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有言の実行者 〜成句の能力で俺は世界を敵に回す〜  作者: 宴元蒼井


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12/12

第12話 実行完了

ヴァルターの意識が刈り取られ、崩れ落ちると同時に、帝国軍の本陣を揺るがしていた巨大な魔導通信のネットワークが一斉にシャットダウンした。総大将の思考をハックされた十万の軍勢は、前進することも、引くこともできず、幻影の森の手前で完全に瓦解し始める。

「見事なチェックメイトだ、ソラ」

影から這い出るようにして、レイが姿を現した。その右目のノイズはさらに激しさを増し、世界システムからの負荷が彼の肉体を限界まで侵食しているのがわかる。

「だが、これで『神聖帝国』との戦争は終わりじゃない。むしろ、システムはさらに狂暴な最終修正プログラムを起動させる。……世界規律の完全崩壊まで、あとわずかだ」

レイが指し示した上空を見上げると、真っ二つに割ったはずの『神罰グランド・オーダー』の魔法陣が、黒いノイズを放ちながら再融合を果たしつつあった。世界そのものが、バグである俺たちを消去するためだけに、あらゆる因果のパワーを一点に集束させている。

「ルナを……世界から解放する。俺の最後の『有言』は、もう決まってる」

俺はひび割れたなまくら刀を強く握り締め、レイと共に最後の戦場――世界システムの核へと向かって地を蹴った。

世界システムの最深部。そこは、無数の光の数式とキューブが交錯する、すべての因果の終着点だった。

中心部には、システムの「生贄パーツ」として取り込まれかけているルナの姿があった。世界を救う『一騎当千』の格を持つ彼女こそが、システムが世界を維持するための最大の楔だったのだ。

「ソラ……! 来ちゃダメ……! ここは世界のルールそのもの……逆らえば、あなたの存在ごと消えてしまう!」

涙を流しながら叫ぶルナ。彼女を囲むように、これまでの調律者とは一線を画す、神の如き威圧感を放つ『終末の調律者』が立ち塞がる。

「行け、ソラ! 周囲の因果は、俺のすべてをかけて引き受けてやる!」

レイが両目を見開き、ドス黒いノイズの暴風を巻き起こす。『付和雷同』の全権限を解放し、世界システムそのものの攻撃ルールを自分一人へと強制同調させ、ソラの道を切り開いた。

「ありがとな、レイ。……これで終わりだ、世界システム!」

俺は白銀の魔力を極限まで爆発させ、ルナの元へと跳んだ。

脳内に、世界システムの最大音量の警告が鳴り響く。

『――警告。エラー個体の完全消去を実行。因果の書き換えを拒絶します――』

「拒絶するだと? ふざけるな。俺がこの10年間、何のために十万回の泥水をすすってきたと思ってやがる」

俺の後ろには、守るべき約束がある。

俺の魂を縛る檻は、今、世界を打ち破る最強の武器へと変わる。

俺はなまくら刀を上段に構え、全存在を賭けて、この世界で最後の言葉を紡いだ。

「――『俺の言葉は、世界のすべてのルールを上書き(オーバーライト)する』」

『――有言を、完全認知。出力:計測不能(無限大)』

『世界規律を強制初期化。これより、全因果を――【少年の望む未来】へ上書きします――』

世界のすべてが白銀の光に包まれる。

神の数式が、国家の縛りが、成句の格という理不尽なカーストが、俺の一振りによって跡形もなく消し飛び、再構築されていく。

光の中で、俺はルナの手を強く握りしめた。

「終わったよ、ルナ。……これからは、誰も俺たちを縛れない」

白銀の光が収まった時、そこには『成句』の格に縛られない、人間が自らの意志で明日を選ぶ、新しい世界の青空が広がっていた。

有言実行って難しいよね

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