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――天孫降臨後、あるいはニニギとサクヤのなれそめ――


 入学式中(と言っても、主に先生方からのありがたいお言葉中)、ヒマでヒマで仕方のなかった私は、今朝の、バスの中での出来事を思い出していた。



 バスの中。しばらく静かにしていたのだが、どうにもつまらないし、聞いてみたいことがある。もう、我慢ならない。

「神宮さん、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの神話を、教えて」

  神宮さんは、おばあちゃんを見る。おばあちゃんがうなずくと、ようやく話し始めてくれた。



 ニニギノミコトが葦原あしはら中津国なかつくにへ下ってからのこと。

 散歩をしていると、とても美しい姫に出会いました。

 ニニギノミコトはひと目でその娘に恋をしてしまいました。

 そして、コノハナサクヤヒメと名乗る娘に、結婚を申し込みました。

 コノハナサクヤヒメにしてみれば、ニニギノミコトは何といってもあまかみの皇子でりっぱな若者。しかも自分に好意を持ってくれることをとてもうれしく思いました。

 そこで、コノハナサクヤヒメは、自分も結婚したいと思うことを伝えた上で、「自分の一存では決めかねます。父のオオヤマツミと相談してみますから、父からお返事が行くと思います」と言った。

 ニニギノミコトはさっそくオオヤマツミのもとに使いの者を送り、コノハナサクヤヒメと結婚したい気持ちを伝えました。



「“葦原の中津国”って?」

「そうか、一般常識だと思っていたが……そうではないものな。すまなかった。葦原の中津国というのは、ここのことだ。つまり、日本の国土」

「……わかりにくくない?」

「そんなことはない。神々の暮らす空を“高天原たかまがはら”、死の国を“黄泉よみの国”。その間にあるから、“中津国”だよ」

なるほど。それなら、わかりにくくもないね。

「父う……ニニギノミコトは、彼の祖母にあたる、天照大神アマテラスオオミカミから、中津国を治めるようにと言われて、中津国にくだるんだ。その後の話だな」

なるほど。

「じゃあ、天つ神は?」

「天つ神は、高天原にすむ神のこと。それ以外にいる神のことは、“国つ神”と呼ばれている」

ふ~ん。納得した私が黙ると、続きを話してくれる。



 娘のコノハナサクヤヒメがニニギノミコトから結婚を申し込まれたことを知ったオオヤマツミは、大喜びです。

 山ほどの贈り物をコノハナサクヤヒメに持たせ、姉のイワナガヒメも一緒にニニギノミコトのもとに嫁がせました。

 コノハナサクヤヒメを迎えたニニギノミコトは幸せいっぱいでしたが、ふと見ると一緒に姉のイワナガヒメも来ているではありませんか。

 木の花のように美しいコノハナサクヤヒメ。反対に姉のイワナガヒメはというと、岩のようにゴツゴツとしたみにくい顔です。ニニギノミコトは、イワナガヒメをオオヤマツミの元へ返してしまいました。

 イワナガヒメが帰されたことにおどろいたオオヤマツミは

「私が二人の娘を嫁がせたのには意味があるのです。コノハナサクヤヒメを妻にすれば木の花の咲くようにお栄えになったでしょう。また、イワナガヒメを妻にすれば岩のようにビクともしない永遠の命を持つことができたでしょうに。こうしてイワナガヒメだけ返したことで、ニニギノミコトとその子孫の命は、花のようにはかなく散ってしまうでしょう」

とニニギノミコトを呪いました。



「それで、その子供である神宮さんは、神様なのに短命なんだね」

「そういうことだ。この話には続きがあって……」

 言いかけた神宮さんの言葉は、おばあちゃんが押した“次止まります”ボタンのせいで、遮られてしまった。

「またあとでな」

「うん」



 ちょうど、“閉会の言葉”が終わった。



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