最終話
デスウィークを見事乗り越えたました!!
お待たせしてすみません。
ようやく最終話投稿します!
6月入っても忙しいってどういうことよ…………。デスウィーク期間は5月までではないのかっ!?(゜ロ゜;
君が従姉妹だからって、それが何だというんだい?
君は確かに強いよ?
質、量共に最高峰の魔力をその身に有し。
武術の腕前も、幼い頃から鍛錬をしていたお蔭で…………なる程、この世界でも十分に通じるだけの実力は確かにあるね。
色々と葛藤もあったみたいだけれども────君は、必要に応じれば人を殺めることすら出来るようになったみたいだし。世界に順調に適応しているようで僕もその点は安心しているしね。
でもさ………それと僕が君に喜與子のことを伝えるのは全くの別物だよね?
だって何だかんだと言ったって君よりも強い奴なんて沢山いるし。
例えばカムイワッカ。
彼は強いよね。混じり者だとしても、彼は実に竜の力が良く馴染んでいる。生まれながらの混血ですらないのに、彼は見事、竜の力を許容仕切った。驚嘆に値するよ。
ん? あぁ………実彩ちゃんはそこまで知らないのか。どういう意味かって言った通りの意味だよ。彼に興味があるのならば自分で調べてみたら? 別に隠されているわけじゃないからすぐに調べられると思うよ。
彼の他だと………そうだね。
コルト公国の工作員であるホワイトウルフのナジムかな? 彼の相手はカムイワッカがしてくれたから良かったものの………君だったなら、どうなっていたのかな? ────うん。洞窟内ならば君は地の利を利用し尽くして勝てたかも知れないね? でも本当にそんな状態になったのならば果たして君は無事でいられたのかな?
─────無理だね。
断言出来るよ。
君は………恐らく、良くて満身創痍。もしくは五体満足ではいられなかったと思うよ? そんな状態で勝っても、果たして君は本当に勝ったといえるのかな? そんな、負けたも同然の怪我をしてしまってわ。もはや勝ったとは言えないよね? 何故、そんなことになるのか分かる? それはね─────君には圧倒的に足りないものがあるからだよ。
技術、思考能力、体捌き、行動力、いざという時の決断力その全てに於いて君は素晴らしいの一言だね。流石は、喜與子の血族の子だよ………。
この時、実彩にはセフィロトの瞳に、僅かに郷愁の色が宿っているのが分かった。
分かって、しまった。
その色が、誰を想って浮かべたものなのかを。
だからだろうか。
セフィロトの言葉を遮ることも、言い返すことも出来なかった。─────出来たのは、黙って聞くこと、だけだった。
ねぇ、実彩ちゃん。
君の足りないものはね。それは経験だよ。
それこそが君の最大の弱点であり、欠点だ。
簡単には拭えない致命的な疵…………どんなに君が努力したとしても、年単位の時間は覚悟しなくてはならない。
君がまかなわなくてはならない『足りないもの』とはそういうものさ。
………君も薄々は気付いているんでしょう?
喜與子には、僕には敵がいるってことがさ。
その敵がコルト公国………より正確に言うのならばコルト公国の影にいる誰かだと。
喜與子や僕でさえも適わなかった相手に、彼女よりも遥かに劣る君が動いて何が出来るっていうの?
ん? ああ………紛らわしい言い方だったね。別に僕も喜與子も奴らに負けてはいないよ。どちらかといえば痛み分け、かな? 奴らは喜與子を封じ込めて、僕達は彼等の『力』を削いだ。最も、その所為で僕も向こうも膠着状態に陥って互いに手出し出来なくなっちゃったんだけれども。
でも、奴らは動き出した。
恐らくは僕達が削いだ『力』が回復したか………もしくはそれに代わる何かを手に入れたのか。そればかりは分からないけれど………喜與子を欠いた僕達としては超ピーンチって感じなんだけれども。だからといって実彩ちゃん。君に頼ろうだなんてこれっぽっちも思っていないんだよ。そりゃあさ。人手は幾らあっても足りないし、欲しいのも事実だ。
でもね? 今の君では力量不足、足手まといだ。居た方が寧ろ足を引っ張られてしまってどうしようもない。
実彩ちゃん。
今現在の君の立位置はそこなんだよ。
だから僕達は君の手は借りないし、借りようとも思わない。
そんな顔をしても駄目だよ。
君が足手まといなのは事実なんだもの。
だからね?
『君は、大人しく、異世界ライフでも楽しんでいてよ。下手に僕達のことに手を出されてもこっちが迷惑しちゃうからね』
ニッコリと笑うセフィロトはそのまま踵を返そうとして何かを思い出したのか。実彩に再び顔を向けた。
『そうそう忘れる所だったよ! 実彩ちゃんのニトについてだけどね。その子との意思疎通が出来るようになったのは実彩ちゃんが無意識にニトに助けを乞うたからだよ。ニトはね。最初から君に話し掛けていたんだよ。生まれ落ちた瞬間からずーっとね? それなのに実彩ちゃんてば。ニトの声をずっと無視してたんだもん。幾ら実彩ちゃんの血から生まれた存在でも。嫌になっちゃうよね~』
クスクス笑うセフィロトの姿に、実彩は俯き、何も言わなかった………。
そんな実彩を見やって、セフィロトはどこまでも嬉しげに振る舞う。
『それじゃ。用は済んだしそろそろ帰るね~』
バイバーイっと来たときと同じように突然消えたセフィロト。気付けば、実彩の顔には仮面が着いており、ニトによって抉られた地面も元通りにっていた。
そのニトも、ローブの内側に仕舞われ沈黙を保っている。まるで先ほどまでの出来事が白昼夢であったかのように感じられる………。
実彩は強く唇を噛み締めて俯き、その場を動かなかった。
『~~♪。~~~♪』
鼻歌混じりに自らの本体である世界樹へと舞い戻ったセフィロトはそこに先客がいるのを見て立ち止まる。
向こうもセフィロトの気配に気付いたようで、喜與子の姿をしているセフィロトを見て少し顔を顰めるも、すぐに表情を取り繕ってセフィロトの元へと進み出した。
「…………どちらに出掛けしていらしたのですか? セフィロト」
『やあやあ! シオン! ひっさしぶり~ナニナニ? 喜與子の様子でも見に来たの?? 君がアルフォードを連れてこないだなんて、めっずらしいじゃない(*ゝω・*)ノ♪』
「アルさんは、今は所要で出ている最中なんですよ………それで? どちらに出掛けていたので?」
再度問い掛けるシオンの様子にごまかせそうもないと悟ったセフィロトは正直に答えた。
『ちょっとそこまで☆』
正直に答える気はさらさらなかった。
「…………出掛けた先は、以前、貴方がおっしゃっていたあの人を目覚めさせることが出来るかも知れない人の元、ですか?」
そんなセフィロトに内心ため息を吐きながらもシオンは切り込んだ。シオンにとって彼の人は、まさしく世界の中心────いや、世界そのものであった。その人が目の前で倒れ、眠り続ける様を見続けるのは死んだ方がマシだと感じる程に辛かった。
だからこそ、シオンは彼女を起こす術を掴んだかも知れないセフィロトに縋る。
喜與子の目覚め。
それだけがシオンが生きている理由だった。
『んん~? それを聞いてどうするの??』
「無論。この場にお越し頂きたいと思っております」
間髪入れず答えるシオンにセフィロトはダメダメ~っと言いながら肩を竦めた。
『あの子には、もっともっーと成長して貰わなくちゃ困るんだよね。…………あの子はね、喜與子とはまた別の意味で人からの助けを借りようとしない子だから。その辺もうちょっと柔軟になってもらうつもりなのに…………それなのに横槍入れられちゃったらはっきり言うと迷惑なんだよね!? o(`ω´*)o』
ぷんぷん怒り出すセフィロトに、しかしシオンは退かなかった。
「セフィロト…………貴方が世界の安寧と秩序を護ろうと必死なのは理解しています…………しかし、私達には、私にとってはあの人が居ない世界など滅んでいるのと変わりはありません! どうして、どうしてあの人が犠牲にならなくてはならなかったのか…………。何の罪もなかったあの人が、愚かにも道に外れた者共の悪罪を贖わなくてはならないのですか?」
『さぁーねー……』
そんなこと、僕にだって分からないよ…………。
全知全能でもなければ完全無欠でも無い、ただひたすら世界を支える『生きた柱』として存在するセフィロトにとって、人間の…………ましてや宿主の思惑など、分かり得ようがなかった。
正直。セフィロトは喜與子に対してそこまで身を削ることを望んでいなかったし、求めてもいなかった。
けれど、喜與子は決行した。己がどうなるか、周りがどう思うのか分かった上で。
『………君達人間の心情なんて、僕には良く分からないけど。シオン。君だって今は喜與子の事ばかり気にしていられないんじゃない? 掴んだんでしょ? 彼奴らの居所を………さ。だからアルフォードは君の側にはいないんだよね~?』
「!?」
『驚くことはないでしょ? そっかそっか………ようやく、君達も本腰を入れ始めた訳か。神皇も、やっとこさ決意が固まったようで何よりだよ』
「全て────お見通しですかっ」
『そりゃあね~。伊達に数千年も付き合ってれば、人間の心情は分からなくとも何となく察するって☆ それにしても神皇も今代になってやっと重い腰を上げたし~? これから大変だ♪』
「…………」
苦々しい顔をするシオン。
セフィロトは浮かべていた笑顔を引っ込めた。
『やることがあるなら何時までも僕に構っていないことだね。手が回らなくなって困るのは君達だけじゃ無いんだよ? 喜與子の事は僕が何とかしてあげる。だから君達は君達がやるべきことをするんだ。分かったかい?』
それはセフィロトからの最終告知であった。
喜與子の目覚めに関して、余計なことはするなという。勿論、シオンもここには居ないアルフォードも納得しないことはセフィロトは分かってはいたが、実彩が自分の思惑通りに動くと確信しているセフィロトからすれば、二人が実彩に接触することは看過する出来ない。
『大人しくお仕事してね♪』
人の良い笑顔でそう告げれば、もはや納得出来ずとも頷くことしか、シオンには出来なかった。
その頃、当のアルフォードは人払いと隠蔽の幻術の掛けられているある深奥の遺跡に来ていた。
遺跡の奥には複数の罠が仕掛けられており、
中でも地下へと続く隠し通路には巧妙に罠が仕掛けられていた。
その罠の中をかいくぐり、その先に目にした人の影を確認すると用は済んだとばかりにその遺跡を密かに後にする。
─────はずだった。
「はぁ、面倒ですね………」
「おやおやおやぁあ? 随分な言い草ですねぇ? 勝手に入り込んだネズミの分際で」
アルフォードの前に現れたのは執事服を着た若い男。────少し前に、バズーラ家に潜り込み暗躍していたジェイル。
「んんん~? まさかまさかまーさか…………世界樹の守護者の一人、アルフォード~? は、はははははは!! これはまた…………随分な大物が出てきましたね! “漆黒の武神ニケ”の血族といい! セフィロトも本格的に動き出したということですか!!」
「────何?」
ジェイルの言葉に、アルフォードが反応する。
(あの女の………血族? そんなもの、居るわけが無い…………)
しかしジェイルの様子から、嘘を吐いているようには見えない。
「(血族とやらは貴様の仕業か、セフィロト)……………随分と興味深い話ですね。しかし…………私も忙しい身。詳しい話は後でお聞きしましょう──────牢屋でな」
アルフォードが低くそう告げのと同時に、二人はぶつかり合った。
また、別の場所では。
「おい! トロトロしてないでさっさとしろ!!」
「はい、先生!」
バイエル国の英雄“狼の牙”ことアレン、その彼の後からスカイ領主子息リュカが肩で息をしながら走っていた。
実彩と別れた後、様々な迂曲を経てアレンに弟子入りしたリュカはアレンから剣術の手解きを受ける傍ら、派遣騎士団の雑用としてこき使われていた。
「全く……せしわないことですね」
「クリストファー殿? 貴方はリュカ殿の様子や口を動かす前に、まずは目の前の書類に目を通しつつ手を動かしてくださいね?」
所変わって鍛錬場を一別出来る窓辺からアレンとリュカの様子を窺っていたクリストファーは背後から掛けられた声にビクッと震えた。
「フィン副団長………」
「そのように余所見をする余裕があるならば…………こちらもお願いしても大丈夫ですね?」
ドサッと更に追加された書類の束にクリストファーは軽く引きつった。
街が夕焼けに染まったかのような鮮やかなオレンジ色の瞳がクリストファーの顔を映し出す。
………暖かな色合いの瞳の持ち主が、その文字通りの人物では無いだろうことを、クリストファーは薄々感づいていた。
「あの、フィン副団長………この書類の束はいったい……………?」
「我らが団長がこさえられた始末書の数々ですが何か?」
とても良い笑顔で言ったフィンから思わず顔を背けるクリストファー。
彼もまた、自らの足りないものを補う為にリュカと共に派遣騎士団へと世話になることにしたのだが…………何故かそこで、副団長のフィンに目を付けr────見込まれ。クリストファーはフィンの下に付くことになったのだ。
机に大量に積み上げられた始末書を見て、実は、単なる事務処理人として引き取られたのではないかと最近は疑っている。
「早く終わらせてしましょう。でなくば…………また団長がリュカ殿を伴って仕事を増やすやも知れませんし」
「……………………」
突っ込み所が多過ぎて、クリストファーはもはや何も言えない。そして仕事も増えていく。
どこか遠い目をしながらも。クリストファーは手に持つペンにインクを付けた。
ザッ、ザッ、ザッと道無き道をひたすら進む一人の少女。ロープを目深く被り、尚且つ、鼻先まで覆う仮面を付けている為にぱっと見では小柄な少年にも見える彼女は目的地であるタージマハル国へと最短ルートから少し外れた獣道を進んでいた。
『なぁなぁ、主さんや。なしてこないな道通るねん。普通に正規の道行けばいいやんけ』
彼女の頭の上にちょこんと鎮座している小さな子ウサギが実彩に話し掛ける。
「何でって…………強いて言うならば修行? 少しぐらい獣道を通るからって予定の日数にさして影響があるわけでもないし。足腰鍛えつつ周りの気配にも気を配って、仮に魔獣或いは野党の類に襲われても、修行の糧にするだけだがな。セフィロトに経験不足と言われてしまった以上………少しでも力を付けられる機会を不意にはしたくない」
『は~ん…………そらまた随分と殊勝なこって』
興味なさげにクワッと欠伸を欠くニトに実彩は肩を竦める。
セフィロトに言われてからしばらく気落ちしていた実彩。特にニトに関しての扱いを指摘されたことについては自身でも驚くほどに衝撃を受けていた。
心の奥底で、見た目が可愛らしいニトに対して、武器としてではなく庇護対象として見ていたことに気付いた。それから実彩はニトに面と向かって向き合った。結果として武器としてちゃんと扱われていない、頼ってこようとしないことに対する不満と怒りを抱いていたニトの心情を理解した。
するとどうだろう。
今までノイズが走っているように聞こえにくかったニトの声が鮮明に聞こえるようになったではないか。これには流石の実彩も驚き、その後猛省した。
己が、どれだけ周りに関心が薄く、無意識に傷付けていたのかを。
(何時の日か、クリストファーやリュカともちゃんと話せたらいいな……………)
リュカは喜ぶだろうが、クリストファーならば驚愕しそうなことを思いながら実彩は一歩ずつ確実に道を踏み歩いて行く。
「取り敢えずは、オッサンが私らと合流するまでなるべく経験を積まないとな」
『…………別に、あの竜人のオッサン待たんでもええんやないか? なしてそんなに時期を合わせようとすんねん?』
「オッサンを確保して弟子入りする為さ」
『─────はぁああああああ!!?』
驚愕するニトを尻目に実彩は何でもさなそうに言った。
「セフィロト曰わく。私に足りないものは経験らしいからな。だがいくら下積みがあるとはいえ、この世界では不慣れなことばかりだ。だった…………明らかに私に足りない経験を十二分に持っているオッサンに師事することは間違いではないさ」
何よりカムイワッカの実力は実彩よりも遥かに上だ。戦闘技術を磨くという点に対しても実彩が今知る上ではカムイワッカが一番の適任者であった。
何より既にカムイワッカは英雄と呼ばれる男を育て上げた人物だ。そしてなんだかんだと人も善い。
(あの手のタイプはしつこく頼み込めば最後は確実に折れる)
そう内心で確信している実彩は、ほくそ笑んだ。
悪い顔やな~とニトが呆れている風情でいるが、生憎ニトは実彩の頭の上に居る為、実彩には全く気付かれてはいなかった。
変わらなければならない。
今、自分が求めているのは己自身の変化だ。
たとえそれが、そう仕向けられた道筋だとしても。
そうしなければ自分の望む結果は得られない。
ならば乗ってやろう。自分の為に。
それが私の生き方なのだから─────。
ぶっへっくしょん!!!
大海原に盛大なくしゃみが響いた。
『ギャ?』
カムイワッカの頭にしがみついていた爆炎竜の雛は全身で風を浴びつつ尻尾をユラユラ揺らしていた。
『ギャギャ?』
まるで大丈夫とでも言うような鳴き声にカムイワッカは鼻をズズッと啜る。
「あっ? でーじょうぶだよ。何でもねぇから気にすんな?」
現在、カムイワッカは竜人の力を開放したことによる副作用で二十歳超えた青年期の姿をしていた。
大海原を爆走しているカムイワッカは盛大な波飛沫を飛ばしながら目的地である爆炎竜の雛の故郷を目指していたのだ。
(なんか…………すっげえー悪寒が走ったような気がしたんだが…………………)
多分、海風による影響だろうとカムイワッカは気にすることを止めて爆炎竜の雛を頭にしがみつかせたままひたすらに爆走を続けたのであった。
後にその時走った悪寒の正体が分かるのは、彼が実彩と合流してすぐのことだった。
今までありがとうございました。(●´ω`●)




