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第10話



「まずったな…」



実彩は目の前に広がる光景にため息を付きたくなってしまった。


リメスの唯一の出入り口の大門の前で、短い茶髪の大男がバズーラ家の私兵騎士と流れの冒険者(?)と思われる者達と大立ち回りしていた。



「オラオラオラ! てめぇら覚悟しやがれ!?この俺がいるかぎりこの街で好き勝手な事はさせねぇ…………っぞと」



大男は私兵騎士の胸ぐらを掴んだと思ったら、そのまま冒険者と思われる人達に投げつけた。



「うおっ」


「ぐはっ………ッッ、痛っ……て」


「てめぇら、どけよ!」



大男1人に対し、私兵騎士と冒険者達は十数人はいるだろう、しかし。



「てめぇら全然話にならねぇよ、よくその程度の実力で俺にケンカを売ったな?」



人数差をものともせず、どこか呆れた風情を醸し出しながら大男は圧勝した。



「よっ! 流石は大将、バイエル国の英雄だ!!」


「いいぞー! やっちまえ!!」


「きゃー! アレン様ステキ!!!」



周りで見ていた野次馬達は揃って大男にエールをおくっている。



「あの大男、アレンて言うのか。それにしても凄い歓声だな、一体何者なんだ?」



しばらくアレンと呼ばれていた大男を観察していた実彩だが、大門が使えないこの状況でこれ以上この場にいる必要は無いだろうと踵を返した。



「……───ん?」



一瞬、大男と視線が合った。

しかし実彩は無視してそのまま立ち去った。



(───観察していたのに気付かれたか。随時と感が鋭いこって)


(何だ? あの仮面を付けたガキ………アイツ、俺の動きを見切ってやがった)



大男───アレンは自分に対して探るような視線を感じ、視線の先を念の為に確かめたら、ソコにいたのは仮面を被った奇妙な少年だった。



(少し気にはなるが、今はそれどころじゃねぇからな。後で周りの連中に聞いてみるか………)



アレンは離れていた部下に私兵騎士と冒険者達の捕縛を指示した。その少年に見える少女が保護すべき対象と気づかぬまま。











「はてさて困ったな」



実彩は冒険者ギルトに向けて歩いていた。



「あの状態じぁ大門はしばらくの間使えないだろうし、しばらくギルトで情報収集しがてら様子見するしかないかって───────おっ?」



ふっと実彩の目に飛び込んだのは、チンピラ3人に絡まれている自分と同じぐらいの少年だった。


今、実彩達がいる場所は人通りの少ない道なためか周りには実彩以外誰もいなかった。



「なぁ兄ちゃん。俺達にちぃっとばかり金を貸してくれねぇか? いまよ、手持ちがなくて困ってんだよ」


「そうそう。兄ちゃん見たところ結構キレイな身なりしてるし、少しぐらい俺達に貸したって構いやしないだろ」


「ケッケッケッ」



チンピラ3人は少年の周りを囲んで逃げられないようにしながら少年を脅していた。


彼等の言うとおり、少年はパッと見、簡素な服を着ていたが汚れやほつれと言ったものが見れなかった。


チンピラ共は、少年の事を裕福な家の子供が親に内緒で街にお忍びできているのだろうと当たりをつけていたが、実彩は少年の右腕につけていた薄い緑色をしたクリスタルの腕輪に気が付いていた。



「お金が欲しいのでしたら冒険者ギルトで冒険者登録をしてきたらどうですか? わざわざ僕にたかってお金を巻き上げようとするより、ちゃんと働いて得たお金の方が心身共に健康的でよろしいと思いますよ」



爽やかな笑顔で告げるダークグリーンの髪をした少年。


実彩は、おいおい。と呆れてしまった。

あんなチンピラ共に正論交じりのケンカふっかけるなんて。



「オイ、テメェ。こっちが下手したてに出てれば調子に乗りやがって…………覚悟、出来てんだろうな…………」



他の2人も少年を締め上げようと手をパキパキ鳴らしている。



 こうなるよね、普通。



「実力行使ですか。良いですよ、お相手致しましょう」



少年は右腕の腕輪に触れた。

その瞬間である。



「派遣騎士の皆さ~ん、こっちですよ~。チンピラ3人組が幼気な少年を囲んでますよ~。早く助けてあげて下さい~」



間延びしたやる気のない声が辺りに響き渡ったのは。



「なっー!」


「誰だ! 一体どこに……!?」


「あ、兄貴! アソコにいるチビだ!!」



いきなり辺りに響き渡る第三者の声にチンピラ3人がギョッとした。


しかもその第三者は派遣騎士を呼んでいるのだ、3人は勿論慌てた。



「兄貴早く逃げねぇと派遣騎士が来るぜ!」


「でもよ、ガキに馬鹿にされたまま引き下がるのは俺達の股間に関わるぜ!?」


「それをいうなら沽券だ! この馬鹿!!」



兄貴と呼ばれていた男は実彩と少年を交互に見て忌々しそうに舌打ちした。



「……覚えてろよ、クソガキ共。オラァ行くぞテメェ等!!」



そう言って3人組は路地の奥に消えていった。

残ったのは実彩とカツアゲされそうになっていた少年だけである。


 実彩はおもむろに少年に近づいて声をかけた。



「───お前さ、今、何をしようとした?」



質問の形を取ってはいたが、実彩の声は冷めきっていた。このダークグリーンの髪をした少年が何をしようとしていたのか気付いたからだ。


少年は一瞬驚いたようだが、すぐさま気持ちを立て直した。彼は肩を竦めて。


「何の事ですか。僕はただ降りかかってきた火の粉を払おうとしただけですが? …………助けて頂いたことには感謝しますが貴方に責められる様なことはしていませんよ」


「させなかったからな。……………火の粉を払うにしても方法を考えろ。こんな街中で、莫迦な事しようとするな。確かにお前は被害者だったが、あの3人を殺していい理由にはならねぇよ」


「………………」



 沈黙する少年。


実彩には『視えて』いたし、感じていた。

驚いて目を見開いて実彩を凝視する。そんな視線を実彩は無視して続けた。



「たかがカツアゲで洒落にならない魔法を使おうとするな。仮にも冒険者が素人のチンピラ相手に必要以上にムキになってんじぁねぇよ」



そう言い残し、実彩は少年を残してその場を立ち去った。













 冒険者ギルドに不穏な空気が漂う。



「それにしてもさっきは本当に災難でしたよね」


「……」


「近道しようとして路地に入って、あの様な輩に絡まれるとは…………いくら治安が悪くは無いとはいっても、いやはや油断しました」


「………」


「知っていますか? 今バズーラ家の私兵騎士が冒険者になりたての新人を血眼になって捜しているらしいですよ。何でもお忍びで来た御子息がその冒険者に狼藉を働かれたそうですが……………さっき受付嬢に聞いた限りでは、私はバズーラ家の御子息が悪いと思いますね。いやはや全く。バズーラ家の御子息も馬鹿な真似をしたものです。彼には常識や道徳観というものが無いのですかね? ──────おや、どうしましたか?」


「どうしましたか? じゃねぇよ。なんでいんだよ」



若干、額に青筋を浮かべて半目になって向かいの椅子に座っているダークグリーンの髪をした少年を睥睨する実彩。


 当の少年はあくまでも、笑っていた。


「何故いるかと言われましても………僕も冒険者ギルトに用があったからだとしか答えられないのですが」



実彩の質問が分からないとでもいうよに首を傾げる少年。



「だからって、な・ん・で、私の前の椅子に座る! 他の席にいけ。せめて座る前に聞け。そして、なに気軽に話しかけてんだよ!! 私はお前の友達か!?」



 少年は益々ニッコリ笑った。


「それはなかなか素敵な提案ですね。どうですか? 僕と是非とも友「断る」人に………」



見事な即答。

しかも台詞を言い切る前に断った。



「…………」


「…………」



微笑む少年とムッと(*仮面を付けているため表情は見えてない)している実彩。



よく分からない空気が周りに漂う。


彼等の周りに座っていた他の冒険者達は、巻き込まれたくないとばかりに離れていった。


そのおかげで、少年と実彩意外は居ない、一種の空白地帯が出来上がった。


思わず、逃げ出した冒険者達を睨みつける実彩。

正面には微笑む少年。しかも実彩が逃げ出さないように、右腕に付けている腕輪に触れている。


明らかな牽制。

実彩が逃げようとした瞬間、魔法を使うつもりなのだろう。


 腹が立つ。



「さっさと本当の用件をいえ。…………………私に何のようだ」



この少年はギルトの休憩所にいた実彩を見た瞬間に彼女の前と椅子に座った。


そして冒頭の少年の台詞だ。

これで警戒するなというほうが無理だ。


 少年はやれやれ苦笑した。



「随分、僕に対して警戒しますね。………何かやましい事でもあるのですか──────?」


「やましい事が無くても警戒するわ。ボケ」



カツアゲされた報復に殺そうとする輩である。

警戒しない方がおかしい。頭のネジが飛んでいる。



「チンピラ相手に魔法・・を使おうとする奴に対して警戒するのがおかしいか?」



僅かに声をひそめるて告げる実彩に少年は目を細める。

瞳に怜悧な光が浮かんだのは、気のせいではないだろう。



「………本当に。よく、分かりましたね? ─────僕が魔法を使おうとしていたと、僕は貴方みたいに分かり易い格好はしてないんですが………」



魔法を使えるのを隠す冒険者は多い。

魔法を使うには詠唱と触媒、もしくは既に魔法の掛かっているマジックアイテムを利用する。


それゆえに冒険者ギルトから支給されるローブを着る冒険者は極めて少ない。


むしろ、分かり易く宣伝するなぞ馬鹿げてると嘲笑されるぐらいの愚挙なのである。

実彩自身もその辺りは分かっている。


実彩がその利点を棄てて支給されたローブを身に付けたのには理由があるが。



「勘が良いもんでねというか、その見た目で魔力持ちを隠そうとする方が無理だろうが。別にお前が魔法を使おうとするのは構わないが、随分とあんなチンピラ相手に少々派手なのを使おうとしたな?」


「何故、派手だと思ったのですか? そう確信された根拠は?」


「そこは秘密だ。つか、その言い方だと認めるようなものだぞ………?」



しばらく探るような視線を向けてくるが、一つため息をつく。

これ以上は何も探れないだろう。



「秘密ですか、それは残念ですが…………仕方ありません。次に期待しましょう」



次はねぇよと思いながら、実彩は気を引き締めた。

少年の雰囲気が変わった。

ここからが、本番ということか………。



「いきなりですみませんが、僕と一緒に人捜しをしませんか?」



「…………………は??」




唐突に告げられた言葉に思わず呆気にとらる実彩であった。











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