表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/2

取り柄のない僕

昔から僕には取り柄が無かった。


他の皆は、勉強もできるし、運動神経だって良い。


絵が上手だったり、ピアノが弾けたり


結局世の中の皆は、必ず取り柄の一つを持っている。


でも、僕にはまだそれが見つけられない。



 塾の帰り道、暗い小道に入ったあたりで僕はため息を一つこぼす。また小テストの結果があんまりだったのだ。これじゃあ母さんを再びガッカリさせてしまう。


「オイ、そこの奴〜ちょっとで良いんだけど、金無い?俺たち遊ぶ金無ェんだよ〜」


ふいに誰かに肩を掴まれ、僕は恐る恐る振り返る。声の主は、いかにもチャラそうな男。背後には、数人似ている雰囲気の男がいる。こんな服着てて恥ずかしく無いのかな?と心配してしまう並みに、彼らはおかしな服装をしていた。―まあ、僕が最近の流行に疎いだけかもしれないけど。


「何の、、用でしょうか、?」


冷静な考えを頭の中では繰り広げるが、その癖僕は臆病だ。どうせカツアゲかな、と頭の中では相手の事を馬鹿にしているのに、いざ嘲笑ってみようとなると、なかなかそうにはいかない。


「いやぁ、さっき言ったじゃん。真面目そうなお兄〜ちゃぁ〜ん?この時間にこの辺うろついてるって事は、塾かなんかだろぉ?お兄ちゃん、パチスロとか行きそうな年齢でも無さそうだからなぁ〜。なあなあ金あるだろ?念の為とか言われて、親に千円くらい持たされてるんだろ〜?」


カツアゲのお兄さん。貴方に対して言いたい訂正は二つ。まず、母さんが僕に預けたお金は、千円ではなく二千円です。そして二つ目。僕は真面目なんかじゃ無い。真面目な子って言うのは、いつか勉強で結果を出すんだ。テストがずーっと駄目な僕が、真面目を語って良い筈がない。


 だが、そんなことをこのお兄さんに言えるはずも無く。もし俗に言う逆ギレをされたら、僕はきっとフルボッコという目に遭ってしまう。ここは、所持金は千円だって勘違いしてもらっていることを良いことに、本来の所持金の半額払って帰るのも良いかもしれない。だって、どうせ反論なんて、出来ないわけだし。


「は、はい、、、」


おどけた様子で、僕は財布を取り出す。そして千円札を出して、目の前のお兄さんに手渡した。背後の、お兄さんの仲間は、気味の悪い薄笑いを僕に向けて放つ。


「お、サンキュ、サンキュー!!これ、いつか会ったら倍にして返すわ!ま、会えるかは分からねーけどなぁ〜」


じゃあなぁ〜、ゲヒヒヒ!と男達は去っていく。そして、僕はまた一人になった。


「取られちゃった、千円、」


普通なら、コレを急いで警察に伝えるのが筋なんだろう。だが、僕にはそんな行動力も無かった。どうせ、あのお兄さん達は逃げ切る。そうしたら、僕はカツアゲされたーって騒いでるだけのただのオオカミ少年だ。きっと、周りに嫌われる。


「帰るか、」


ポツリとそう呟いたと同時。先程、カツアゲのお兄さんが駆け抜けていった方向から、ギャァァァアアという悲鳴が聞こえた。おそらく、この声は先程のお兄さんだろう。


「え」


何が起きたか理解ができない。ボーッとその場で立ちすくんでいる僕の目の前に、やがてとある人物が現れた。


「これ、千円取られてたんでしょ?はい」


目の前の人物は、どうやら僕より少し幼い少女だ。僕が15歳だから、彼女は12歳くらいか。ウルフカットと呼ばれる髪型をした、やや釣り目気味の少女は、ぶっきらぼうな声を出す。そして、僕に先程奪われたばかりの千円札を手渡した。


「えっと、ありがとう。」


いきなりの出来事だったので、僕は慌ててお礼を言う。すると少女は小さく頷いた。


「次からは気をつけた方が良いと思う。じゃあ、さよなら。」


この子、生意気だなぁ、、、と助けてもらった癖に不謹慎なことを思っていたからだろうか。その数秒後、彼女はポンっと姿を消した。


「え、あれ、え、、?何コレ、夢?」


本当はカツアゲのお兄さんにボコボコに殴られていて、現在僕が認識している世界は、気絶している哀れな僕が見ている夢なのでは無いか。しかし、頬をつねってみても痛くも何とも無いし、手に握られている千円札は、確かに本物の質感がした。


「夢じゃ無い、、?じゃああの女の子は何でカツアゲのお兄さんから、コレを?」


取り敢えず、先程悲鳴が聞こえたところに向かう。すると、目の前には道端に倒れている男が数人。どうやら、全員気絶しているようだった。


「あ、カツアゲのお兄さん。」


男達の中で、一際無様な気絶のポージングをとっているお兄さんが、カツアゲのお兄さんだった。僕はますます訳が分からなくなる。


「何で、、、?あんな女の子が、男の人を気絶させられる訳ないよね。外傷も無いし、」


倒れている男達に、殴られたり蹴られたり、はたまた斬られたりといった傷は見つからなかった。


「一体何が、、、?ああ、頭疲れてるのかなぁ」


暗いことを考えながら歩いていたから、変な妄想をしているのかもしれない。取り敢えず今日は帰って、疲れを取ろう。僕は、手に持っている千円を財布に入れ、静かにその場を去るのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ