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【完結】かつて世界を救った勇者は地獄に追放された〜俺は俺を世界から追放した神々への復讐を決意する〜  作者: 早野冬哉
第一章

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22.女神祭一日目

 カラク女神祭──人間界でも一、二を争う大規模な祭りで、二年に一度開催されている。そしてなにより、女神祭の最終日──三日目の正午には女神ヘスラが街の中心にある噴水の上に降臨するのだ。


 ようやく女神に復讐できる! この機会をどれだけ楽しみにしていたことか……。


「なんだか、女神を崇めるにしては人も屋台も少ないな」


 中央通りを一緒に歩くネルは、隙間の多い道端を見回す。


「おそらくはキラードの影響でしょう。皆恐怖してこのカラクの町に近づくことを躊躇ったのではないでしょうか」


 ネルの疑問に答えたのは赤い髪に赤い瞳の青年、イフリートだ。なぜ彼が人間界にいるかと言うと、話はキラードを捕らえた時に遡る。


***


 バリッ!


「マゾエス。地獄への門は開いてやったぞ」


「ありがとね、ネルちゃん。でもちょっと待ってちょうだい」


 気絶させたキラードを肩に担いだマゾエスは、俺に向き直ると、手を出すように促した。すると、マゾエスは手のひらに魔力を凝縮させ、スキルスクロールを生み出す。


「ルーカスちゃんは人間界に残って女神に挑むんでしょう? だったら約束のスキルは今渡しといた方がいいと思ったの」


「ああ、助かる」


 俺はスキルスクロールを握りしめた。


「我が呼び声に応え、汝の研鑽を我が手に」


 そうして俺は、『岩石生成』を始めとしたいくつかの土属性スキルを手に入れた。


「うん、アタシのスキルがあなたの助けになることを願っているわ。……じゃあネルちゃん、地獄に戻りましょう」


 しかしネルは、ネイルの入ったマゾエスのゴツい手を振り払う。


「妾も人間界に残る。妾には、ルーカスの復讐を見届ける義務がある」


「はっ……?」


 おそらく、俺の復讐に色々と手を貸してくれているからだとは思うが……。


「ちょっとネルちゃん、何言って……人間界に残るなんて……」


 マゾエスはネルのアメジストの瞳に、感情ではなく信念が輝いているのを見取ると、肩を落としてため息を吐いた。


「わかったわ……それがネルちゃんの望みなら、もうアタシは何も言えないもの。……ただし、イフリートちゃんを護衛に呼びなさい。それが、アタシが要求する唯一の条件よ」


「わかった。ならばイフリートを呼ぼう……それで、ルーカスはどうだ? 妾が残ることに不満はないか?」


 叱られないかと不安がる子供のように、俺を見上げるネルに、俺もまた肩を落とす。


「不満がないかと言われれば……ある。が、俺がどうこう言うことでもないしな。ネルの配下であるマゾエスが許すのなら、俺もそうする」


「そうか! ならば決まりだ。妾はイフリートとともにルーカスの復讐を見届けよう」


***


「ようやく、ようやくあのゴミのような女神に復讐ができるのか……」


 自然と眉間に皺がよる。そうして清く澄んだ水が湧き出る噴水を睨みつけていた俺の手を引いたのはネルだった。


「だがルーカス、女神が現れるのは三日目だ。復讐に昂る気持ちはわかるが、キラードの件で疲れたであろう? 今だけは全て忘れて祭りを楽しむのも良いのではないか?」


 そう言って無邪気に笑うネルの顔は、とても愛おしいもので……、


「そうだな。たまには祭りに興じるのも悪くないかもしれない」


 気づけばネルの手をとり、同じように笑っていた。イフリートは気でも使ったのか、いつの間にか建物屋根の上に登り、俺たちを見守っていた。


「ルーカス。少ないとは言え、屋台の種類は豊富だぞ。どこから回ろうか?」


「そうだな。まずはあの、タコ串? というものを食べてみないか? 前に緑縛地獄にいた巨大タコを焼いて食べたのだが、吸盤がコリコリしていて美味しかったんだ」


「なんだか美味そうだ。妾も食べたくなってきたぞ」


 そう言うや否や、ネルは俺の手を引いて駆け出し、


「タコ串を二本頼む」


 買ったばかりのタコ串にかぶりついた。


「んんー! ウマいな! ほれ、ルーカスも早く食べてみろ」


「ああ、ありがとう」


 俺がネルから受け取ったタコ串を食べ終えると、俺たちは噴水の前に立った。


 サー……サー……。


 清涼な水の流れを眺めていると、心が透き通るような感覚に襲われる。


 思えば、こうやってのんびりと何かを眺めることなんて、勇者の旅でも地獄に落ちてからもなかったな……。言い表す言葉が思いつかないが……なんかこういうの、いいな。


***


 それからも色々と屋台をまわり、日が暮れた頃、俺はめぼしい屋台を回り終えて満足したネルを連れて宿屋に戻った。


「ネル、女神の力について知っていることを聞かせてくれるのだな?」


 神妙に頷くネルは、女神の情報を話して良いか最終確認を取るようにイフリートを見る。すると、腕を組んで胡座(あぐら)をかいているイフリートは頷いた。


「まず大前提として、神と呼ばれるものたちは皆、すべての光属性スキルが使える。加えて、それぞれ強力で特別な固有スキルを一つ持っておるのだ。……女神のそれが何かはわからんがな」


「なるほど」


 ……光属性スキルはキラードや天使ミカエルに使われた経験がある。なんとかなるだろう。だが……。


「固有スキル、か。この不確定要素は大きいな……」


「だがルーカスよ。明後日までにそれを特定することは不可能であろう」


「そうだな。固有スキルに関しては、使われた時に対応してみせる」


 俺の中で女神を倒す方針が固まったとき、参考までに、とネルが昔話を始めた。


「かつて女神ヘスラは一度だけ、自らの手によって魔王を退けたことがあるのだ」

「面白かった!」

「続きが気になる!」


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