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第50話

特別企画二日目だぁぁぁぁあああああ!!!






イズールとリリーナに立ちはだかる男は、遠くでローブを身に纏っていたナターシャが脱ぎ捨てた様を見て自身のローブも脱ぎ捨てた。




「ふぅー……。いやはやこの日差しの下でこのローブを着てるのは暑くて仕方なかったんだ。ナターシャも気の利いたことをしてくれる」



ローブの下から出てきたのは二十歳過ぎぐらいの若い優男。


姿を隠す為に羽織っていたローブだがナターシャがさっさと脱いでしまっているし。それにどうせ皆殺しにするのなら姿を見られたとて問題無いだろう。と彼は判断した。


ちなみにカムとカムと対峙していたローブ男は別の場所に移動した。ローブ男の方がこの辺一帯に仕掛けたであろうカムの罠を警戒したのだ。一度引っかかった以上は警戒するに越したことは無いと彼はカムを牽制しつつ共闘も防ぐ為にわざとバラけた。



「改めて自己紹介させてもらおっかな♪ 俺はトグル。見ての通りの色男さ。特にそこのおじょーさん! よろしくね~」


「……」



リリーナからまるで虫でも見るかのような侮蔑しきった眼差しをもろにもらったトグルはやや顔を引きつらせる。



「あらら~? 俺、なんだか嫌われてる?」


「――――貴殿が何者かは知らないが、私達とて命は惜しい。全力で行かせてもらう」


「……ん~~??」



ここでイズールを横目で見たトグルはまるで興味がないといった風情で手をヒラヒラさせながら言った。



「俺としたらヤローはともかくとして可愛らしいお嬢さんに必要以上に傷を付けて殺したくはないんだけどな~……やっぱり女の子は可愛く綺麗でなくっちゃ」


「なっ……!?」


「………」



あっけらかんと宣うトグルにイズールとリリーナは気色ばんだ。

もはや二人が死ぬのはトグルの中では揺るがぬ事実であるのだろう。チャラく、女好きの態を振舞っているが見逃すつもりがさらさらない。



「っつ!! いい度胸ね……!? いいわよ、やってやるわ!! 吠え面かかしてやる……!!」


「落ち着け、リリーナ! あ奴の思うつぼだぞ。ここは、いつものように行こう」



簡単に流されかけるリリーナを宥めるとニヤついているトグルに向かって呪文と紡ぐ。



『我、希《こいねが》う。偉大なる風の精霊よ、御身の力を愚かなる者に振りかざせ―――!!』



魔術とは違う―――精霊によって巻き起こされた風圧の塊がトグルに殺到した。



「ひゅ~う♪ エルフの精霊魔法か……術を放った後も自由自在に操ることができる、神話時代から現存する『魔法』の一種をこうも容易く施行出来るなんざ流石はエルフってか?」



殺到する風圧は、しかしトグルは涼しい顔をしながら避けるとそのままイズールに向かって駆け出した。



「まずはお嬢さんよりあんたの方が先だよな!!」



そのままイズールに斬り掛かろうとするトグルに向かって────



(───今よ!)



リリーナが死角から風属性の魔術を放つ、が。



「───────なーんちゃって♪」


「え?」


「リリーナ!!」



トグルはまるでこれからダンスを申し込むような軽やかな歩みでリリーナの前にスゥゥと移動した。



「ごめんね?」



にっこり笑うトグルはリリーナの心臓に向けて剣を突きつけようとした。



「リリーーーーナぁぁぁアアアア!!!」


「きゃっ?!」



間一髪。

イズールが先に放った精霊魔法がリリーナをクルンと包み込んだ直接にトグルの剣先はイズールの風に阻まれガッキィィン───と金属音を高鳴らせた。


精霊魔法が解けてリリーナがイズールの腕の中に落ちていった。



「あらら……残念」


「きっさまぁ……!! よくも私の異母妹《いもうと》を!!」



目の前で異母妹《リリーナ》を串刺しにされかかったイズールは激しい怒りを込めて睨み付けるも当のトグル本人は怖い怖いと肩を竦めるのみ。



「へー……異母妹なんだ? そのかわいこちゃん。───そー怒んなって。互いに命賭けている以上、仕方無いだろ? あんたがズタボロになって死んでいくのを見せずに殺してやろうと思っただけだよ。ほら、俺ってさ、紳士だから」


「っ!? 戯れ言を……!」


「イズール! 落ち着いて! あいつに飲み込めれちゃダメだよ……!!」



怒りで頭に血が登っているイズールにリリーナが泣きそうになりながら必死で押し止める。



「んん~~? でも、思ってたよりもあんた強そうだし…………こりゃあーーちょっとは楽しめるかな?」



どこまでも愉しそうなトグルにイズールはギリリッと奥歯を噛み締めた。リリーナもキッとトグルを睨み付ける。



「仕切り直ししようぜ? お二人さん♪ あんたらはイズールとリリーナで良かったんだよな?」


「「気安く名を呼ぶな(呼ばないで)!!」」



イズールは精霊魔法を再び詠唱し。

リリーナは魔力をさらに込めた魔術をトグルに標準を合わせた。


トグルは如何にも余裕綽々といった風情で剣を構えた。











「おー、お? どこもかしくもドンパチやらかしているみたいだなー? こりゃあ面白くなってきたぜ!!」



あちらこちらから伝わってくる戦闘の気配に、カムとサシで対峙している最後のローブ男が口元をニヤリとほころばせる。



「………随分と、楽しそうだな?」



少し離れた場所で腕を組ながらローブ男の様子を窺っていてカムは、あまりに無邪気なその様を見て言った。



「そりゃあ楽しいさ! 随分とかったりー仕事任されてウンザリしていたところだしな!! 俺ってさ、どっちかつーと戦闘とかの方が性にあってんだよ。なんつーかワクワクすんじゃん。強ぇー奴と闘うの」


「………ほー。俺はお前ぇーさんから見て、その強い奴ってのに思われたわけだ。そりゃあ光栄だね?」



どうりで、あっさりとこの場所まで付いて来たワケだ………。



肩を竦めるカムはこれで納得がいった。最初は確かに目の前のローブ男がカムが張った罠を警戒して場所を離れたのだが………しかしこの場所まで来たのはカムが誘導したからだ。


誰にも邪魔されないように。



「あんたさ。相当強ぇーだろ? 少なくともあの六人の中じゃダントツに強ぇー……。…………その次は俺らと同じようにローブ着ていたあのチビだな。なんか、冒険者ギルドで支給してるギルドカードローブに似たやつ着てるアイツ」


「…………へぇ?」



よく見ている。

カムは瞬時にそう思った。


事実、あのパーティーメンバーの中で自分を抜かして一番強いのは実彩だと、カムも思っていた。昔そこそこ名を上げていたリルよりも恐らく実彩の方が強い。



「その次っつーと………あのすっげえ格好してた女で、後はエルフの奴だな。まともに闘《や》れんの。─────だからさ、あの洞窟の方に走っていったバカには感謝してんだよ。お陰で、俺はあんたと闘り合える………」



抑えきれない戦闘への歓喜に刻まれる笑みの、なんと獰猛で魅力的なことか。



「よっ……と!」



ローブを脱ぎ捨て、改めて得物を構える。

両手にそれぞれ普通よりも短めな剣を携えて。



「俺はナジム! 愉しもうぜ? オッサン!!」



真っ直ぐ突っ込んでくるナジムにカムは―――――



「―――――――わりぃが、それはチト無理だな」











地に伏っぷつして完全に意識を失っているナジムを手持ちの縄を駆使して完全に身動きを取れなくしたカム。



「よっと……。こんなもんか。いやはや……、あの四人組の中で一番強ぇ( ・ ・ ・ ・ )お前ぇさんが俺にわざわざ着いてきてくれて助かったぜ」



ナジムがパーティー内でカムが一番強いと思ったように、カムも四人組の中で一番強いにはナジムだと思った。イシュールはあの四人組のまとめ役ではあったが、純粋な強弱で見た場合では彼は二番手ぐらいであると。それがカムの判断だった。



(コイツの拘束も終わったことだし。さっさとチビ助とリルの助っ人にでもいくとするか……)



今ならばナジムの敗北にトグルは気付いていない。イズールとリリーナには悪いがトグルに気付かれることなく向こう側に行くにはあの二人にトグルの相手をしてもらおう。



(あのリーダー格っぽい奴とこのナジムって奴を抑えれば後は何とかなる。二人には悪いがそっちは任せたぜ……)



それに────カムは洞窟に向かったイシュールにどことなく引っかかりのようなモノを感じていた。


イシュールを見た瞬間。なんとなく、胸騒ぎを覚えたのだ。…………気のせいであればいいが。



「んじゃ。行くとするか!」



こうしてカムは実彩とリル、そして勝手な行動をしてパーティーメンバーを危険に晒したジャンを助けるべく、その場を後にした…………。











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