第一章二幕
「じゃあね、留華。お掃除頑張ってー」
「ばいばい美恋ちゃん。部活、頑張ってね。」
肩にギターをかかげた美恋は心配したような顔で留華を見つめる。
「美恋ちゃん? どうしたの?」
見つめていることがバレていることに気づいた美恋は逃げるように別れの挨拶をした。
「ううん、なんでもない。じゃ、また明日ね。」
「今日の美恋ちゃんなんか変だったなぁ。まあ、私も人のこと言えないんだけど・・・」
そんな独り言をつぶやきながら留華は掃除の手を進める。本当ならこんな面倒なこと、今すぐに放り出して家に帰りたいのだがそうにもいかない。
掃除は数分で終わり、留華は足早に帰路についた。母親からの不可解なメールの真相を知るべく。あのあと、母親からのメールはない。ここまで無責任な親がいるだろうかと留華は頭を抱えた。
「ただいま。」
しかし返事はない。
「って、いないのか・・・」
これでは、メールの内容が聞けないが諦めるしかないようだった。
留華は母親が帰ってくるまで少し眠りにつくことにした。なにせ、前日は夜中まで読書をしておりろくに寝ていなかった。今日の授業中に上の空だった理由はここにもあったのだろう。
「ん・・・ ああ、私寝てたんだっけ。何時だろ。」
ケータイは開き確認すると時刻はすでに午後九時を回っていた。すると、リビングのほうから喋り声が聞こえた。
「喋り声? お母さんの友達でも来てるのかな。」
留華はのっそりとした動作でベッドから起き上がり寝巻きから普段着へ着替えた。一応、客人が来ていることを配慮しての行動であった。
リビングへ出るとそこには、見慣れた顔の母親と、一人の少女が向かい合って話していた。
「あら、留華起きたのね。夜ご飯温めるから待っててね。」
母は少女との会話を一旦終了し、キッチンへと消えていった。母が消えたことによりリビングには留華と少女だけが取り残された。
「えと、お母さんのお友達ですか?」
留華が問うと、少女はこちらにゆっくりと振り返った。
少女は、美しい漆黒の髪を腰まで伸ばしまるで人形のようだった。不健康なまでに白い肌が人形らしさを引き立てている。
留華は今までにないほどの既視感に襲われていた。
色白な少女は静かに微笑み口を開いた。
「ふふっ、お久しぶりね。私のこと覚えているかしら?」
無機質に冷たい、でもどこか懐かしさを感じる声、口調。
六年前に、永遠の別れを自分のなかでしたはずのあの「お姉ちゃん」がそこにはいた。
留華は驚きのあまり声を失ってしまった。しかし、次の瞬間留華は行動していた。
「お姉ちゃん!!!」
留華は勢いよく飛び出し、少女の胸に半ば無理矢理に飛び込んだ。
「あらあら、元気すぎるところは相変わらずのようね。」
少女は嬉しそうに微笑み強く留華を包み込んだ。
「お姉ちゃん痛いよ・・・」
「あら、それはなにかしら。私の胸部が残念だとでも言いたいのかしら?」
少女は意地悪く笑って留華のことをさらに強く抱きしめる。留華は対抗すべく、あるのかないのかイマイチ判別の出来ない少女の胸を揉みしだいた。
「そうだよ、こんな胸触ってるけどあるかわかんないなー」
「ちょっ、留華ちゃん、そこは・・・」
しばらくすると少女は頬を赤らめ身をよじりはじめた。留華はその反応が面白くさらに揉み続けた。
「も、もう、もう無理!」
少女は我慢できずに留華を突き飛ばし遠ざけた。その息遣いは荒く目は潤んでいた。
突き飛ばされた留華は立ち上がり、満面の笑みで言い放った。
「お姉ちゃん、私ね、お姉ちゃんのこと大好き!」




