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全てが凍る地
「逃げろ! クシビ!!」
「っ!!」
雪崩が辺りを巻き込む。クシビは仲間の一人に背中を押されるのを感じた。
手を伸ばすクシビ。しかし、その手は届くことは無かった。
仲間が雪崩に飲み込まれていく──。なのに、自分はただそれを見ていることしかできない。
「はあ……はあ……」
クシビは膨大な雪山の中、一人残されたまま立ち竦む。辺り一面は真っ白い世界。仲間の姿は既に無い。
他には何も無かった。
ただ真っ白な世界が広がっていた。
「………。」
自分のすべてが凍りゆく。思考も、意思も……何もかも……。
仲間を失ってすら、涙も流れない。
涙も──心までも凍り付く。
ここは、零氷の大地。全てが凍る世界……。
【節】言い伝え
その地は、禁忌の場所とされていた。
人がそこへ入れば、決して生きて帰ることは叶わず。そこへ入れば、無数の牙を向けられる。
人が立ち入る場所に非ず。そこには魔よりも恐ろしい獣が巣くう。
ここは零氷の大地。何もかもが凍てつく世界。
全てが凍る世界。




