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和風異世界物語~綴り歌~〈久遠編〉  作者: ここば


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集結する綴る者たち

会議がはじまり卓の中央に灯された燭台の火だけが揺れ、遥花・陽路・煌志・朔人の四人の影を壁に映していた。


煌志が深く椅子に腰を下ろし、腕を組んだ。

「……使い魔からの報告を全部まとめると、天響襲撃後、敵は四手に分かれたらしい。」


陽路が頷くと、朔人が卓の上に簡易の地図を広げた。久遠の主な里と道が描かれ、墨で四つの線が引かれている。

「仮に、第一隊・第二隊・第三隊・第四隊として整理するぞ。」


煌志が一本の線を指でなぞる。

「まず第一隊だ。これは透真たちが遭遇し、山道で全滅させた。問題は残りの三つ第二隊・第三隊・第四隊だ。」


陽路が補足する。

「恭弥様が『第二隊』を追いましたが見失ったようです。その後『第三隊』が瑞穂で目撃された後、真澄で透真様の従者である凛人殿との戦い後、詞鏡を奪取し、蒼篠へ向かったと。」


朔人が静かに続ける。

「蒼篠では詞鏡を奪えなかったようですが、言霊を暴走させ、その後始末を透真様・結芽様・翔綺様がなされました。しかし、その間に逃走し行方不明となっています。」


煌志は顎に手を当て、短くまとめた。

「おそらく、『第二隊』は篝火ここへ向かった可能性が高い。この里からしか外へ出ることが出来ないからな。」


遥花の胸が嫌な音を立てる。

(茜も……この里にいるはず。ここに全員が集結で間違いない。)


その不安を見抜いたように、煌志は地図の別の線を指した。

「次に『第四隊』だ。悠理と奏多が追っていたが、奴らは悠真に現れると思われていた。しかし――」


「裏をかかれて華灯に現れた……ですね。」

遥花が言った。


「そうだ。」煌志は短く頷いた。

「奴らの目的は明確だ。詞鏡の破壊、もしくは奪取。だが、燈子の機転で本物は守られた。あれは見事だった。」


陽路が続ける。

「しかし、『第四隊』もその後行方不明です。第一隊が潰され、第二隊と第三隊の位置も定かではない……ってあれ?数が合わないぞ。」


遥花が話す。

「私と陽路が追いかけた兵士と茜の組が足りない。」


「ということは、恭弥様が追いかけていた『第二隊』が『第三隊』か『第四隊』のどちらかの可能性が高いですね。仮に二隊=三隊としましょう。」

朔人が静かに言った。


「そして最後が。」

煌志の視線が遥花と陽路に向く。


「茜殿と、幽淵の兵士。お前たちが追ってきた一組だな。」


遥花の胸が締め付けられる。

陽路が隣でそっと拳を握りしめた。


煌志が地図を閉じ、息を深く吐き出した。


「……まとめるとこうだ。

第一隊は消滅。

第二隊・第四隊は行方不明のまま篝火へ向かっている可能性があり、

茜達はすでに里に侵入している可能性が非常に高い。」


朔人が淡々と続く。

「敵が狙う最終目的は、詞鏡を国外へ持ち出すこと。もはや明白です。」


遥花の表情が険しくなる。

「……関所ってそんな簡単に出られるものですか?」


煌志は自信に満ちた声音で言う。

「甘く見るなよ、遥花。篝火は久遠の最前線。簡単には通させん。」


煌志の声が低くなる。

「だが。敵は、詞鏡を破れば言霊を大量発生させ、混乱を作ることができる。

そうなれば、どれほど厳重にしていようが関所を突破される可能性がある。」


陽路が眉をひそめる。

「つまり、最悪の事態は…。」


「詞鏡の大量破壊による、関所の壊滅だ。」

朔人が静かに言葉を継いだ。


空気が一気に重くなる。

「だからこそ、祀る者や祈る者を兵士たちの巡回に同行させ、

里のどこかで詞鏡の揺らぎ――“破壊の変調” が起きていないか探らせている。」


煌志が続ける。

「茜殿についても、指名手配に近い形で里の宿屋全てに特徴を伝えている。

宿泊者の中に該当する者がいれば、すぐ報告が入るはずだ。」


遥花は胸を抑えた。

(……茜。どこにいるの……)


陽路が冷静な声で言う。

「我々は交代で関所の見張りにつくということでよろしいですか?」


朔人は答える。

「はい。他の綴る者様が到着し次第合流を。

必要であれば、里全体の封鎖を行うべきです。」


煌志は頷き、朔人に目を向けた。

「朔人、篝火はこれより非常体制に入る。」


「承知しました。」

朔人がすぐさま部屋を出ていく。


作戦会議が一段落ついた今、急に外が騒がしくなった。

それは使いの者が報せを運んできていたようだった。


煌志が扉の方へ目を向ける。

「……来たようだ。」


扉を開くと、ひんやりとした外気とともに三つの影が館に入ってきた。


「遅くなりました。」

軽く息を弾ませながら駆け込んできたのは、蒼篠の綴る者・透真だった。

続いて、弓を背負った女性・結芽、そして三種の武器を持った少年・翔綺が姿を現す。


遥花がほっとしたように声を上げた。

「透真、結芽、翔綺!無事だったんだね……!」

透真は髪についた木の葉を払いながら苦笑した。


「蒼篠からこっちまで走り詰めでね。報告をまとめてきたけど、状況は思った以上に深刻そうだね。」


結芽が眉を寄せ、静かに言葉を継ぐ。

「敵の足取りは蒼篠で途絶えたわ。真澄の詞鏡は守れなかったけど、蒼篠の被害は最小限……急いで篝火へ向かったと見て間違いないと思う。」


「蒼篠方面から篝火へ……茜を連れた兵士と、合流を狙っている可能性もある。」

翔綺がつぶやいた。


そこへ、遠くから馬の蹄の音が響いた。


煌志が少し驚いたように目を細めた。

「……まだ来るのか?」


館の前に馬が止まり、数人が慌ただしく降りてくる気配がした。

ほどなく扉が再び開き、今度は華灯の里からの面々が姿を現す。


「失礼します。」


最初に声を上げたのは、悠理だった。

弓矢を軽々と背負い、華灯での封じの疲れを微塵も見せない。

後ろには刀を携えた従者の奏多、そして十文字の槍を持った橙子と少し疲れた顔をした蓮が控えていた。


遥花は橙子の顔を見た瞬間に声を震わせた。

「橙子……無事だったんだね……!」


橙子は、頭をかきながらいたずらっぽく笑った。


「まぁね。騙したことで、心はちょーっとだけ痛いけど、生きてるからセーフ!」


蓮が苦く笑いながら肩をすくめる。

「姉さんが無茶するからだよ……でも、何とか守りきった。詞鏡はひとつも盗まれてない。」


悠理が確認する。

「……どうやら、敵はこの里に潜んでいる可能性が高いようですね。」


煌志が応じる。

「その通りだ。今、状況を整理していたところだ。ちょうどいい、君たちにも加わってもらう。」


奏多が表情を鋭くした。

「分かりました。」


煌志が場をまとめるように両手を打った。


「では作戦を共有しよう。篝火の里は今から、半ば封鎖状態に入る。」


透真が頷き、翔綺と結芽も静かに身を正す。

悠理と奏多もすぐに真剣な表情へ変わった。


煌志は篝火の地図を広げ、指で要所を示しながら言う。

「敵は四つに分かれ、残り三つの動きが篝火方面に向かっている。

茜殿の行方は急務だ。彼女が持つ詞鏡はもちろん、救出を最優先とする。」


遥花の胸が痛む。しかし、その痛みを押し込むように強く頷いた。

「……はい。必ず、茜を取り戻します。」


煌志は続ける。

「我々は二つの班に分かれる。

ひとつは篝火の関所付近での監視。

もうひとつは里内の宿屋と隠れ家の捜索。

祀る者・祈る者たちも交代で巡回に加わる。揺らぎを感じたらすぐに報告だ。」


透真が手を挙げた。

「蒼篠組は捜索班に入ります。言霊なら私達のほうが敏感に察知できる。」


悠理も一歩前へ。

「華灯組は関所側へ回ろう。」

奏多も頷く。

「あいつは俺達から逃げ回っていましたからね。今度こそ捕まえましょう。」


陽路が遥花を振り返り、声を落として言った。

「どんな状況になっても、離れるな。」


遥花は息を吸い込み、まっすぐ陽路を見つめた。

「うん。一緒に……必ず」


こうして、篝火の里に散った仲間たちはそれぞれの持ち場へと動き出していった。


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