用できねえ・・・」
ライオネスが首を振った。
その後、私の試験結果が通知され、結果は合格。
すごく嬉しい反面、少し不安が胸に残る。
これから、うまくやっていければいいけど・・・。
その後、私は正騎士になってからの初任務まで、しばしの休暇をもらった。
ちょうど明日は街で春のカーニバルが開かれる。
町の様子でも見に行こうと本部を出ようとすると、セレさんと行き会った。
「イレイン!試験お疲れ様だったな。結果は・・・どうだった?」
受かったことを告げると、セレさんは自分のことのように喜んでくれた。
「今夜は非番なんだ。よかったら夕食にお前のお祝いをさせてくれないか?」
「ホント!?いいの?」
セレさんは嬉しそうにうなずいた。
「ああ、もちろんだ」
私はセレさんと夜に門のまえで会う約束を交わして、街に出た。
街はカーニバルの準備で大忙しのようだった。
春のカーニバルは町中に花を飾る別名花祭り。花かごを持った人たちがたくさん通りを歩いていた。
家や道には色とりどりの花が添えられて本当に華やかだ。
なんだかうきうきした気分になって、私が歩いていると、後ろから名前を呼ばれた。
「イレイン!」
振り返るとランスロットがマントをなびかせながら通りを歩いてくる。
「あ、ランスロット!」
『きゃあ~っ』
道の端から黄色い声があがって、そちらを見やると集まった町の女性たちが皆ランスロットを見つめている。
前々から思ってたんだけど、ランスロットってすごく女の人に人気なんだよね・・
「ランスロット様!これ、どうぞ」
花かごを持った女の人がランスロットに一輪の花を差し出す。
「きれいだな。どうもありがとう」
ランスロットが微笑んで花を受け取ると、女性は頬を赤らめて恥ずかしそうにした。
女性の視線を集めながら私の前にきたランスロットは、こそっと耳打ちした。
「・・・少し、移動するか」
私はうなずいた。毎回、というわけじゃないけど、たまにこういうことがあるとちょっと通りでは話しづらい。
私たちは祭りの雰囲気にすでに酔いしれる街中を通り、街の西にあるガイアの森に向かった。
ガイアの森は、別名精霊の森。クレールの民が神として崇める精霊たち・・ガイアが宿るとされる巨大な神木が祭られている。
神木は澄んだ泉の中から生えていて、はじめてみたときにはなんて神秘的なんだろうと思ったものだ。
森の中はいつでも静寂に包まれて、街の喧騒とはまた打って変わっていた。
「町はカーニバル一色だな」
神木を見上げながら隣でランスロットが言う。私はうなずいた。
「うん。街の中にいるだけで楽しくなっちゃう。明日は晴れるといいな」
「・・・そうだな」
ランスロットは微笑み、泉の水を見つめた。
皆お祭りの準備で忙しいせいか、森には私たちふたりしかいなかった。
「イレイン、ところで・・・試験はどうだった?」
「合格だったよ!大丈夫!」
元気よく答えると、ランスロットは本当に嬉しそうに笑った。くしゃくしゃと頭をなでられる。
「そうか、それはよかった。がんばったな」
「うん!」
「そうか・・・・・・・」
ランスロットの紺の瞳が、一瞬だけ少しさびしげに見えた・・様な気がした。
・・・ランスロット?
ランスロットはしばらく、黙ったまま泉の水面を見つめていたが、やがて気をとりなおしたように私のほうを向いた。
「今夜は何か、祝いでもするか」
「あ・・・」
「どうした?」
私は口を押さえた。ランスロットが問いかけてくる。
さっき、セレさんと約束しちゃったしなあ・・・どうしよう・・・。
セレさんには悪いけどお断りして、ランスロットの誘いに応じる→次話 2Aへ
セレさんとの約束が先だったし、ランスロットの誘いを断る→次話 2Bへ