第27話
実彩の結界のもと何とか魔力の爆発を起こしている中心地点近くまでたどり着くことが出来た。
この世界にはない結界というモノにクリストファーはこの魔術は何ですか!? と詰め寄っていたが呆気なく無視される。以前、リメスで魔物の襲撃を受けた際に実彩はクリストファーとアレンの前で結界を披露したが、あの時は聞くに聞けない状況だったため、二度目の今は魔術師としての好奇心が抑えられなかったのだろう。
無視されようとクリストファーはしつこく実彩に食い下がる。
まぁもっとも今も以前と対して変わらない。いや。あの時よりも危険な状況だが、どうやらクリストファーの危機察知能力は実彩と関わったが為に大分壊れてしまったようだ。お気の毒に。
「煩いわ! んなに聞いても教えんたら教えん。つか、お前はリュカを探さなくていいのかよ? アイツの存在は国からしたら手にしておきたい重要のカードだろ。使いようによっては亡国の危機を救えるぞ」
この国にとっての最善はリュカが正妻の実子であり、マロリーが第二夫人の子どもであることだ。
第二夫人ローゼは元は他国の人間。
そこを利用すればいくらかこの国を取り巻くであろう状況はマシになる。
……簡単にいうとローゼの祖国を巻き込むのだ。最悪な形で。
しかしリュカは正妻ソニアの実子でも、ましてや第二夫人の実子でもない。
リュカが何者なのか。
そこが今回の鍵になるだろうが、実彩の仕事はリュカが正妻、第二夫人どちらの子どもでないとわかった時点で終わっている。しかしソニアの日記だけでは証拠としては弱い。むしろ正妻の実子ではないという証拠だ。第二夫人ローゼの実子ではないということは実彩が盗み聞きしただけであって証拠にはならない。だから終わらせたくとも終わらせられない。
「私の個人的な愉しみを抜きにしても、私はこの先に行かなくちゃいけない」
何故ならこれほどの爆発だ。この場では実彩以外は対処出来ないだろう。死にに行くようなものだ。
実彩がクリストファーについて来いと言ったのはあくまでリュカを見つける為には爆発地点の近くまでいく必要があると思ったから。だがそのリュカが見当たらないのであれば、もうこの近くにはいないということだ。
ここは二手に別れて行動した方がいい。
「わかりませんよ。案外爆発地点の中心近くにリュカ殿がいる可能性も無きにしもあらずです。ミーシャさんに着いていく価値は十分にありますよ」
「リュカは弱小魔力しか持ってないんだぞ? いるとは思えないんだが………」
実彩は自分の考えを大きく改めることになる。
魔力の爆発地点についた二人が目にしたのは。光の渦を身に纏い、両膝をついてうずくまっているリュカの姿だった───。
憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ!!!!!
自分で決めたことだ。真実を知ると。
だがこんなのはあんまりだ。たった一人の女のエゴのせいでスカイの民たちが長年苦しんできたというのか……。それを私は自らの弱さを言い訳に見てみぬ振りをしていたのか。何が責任を取るだ。何が貴族としての矜持だ!! 私は何を格好つけていたんだ。今からでも間に合うと、何故思った? すでに民に犠牲を強いておいて何故自分だけは許されると思ったんだ!! もはや事はスカイだけで収まるものではなくなっていたというのに! マロリーのせいでたくさんの人達が傷つき死者も出した! 冒険者ギルドも商会ギルドも決して許しはしないでしょう。これはバイエル国存亡の危機だ!! 私はわかっていなかった。いや。信じたくなくてわかろうとしなかったんだ! クリストファーさんが言っていたのに……!! マロリーが魔獣を魔物化させる禁忌を犯したことを! それなのに、それなのに私は!!?
憎い、憎い。
私は自分が憎くて仕方がない!!
─────ミーシャ、さん。私は……。
魔力の爆発を起こしていたのはリュカだった。
しかも驚くべきことに。リュカの容姿が変わっていた。
くすんだ金髪が、白金色に変わっていたのだ。
最上級の更に上に位置する最強の証。
実彩の漆黒の対である白金の色に。
弱小魔力なぞとんでもない。彼は間違いなく実彩と対等以上の魔力を持つ、
『化け物』だ。




