第二章 大都市クリセスト大崩壊 第一章 大盗賊ファントム
彼らはエヒリヤスから飛び立ち数日と旅をしていた。特にこれといった出来事がなくクリセストへ向かってひたすら飛び続けていた。
「優馬もうこの景色飽きたよ」
エヒリヤスから数日たったもののあたりに広がるのはものすごく広い荒野だった、彼らは数日間飛んでいたのにもこの荒野には人の影を一切見ることもなく、何か面白いものはないかと、探していた。
「ユー、もうちょっと行ったところにすごい量のモンスターが集まっているみたいだけど。きおつけてね」
数日ぶりにモンスターの気配を感知した彼は少しの不安と興味がわいていた。
「この荒野にたくさんのモンスターが集まるってことは、水辺があるのかもですね。優馬さん、寄ってみるのもいいんじゃないですか?」
ただ背中に乗っていたシロエも、疲労がたまっていたのか、水浴びもしたいし、と寄ることを提案していた。
それから数分飛んでいたところで、シロエの言った通り水たまりにたくさんのモンスターが集まっている場所を見つけた。
「モンスターってみんながみんな襲ってくる訳ではないんですよ。それに私たちには優馬さんとユーだっているじゃないですか」
「そうだよ優馬、安心してもし襲ってきたら僕がぐちゃぐちゃにしちゃうから」
何を恐れていたのか彼は、エヒリヤスでギルドマスターたちから聞いた言葉を思い返して。それもそうだなと、水辺に着地することにした。
「それにしてもかなりの量いるなあ」
「あれって御神龍?やめてよやっと水を見つけたのに」
着地すると同時に彼は心の声を聞いた。御神龍は人間からでなくモンスターからも恐れられているのか、のそのそと水辺から離れてゆくモンスターたちも少なくなかった。
「あ、あの皆さん僕たちは危険なものじゃないので、一緒に水を飲んでも構いませんか?」
「え?あれってあの人が言ってるの?」
「まさか人間が僕らの言葉を話せるわけないじゃない」
「あ、いえ僕が話してます。」
「え?うそ」
ただ話かけ、水辺にいることの許可を得ようとしただけなのに、あたりはざわざわと、少しずつ彼の周りを囲み始めた。
「ちょっと優馬さんこれはやばいかも。」
ぞろぞろと集まるモンスターたちに少し怯えるシロエは優馬とユーの間に隠れ顔を出していた。
少し危ないかと思った時だった。モンスターの一匹が「御神龍様どうぞごゆっくり」というと、続々とその言葉を繰り返し始めた。御神龍を恐れているのは、ごく一部のモンスターであり、ほかのモンスターたちは、神と同じ存在として認識をしていた。
「え、じゃあ。お言葉に甘えて」
ユーが一歩足を前に出すと、正面に立っていたモンスターたちが道を開けて一つの道を作った。
「シロエ大丈夫みたいだよ」
聴覚共有のおかげでモンスターたちの声はシロエに聞こえ、安全を確認したうえでユーの後ろをてくてくとついていった。
「隊長!モンスターの集まる水辺に。三人の人間が入っていきました!」
荒野に草を被った男性が数名地べたに伏せて、荒野の探索をしていた。そこに一人の男性が報告に来てそういった。
「水辺が出来たのか、どの方角だ?」
望遠鏡を片手に周囲を見渡す男性がそう問い返す。
「陽の角です。」
日の昇る方を指さして、そう答えた。
「まずは三人くらいで偵察に行くぞ」
数名の中から、三人を適当に選んだ隊長は、すぐさま陽の角に進み始めた。
「ちょっとだけ、水浴びしてもいいですか?」
水辺に着いたシロエはさっそくお目当ての水浴びをしたいといって、予備で持ってきた服を片手に持っていた。
「うーん、一人離れるのは怖いけど。久しぶりの水だし、浴びたいよね?」
「私なら大丈夫です!一応冒険者でもありますし。」
「何かあったらすぐに叫べばいいんじゃない?」
ユーはのんきに水を飲みながらそう言った。
「そうよ!優馬さんとユーもいることだし、それも優馬さんは探知能力で大きい反応は確認できるのでは?」
「探知能力?」
「はい!そうです、まさかまだ取得していないのですか?ちょっと冒険者プレートいいですか?」
彼が冒険者プレートを取り出すと、シロエは盗むように取って、さっそく裏側のスキル欄を見ていた。
「感覚探知?な、なんで取ってないんですか?こんなすごいスキル」
「感覚探知?なんですそのスキル?」
「探知能力ってものがあるんだけど、それは周囲にいる魔物やらいろいろな生物の探知が可能なんだけど、感覚探知はその上位スキル、自分に対する悪意や殺意などを探知して、場所を示してくれるの。つまり、自分に害があるもののみ探知するってこと。」
そのあとに、彼はシロエに言われた通り感覚探知を取得して、常に自分の安全を確保をした。身の安全を確保したことで、シロエは水浴びに向かい、彼は旅に必要な水と周辺に集まっていたモンスターたちから様々な情報をもらっていた。
「そういえば、最近この近くで変な集団を見かけたの、確かあっちね。」
モンスターの一匹が、興味深い話を彼に話始めた。それは彼らが進んでいる東から少し左にそれた北側で、見かけた話だった、何もないこの荒野に数にして30ほどのテントを立て、ひそかに何処かと行き来する人間がいたという。そんな話を聞き終えると、シロエとユーは出発の準備が済んだようで、こちらに向かってきていた。
「シロエ、何もなかったかい?」
「うーん。しいて言うならユーがのぞきに来たくらい?」
「なんだユー、そうゆう趣味があったのか?」
「違うって、何か良くない視線を感じて、その方向に進んだらシロエがいただけで」
嫌な視線?僕の感覚探知には何も引っかからなかったけど。無害ってことなのかな。
「ユーったら、そんな言い訳しちゃって。エッチなんだから」
「う、嘘じゃないって!」
「分かったから二人ともそろそろ出発しないと、日が沈んじゃうよ」
「「はーい」」