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 -14『少年が手に入れたもの』

「どう、悪くないでしょ?」


 レジーさんに連れていかれた彼女の家で、僕は新しいドレスを着せられました。


 自作だというのに、お嬢様の用意してくれたものともあまり遜色がないような出来栄えのドレスでした。全体的に青色を基調としていて、肩を出して少し肌を見せる胸元のシースルーの生地には羽衣のような美しさがあります。


 その絢爛さに劣らないようにレジーさんは気合を入れて化粧もしてくれて、姿見に映った僕はまるで絵物語のお姫様のようでした。


 思わず自分でも見惚れてしまいそうなほどです。


「これで舞踏会に行けるねー!」


 レジーさんはそう楽しそうに言ってくれましたが、しかし僕としては複雑な心境です。結局このままではお嬢様と踊れないことに変わりないのですから。


 そんな僕の内情をレジーさんは知るはずもなく、そんな彼女の好意を無碍にすることもできませんでした。


「さ、行こー!」


 彼女に背中を押されながら家を出ました。


 軒先で待っていたグレンさんは、すっかりお色直しをして出てきた僕を見て目を丸くしていました。


「……あれ? なんだ、この胸のときめき。あの時と似てる。いや、まさか」


 そんなことをぼそぼそと呟きながら、呆けたように突っ立っていました。


「よし、それじゃあ舞踏会会場にれっつごー!」

「は、はい」


 レジーさんに手を引っ張られ、僕たちはそのまま、花火の打ちあがる足元で広がっているダンス会場へと向かいました。


 会場の周辺はすごい人の集まりで、まるで壁のように観衆が立ち並んでいます。具体的に会場の仕切りがあるわけではなく、各々が自由に、踊りたくなった時に中央の開けた場所に躍り出る形です。常にどこかしらで音楽が流れ、多くの人が入れ代わり立ち代わりに踊り続けていました。


 頭上にはまばらに花火が夜空を彩り続けています。これがもうしばらく続き、最後にはフィナーレとなる大輪の花を咲かせて終幕を迎えるのです。


 ――その時に一緒に踊っていた男女は強いきずなで結ばれる、か。


 きっとお嬢様は今頃、エドウィン様と踊っていることでしょう。幸いなのは、貴族の会場は庶民とは別れていることでしょうか。その瞬間を目の当たりにしなくていいだけ気持ちも幾分かは楽というものです。


 この光景は僕が守ったもの。

 もしシュランの計画が実現していたら、こうしてみんなが笑顔を浮かべて踊り更けていることはなかったでしょう。夜空の花火だって。


「……なんだろう。これでよかったんだよね」


 みんな、男女が組になって幸せそうに踊っています。

 けれど僕の隣には誰もいません。いつも一緒にいた、あの眩しいくらいのあの人は。


 お祭りを中断させずに済みました。それは全く後悔していません。


 けれど、なんだか――。


「そこのお嬢さん、泣いているのかい?」


 ふと声をかけられました。

 僕の目元に涙が浮かんでいることに気づきました。


 慌てて僕はドレスの袖で涙をぬぐい、声がした方へと振り返りました。


「あ、いえ。大丈夫です」と言葉を返してその人の目を見た瞬間、僕は思わず言葉を失って固まってしまいました。


「おひとりですか? では、よければ私と踊りませんか?」


 そこにいたのは、男性物の礼服をぴしりと着こなした――お嬢様でした。


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