王子様?
何とか間に合った
私は本当に馬鹿だ。どうしてこんなことにも気付かなかったんだろう。私なんかの仲間になってくれる人なんているはずがなかったのに………
私はとある理由で仲間ができなかった。最初はそんなことはまやかしだと主張した。断られても断られても何度だって頼み込んでいた。でも、何十回も何百回も断られる度にわかってしまったのだ。
―――――――――ああ、私に仲間なんてできるわけないんだ、と。
それでも、一人は寂しかった。母と二人暮らしだった私は12のときに母を亡くした。独りぼっちになった私はぬくもりを求め、誰かと接したがったのかもしれない。
だから強くなろうと思った。強くなれば誰かが振り向いてくれるかもしれないから。それだけを心の支えにして、がむしゃらに自分を鍛え続けた。風当たりは強かったけど、それでも頑張り続けた。幸運だったのは私は魔法がそこそこ使えること。努力すれば結果がついてくるからこそ頑張れたのだった。
そんなある日のこと。一緒に依頼を受けないかとあるパーティーが誘ってくれたのだ。嬉しかった。私のこれまでの努力が報われたようで。だからかもしれない。深く考えずについていってしまった。
依頼はオークの討伐。手分けして探そうということで、現地に着いてすぐに分かれて行動することになった。この時点で怪しいと気付くべきだったけれど、やはり馬鹿な私は気付くことができなかった。そして――――――――――
「どうして!?」
「ハッ!誰がお前なんか仲間にすんだよ?お前はそこでそいつらと仲良くやってろよ。俺たちは依頼を終わらせて帰るからよ」
そう言い、嘲笑しながら誘ってくれたパーティーのリーダーの人は去っていった。私とオークたちを残して。抵抗しようにも、囲まれて取り押さえられてしまっては手足をばたつかせることしかできない。すぐに服を引き裂かれて裸にされる。
(ああ、私このまま誰にも認められずに終わっちゃうのかな………)
頑張っても頑張っても、認めてもらえなかった。そしてその結果がこれ。怖くて、情けなくて、涙が出てくる。醜悪な顔が私に近づく。嫌だ。こんな終わりは嫌だ。あんまり過ぎる。どうして私が……
そんなとき、木々の中に人影が見えた。フードを被っているため男か女かもわからない。あのパーティーの中にはあんな人はいなかった。
けど、そんなことは関係はないのかもしれない。だって、その人も一瞥して通り過ぎようとしたのだから。ああ、この人もなんだ。私を助けてくれる人なんかいるわけがないんだ。わかってはいたけど………
「酷いよ……私が何をしたの………」
ぽつりとこぼした声は涙声だった。あまりの理不尽に心はもう限界が来ていたのかもしれない。つい誰にも言うつもりのなかった、そして言えなかった言葉が口から出てしまう。
「た、助けて……誰か、助けてよ………」
助けてくれるはずはないのにそう言ってしまう。後半は小さすぎて聞き取れるはずもないはずの声量。最後の最後までダメダメだった。
―――――――――――そう、そのはずだったのだ。
「おーい、皆!こっちだ、早く来てくれ!」
「え?」
オークたちがフードを被った人と同じ方向を向く。その瞬間。
「でかくても、やっぱ阿呆だな、お前。オークが阿呆ってのは、どこでも同じなのか?」
オークの首から嫌な音が鳴る。オークたちが戸惑い始める。その人は小さかったのだ。
その間に3体のオークの喉笛にナイフが突き刺さる。異常な切れ味で突き刺さったそれは、寸分たがわず急所を貫いており、どう見ても致命傷だった。更に硬直が解けた後ろのオークに向かって、ナイフを突き刺す。そちらを見もしていなかったのに、オークは倒れた。その人に向けて倒れそうになったのだけれど、フードの人はそのオークを蹴り飛ばして別のオークの元に降り立ち、何かを突き付けた。
「I’ll kill youってな」
大きな音が鳴り響いたかと思うと、オークが倒れる。更に同じ音が立て続けに3回鳴り、残ったオークは1体となってしまった。
「んで?お前はどうすんだ?」
「ピッ、ピギィィィィィィィィィ!」
そのオークはそう叫ぶや否や、逃げ始めた。
「本当に阿呆だな、お前」
フードの人は後ろから落ちていた剣を投げつけた。剣は逃げるオークの胸に突き刺さり、逃げ出したオークは死んでしまった。オークの群れは全滅したのだ。たった一人のフードの人物によって。
「ったく、めんどくせえ。なんで俺がこんなこと………」
そう文句を言いながら、私に近づいてくる。た、助かったの……?
「おい、大丈夫かあんた?なんでこんなとこに一人でいたんだ?ん?それより、お前………」
その人は気付いていなかったらしい。私が嫌われる要因に。驚いたような雰囲気が伝わる。
「黒髪……?お前、まさか………」
そう、私は……
「お前、悪魔憑きなのか?」
きっとこの人は知らないから助けてくれたのだ。私は勘違いに気付いて悲しくなった。やっぱり私を助けてくれる人なんて………
「はあ、まあいい。とりあえず目のやり場に困るからこれでも着てろ」
そう言われて、フードの人が取り出したのは一枚のローブ。驚きに目を見開く。けれど、驚いたのはいきなり現れたローブのことじゃなかった。
「これ……私に?」
「ああ?それ以外に誰が着んだよ?」
どうやら口調的には男の子みたい。でも、ぶっきらぼうだったとしても。その言葉は、その態度は私が一番欲しかった言葉で。
「ありがとう……王子様………」
「誰が王子だよ」
その人に抱き着いて、涙を流す。やっと……やっと………
「おい!お前、いい加減に……って、泣いてんのか?勘弁しろよ………」
やっと、誰かと一緒にいられる。そのことがひたすら嬉しかった。




