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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第4章 学園入学編
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初授業はマジで眠い

 ……いつも思うのだ。何故退屈な授業は決まってこうも眠いのか。前々世でも大して興味もない、単位を取るためだけに取った授業はいつの間にか意識を失っていたものだ。こう、ポカポカ陽気であったり、飯を食ったばかりだったりすると、更に眠気を誘う。

 ちなみに、これには理由がある。食事をすると、副交感神経という神経の働きが活発になる。まあ、この神経は消化管の働きを促進させる効果があるわけだ。同時に、この神経は睡眠時に働く神経でもあるため、眠気が誘発される。よって、眠くなってしまうというわけだ。ものを書くと眠くなくなる、というのも生物学上から言えば、正しいことなのだ。副交感神経に対して、拮抗的に働く交感神経を刺激するのだから。


 ここまでの話で薄々気付いているのではないだろうか?俺はただいま絶賛睡眠中である。最初の授業であるから、一応受けに来たのだが、これがまあつまらない。なにせ、歴史の授業なのだ。魔道具の歴史についての。こんなものは昨日のうちに予習してすべてを知っているのだから、聞くまでもないのだ。なので、もう夢の世界に一直線というわけである。

 不意に誰かが俺の前に立つ気配がした。手は銃にかけておき、そちらを見れば怒り心頭といった様子の教師がいた。


 「ほう……そんなに私の授業はつまらんかね?首席様は随分と余裕なようだ」

 「……まあ、つまらんわな。教科書通りなんだからさ」


 まだそれ以外の知識を教えてくれるというなら、少しは興味があったのかもしれないが。よく言えば堅実、悪く言ってしまえば応用性のない教師なのだろう。俺の態度に不満を持ったようで、教師は俺に対して喚きたてるような声で詰問してきた。


 「ならば!最初に生まれた魔道具と、その開発者の名前くらいは知っているのだろうな?それもわからんのなら、貴様は………」

 「最初に作られたのはファイアロッド。開発者はヘイム帝国のスヴェン。開発背景は戦争で王国に押され始めた帝国が、奴隷兵や徴収兵を有効活用するためにだったな。そいつらは大抵魔法を使えなかったからだ。魔法を使えるのと使えないのとでは戦力差は大幅に異なる。その差を埋めるために開発したのがファイアロッド。魔力を使わずに炎を射出できるこれは、王国を大いに苦しめた、というわけだ」

 「な、あっ………」

 「ちなみに付け加えるなら、これに対抗するために作られたのが魔晶石。開発者はローランド・モント。魔力を溜め込むことのできるこの魔道具を作ったことで、戦況は硬直状態に突入。今は冷戦状態となり、国境線では睨み合いが続くといったところか。帝国を押し返せた功績を称えて、ローランドは貴族位を与えられた。そのときに与えられたものがモントの名、だったな。そして、王国ではローランドを魔道具開発の祖としている者が多い、だろう?」


 眠た気な目で睨みつけると、教師は口をパクパクさせるだけで、何も言い返すことができなかった。俺はそれを確認すると、瞼を閉じてまた眠りに入ろうとする。


 「な、何故そんなことまで知っているのだ!?」

 「何故って……図書館にもあんだろ、資料。そこから調べただけだっつの。ちなみに言うなら、この教科書の内容は全部知ってるし、記憶してる。教科書通りにやるなら、聞く意味はまったくねえんだよ。さっきの様子だと、今やってんのは16ページだろ?」


 今度こそ、教師は絶句していた。この様子なら、もうちょっかいは出してこないだろうと踏み、今度こそ眠りに入った。


※               ※               ※

 「……なんだ、これ?」


 起きてみれば、何故か人に囲まれていた。午前と午後の授業が終わり、さて帰ろうかと思った矢先のことだ。ローレルも隣でなんか教科書を抱えているし、他のやつもノートやら参考書やらを抱えている。嫌な予感がして、自分の荷物を確保し、外に出ようとする。が、その前に人垣が移動して、通ることができなかった。


 「……どういうつもりだよ?」

 「お前ってホントに頭よかったんだな!感心しちまったぜ!」

 「そいつはどーも」


 一人が代表して、声を掛けてきた。この時点で俺はもう次の言葉を予想していた。


 「なあ、勉強を教えてくれよ!」

 「嫌だ」


 俺はノーと言える日本人なのだ。いや、今は日本人じゃないけど。というか、こう言えるようになったのは前世のことがあったからだけど。もっと言うなら、この世界に来てからがほとんどだけど。まあ、そんなことは置いといて、だ。見るからにこれを予想していたかのような面々に、少し違和感を覚える。どうしたというのだろう。


 「そりゃそうか。そういうとは思ってたけど」

 「……?なら言うなよ」

 「いや、これを見てもまだそう言えるかな!?」


 代表している男が一枚の紙を見せびらかしてきた。その紙に顔を近づけてみると、こんなことが書かれていた。


 「なになに?『放課後に他の生徒の補習をし、試験内容の相談役となることで』……授業免除!?マジで言ってんのか、これ?」

 「ほんともホント、事実だぜ?たぶんだけど、授業での滅茶苦茶さが響いてんだろなー」


 思い出せば、俺は全授業で寝ていた。かつすべてで注意され、その全てで教師たちの質問に120点の答えを返しているのだ。むこうからすれば、教えることはあるのかと思うかもしれない。ただ、疑問に思うのはだ。


 「それにしても、あいつらがこんなものを思いつくのか?正直、疎んじて落とそうとしてくるかと思ったんだが」

 「そこは俺たちが直訴した、ってわけよ!で、どうだ?やるのか?」


 周囲の視線が期待したものへと変わる。俺は脳内でメリット、デメリットを挙げていき、少し考える。もう一度代表して話しかけてきた男の方を向いたときには、腹を決めていた。


 「条件がある。付き合うのは放課後の3時間まで。かつ、一度に見るのは10人までだ」

 「10人、って……残りはどうすんだよ?」


 驚いたような面々に、冷静に返した。


 「順番に回せば済む話だろう。言っておくが、俺は優しい方じゃないからな。やるからには徹底的に覚えてもらう」

 「うーんと、要は………?」

 「さっきの条件を呑めば、教師役をやることには文句はねえさ」


 周囲から歓声が上がる。あまり大きいものだから、顔をしかめた。うるさいのはあまり好きではないのだ。早速分けようとしているが、それではあまりにも時間が掛かる。俺としては、一つの考えを口にした。


 「最初は教卓から見て、左側の列からだ。そこにいるやつらはここに残れ。それ以外は明日だな。今日は帰れ」

 

 口々に返事をして、勉強支度をするもの、帰るものとに分かれた。ローレルは帰り組なので、俺に近づいて話しかけてきた。


 「じゃあ、私はここで帰りますね?何か食べたいものとかはありますか?」

 「ん?いや、別に特には。なんでも食えるし。よほどまずいもんじゃない限り」

 「そうですか。わかりました」


 そして、教室を出ていった。もしかすると、食堂で何かを確保してくれるのだろうか。それはありがたいが。そのことは気にせず、補習を始めることにした。


 「さてと、お前らどこがわからないんだ?」


 そのセリフは、あの頃と……孤児院にいたときと何も変わらないものだった。

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