第二十夢:Don't be sad
祝・二十話!
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これからもよろしくお願いします<(_ _)>
私は、クリフに言われたとおり〈ステファン号〉を走らせていた。
ミリアを精一杯急かして、山道を駆け抜ける。
路面が荒いので、かなり揺れるが仕方ない。
私の膝元で、件の子はきゅるきゅると鳴きながら蹲っていた。
「ミリア、頑張って!」
まかせろとでも言うようにぶるると鼻を鳴らし、ミリアはスピードを上げる。
流石、〈風馬〉だ。
荷をしっかりと括っていて良かった。
この速度でいつものように縛っていては、既に荷物は落ちていたに違いない。
それにもしかしたら、幌内で揺れに揺れて、馬車が横転していたかもしれない。
(こう縛ると、良いですよ)
にこりと微笑みそう言ってくれた騎士のお陰だ。
――そのクリフはというと。
未だ、後方には見られない。
あの〈グレイ〉とかいう奴と戦っているのだろう。
剣を抜いたときの彼は、凄まじかった。
――強い。
普段のあの雰囲気とは違う。
浮世離れしたような、すこし暗いけれどユーモアはあるあの性格とは全然違う。
〈グレイ〉を認めた時の彼の双眸。
――楽しげに光った。
それから、一切の感情を捨てたような、朝見たときのような瞳になったのだ。
あれは、いくつもの修羅場を乗り越えた者の眼だ。
危険度〈五〉の生物に相対したにもかかわらず、彼の動作は平静と変わらなかった。
いたって普通の動作で、斬り捨てたのだ。
――あれが、本当のクリフ=シルフォードか。
あれが、私を護る楯なのだろうか。
私には、凄烈鋭利な刃に見えたけれど。
憂いを秘めたその刃は、とても強い。
――距離を感じた。
私とは、次元が異なる人物なのかもしれない。
せっかく、仲が良くなったと思ったのに。
それは、錯覚だったのかもしれない。
――なんだか、悲しくなった。
その考えに。
自分のちっぽけさに。
「きゅるるる……」
膝元で鳴き声。
滲んだ視界を落とすと、あの子が潤んだ瞳でこちらを見上げている。
「……心配してくれてるの?」
自分だって、痛いだろうに。
親と離れて、寂しいだろうに。
「ありがと……」
零れた涙が、あの子の頭に落ちる。
その子は吃驚したようで、きゅい、と鳴き声を上げた。
その涙を拭い、頭を撫でてやる。
「――もう大丈夫」
何、落ち込んでるんだ私。
らしくないじゃない。
彼は、私のために戦ってくれているんだ。
この子も、私のために心配してくれている。
ミリアだって、私のために疾走している。
泣いてる暇なんか、ありゃしないんだもの。
(歩き続けるんだ)
先生の台詞を思い出す。
そうだ、行かなくちゃ。
手綱を深く握りなおす。
「さあ、行こうミリア!」
前へ。
私は、前へと進んだ――
そういう時、そういう経験。
皆さんはありませんか?
友達が、近いようで遠いところにいるような感覚。
まるで遠近感覚が狂ったみたいな。
いつもは楽しくバカみたいに話してるのに、
いざとなると、凄かったり、頼もしいヤツ。
願わくば将来、そんな存在になりたいですね(笑)