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第43話


みんな集合だよ!


昇級試験!!



*なんとなく、ノリで。苦情は敢えて聞きます………。すみません………(^_^;)








しばらくするとエルフの異母兄妹きょうだいが戻ってきた。


リリーナの方は実彩を警戒してイズールの後ろに隠れ、ジャンはまるで仇のような目で実彩を睨んでいた。


異様な空間を作りつつ、その場で待っているとあの、なんとも扇情的な格好をしたリルが実彩達の前に現れた。



「んっなぁああ!?」


「はっあ!?」


「…………………」



すでにその格好を見ていた実彩は普通にしていたが初めて目にした三人は全員硬直した。



ジャンは一気に茹でタコのように顔全体を真っ赤にさせて。


リリーナはリルの豊かなバストとくびれた腰、そして肉体的なヒップを見て………一瞬自分を見たと思ったら泣きそうな顔になり。


イズールはまるで何かを悟ったように───リルを直視しない為だろう───やや視線を上に上げて遠くを見ていた。


三者三様の反応を示す、そんな三人の様子を見て同情の視線を送る実彩。



「始めまして~♡ 私が冒険者ギルドの職員から今日の試験管に選ばれたリルよ。早速、ランクアップ試験の概要を説明したいんだけどー……一人、まだ着ていないお馬鹿ちゃんが居るわねー。集合時間まで後三分位しか残ってないのに…………ふふふふふ」



艶めかしくも妖しい笑みを浮かべるリルの背後に暗雲が見える気がした。



「ちょ、ちょっとアンタ! なんて格好をしてんのよ!? 恥じらいってもんが無いわけ!?」


「……………止めろ、リリーナ」



すでに若干疲れ気味のイズールに諌められるもリリーナは止まらない。



「だってイズール!! あ、あああんな破廉恥な姿をしている人が私達の大切なランクアップの試験管だなんて!? 信じられるわけないじゃない!!」


「ふぅあぁあああ………気持ちは判るがな、嬢ちゃん。その女は間違いなく冒険者ギルドの職員だよ。そんな残念な格好でも試験管を任せられる程度の戦闘力うでは持ってるから安心しな………」



大あくびしながら大門からやってきたのは昨日、実彩の為にジャンを諌めてくれたカムの姿だった。



「おっさん!?」


「よお、チビ助」



驚く実彩に軽く手を振って応えるカムにリルが噛みついた。



「ちょっとカム、聞き捨てならないわね………だ~れ~が~残念なのよ!! この女として完璧なプロポーションを持つ私に残念な部分なんて無いわよ!!」


「「………………」」



実彩とイズールは無言でリルを見つめた。………リリーナは何故か悔しげにリルを睨んでいた。



「あーーそうだなぁ。確かに男として言わせてもらえば大変素晴らしいプロポーションだとは思うけどよ。いち冒険者として言わせてもらえば、んな格好で大事な試験に来んなよ、空気読めっつーのが本音だわ」



投げやりながらも答えるカムに、この人ホント良い人なんだな、と改めて思う実彩。代わりに私達の心の声を代弁してくれてありがとう。



「集合時間ギッリギリまで来なかった奴に冒険者のなんたるかを語られたく無いわよ!」


「それとこれとは関係ないだろ………。つか遅れてねぇーのに目くじら立てんなよ」



面倒臭そうにリルをあしらうカムはさっきから大人しいジャンにようやく気付いた。



「なあ、チビ助。あの茶髪頭の自称様付けガキはどうしたんだ? さっきから随分と大人しいじゃねぇか?」


「ん? ああ……そのリルの格好が許容範囲外過ぎて未だに硬直が解けてないんだよ」



未だに真っ赤な顔で石像のように固まっているジャン。恐らくはカムが来たことにすら気付いていない。



「正気に戻ったら煩いかと思って放置してたんだけど………いい加減、試験内容が言われるだろうし」



流石にこのまま放置は不味いだろう。



「つか、おっさんもランクアップ試験受けんのな。なんで昨日黙ってたんだよ?」


「んあ? ああ……。まぁ、別に大した理由じゃねぇよ。実をいうとな? 昨日までは試験自体を受けるかどうか迷ってたんだが、昨日、そこの馬鹿焚き付けちまったからなー。気になっちまって気になっちまって………結局受けることにしたんだよ」



あっけらかんと言うカムに、実彩の方が仰天する。



「はあ!?」


「わっはっはっはっ………お前さんは気にしなくていいさ………所詮、俺が自分の為に勝手にやってるだけだしな!」



内心、我ながら無理矢理なこじつけだな~……と冷や汗をかくカムを、リルが冷ややかに見詰めていた。



(あの脳筋!! 吐くならもっとマシな嘘吐きなさい!)



舌打ちしたくなる。


実彩は………なんだか取って付けたかのようなカムの参加理由に違和感を感じていた。



(なんだか、妙な理由だな? 別に、話の筋としちゃあ無くはないんだろうけど………それにしては何だか言いにくそうな上に冷や汗までかいてるし………)



思わず半目でじぃ~~~っとカムを見詰めるが、カムはそんな実彩の視線に気付いている癖にまるで誤魔化すようにジャンの下に歩いて行ってその頭をやや強めにひっぱたいた。



「!? いっっ……てぇ!?」


「ほら! いい加減に正気に戻れ! 試験内容の説明が始まんぞ!!」



頭にくらった衝撃でようやく我を取り戻したジャンはカムが居ることに驚くが、カムの方はさっさと離れて行った。



「………あの者……貴殿の知り合いか?」


「ん?」



そう実彩に話しかけてきたのはイズール。



(…………あの御仁、そしてカムという名、もしや……)



イズールは訝しげにカムを見て何やら考えこんでいるようだった。よく見たら少し離れた場所に居るリリーナも訝しげな顔をしてカムを見ていた。



「まあ、知り合いちゃあ知り合いだな。昨日宿の食堂で偶然出会っただけだけど………それが、どうかしたか?」


「…………いや、妙なことを聞いて済まなかった」



それだけ言うとイズールはさっさと実彩から離れてリリーナの下に戻って行った…………なんなんだ?



「……………」


「……イズール、あのカムっていう人。まさか………?」


「いや判らん。あの『気配』のようにも思えるが別のモノかも知れない。今すぐ断定するには早いだろう………」


「まあ………私も本当に一瞬だったし………実際に会ったことがないから断言は出来ないけど…………」


「─────ならば、今は試験に集中してこの話は一体考えるのをよそう。考えたところでどうなるものでもあるまいし」



それもそうかと。リリーナはあっさりとイズールの言葉を受け入れてリルを────何故か半目になりながら向き直った。



「み~ん~な~? いい加減、試験内容を話して良いかしら? 時間が無くなっちゃうわよ~~?」



リルの声に、皆一斉に静まり返った。そういうところは冒険者たる所以である。


もっとも……何人かはリルを直視しようとしないようにしているが。



「じゃあパパっと言っちゃうわね~~。今日、皆さんに受けてもらう試験はズバリ! 盗賊の討伐になります。みんな知っていると思うけど。冒険者は決して魔獣や自然発生した魔物を狩るばかりが仕事では無いわ。Cランクともなれば対人を相手にした依頼も一気に増えてくる。別に………Dランクでも受けられることは受けられるけど………護衛などの依頼はCランクからと決まっています。指定では無い、上級階級の依頼を受けられるのもこのランクからだわ」



ここでリルは受験者達を見渡す。



「ここで罪を犯した、もしくは依頼人の不利益になる『同族』を殺せないようならばCランクには決してなれません。今ならまだ、試験を受けるのを止めることが出来ますが───────覚悟は、ありますか?」



真剣な瞳で実彩達を見詰めるリルに………受験者達が返す返答は沈黙。静かに、だが雄弁に語るその佇まいにリルは頷く。


『同族』と、敢えて強調するのは受験者の中にエルフのイズールとハーフエルフのリリーナが居る為であろう。その容赦の無さが試験の重要性と危険性────そして覚悟を問うている。



「皆さんの決意は硬いようですね? いいでしょう。それでは皆さんにはこのメンバーで臨時のパーティーを組んでもらいます。アナタ達でリーダーと役割を決め次第、早速盗賊の居る現場にへと向かってもらいます───!!」



リルの高らかな宣言と共にCランクアップ昇級試験の開始が始まった。













ようやく昇級試験が始まります。


次回はリーダーと役割分担、そして昇級試験の裏で差し迫るコルト公国の影にご注目あれ!!

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