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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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生徒会選挙に神現る(9)

しかし、これは花園総希や桜塚翼の考えていた通りの結果という事か?

筋書きが決まっていたなら初めからテストなどやるなよと思ってしまうぞ。

ただ、桜塚翼がまだ何か不敵な笑みを浮かべているのが気に掛かる。


「ちなみにお前たちの合計は38枚。これを三人がちゃんと役割分担すれば、恐らく同じ時間で50枚を完成させる事が出来るはずだが、一つ参考にしておいてほしい事がある。俺と総希はついさっき、全く同じ仕事を二人でこなしたが、俺たちは同じ三分で、60枚完成させたんだぜ!」


……ほう、やはり二人ともただ者ではないか。

花園総希は勿論のこと、彼の隣で執行部を務めていたこの桜塚翼も、

やはり底知れぬ男だと実感するものだ。

興味の無さそうな月山和佳子、ぽかーんと口を開けている後藤俊平。

「書類作成」は、全員の実力を同じ物差しで測るのに、

ちょうど良い指標になったというわけか……。

何にせよなかなか曲者が揃った執行部にはなったようだ。

桜塚翼が勝ち誇ったように笑う中、

花園総希は先ほど机上に並べた書類の一つを手に取る。


「……さて、なるべく今日中に委員長の第一候補を決め、明日中には声を掛けて回りましょう。早く行動に移した方が良さそうですからね。」

「それじゃ今日の会議は、その委員長の第一候補を決めて終了だな。」


花園総希をサポートするべく、桜塚翼が会議の進行役を務めていく。

月山和佳子は組んでいる足をゆすりながらため息をつく。


「それ、ほとんど二人で決めたんなら会議も必要ないんじゃないの?」

「……それでは執行部の意味がありませんからね。事務局三人の意見をまず聞きたいと思います。それから私たち二人の意見を話し、最終的に候補を絞りましょう。」


まあ花園総希の能力の高さをもってすれば会議など必要無さそうな上、

残る四人が束でかかっても勝てない相手だろう事は、

さすがの神も、認めなくてはならない事なのだろう。

桜塚翼が前の黒板に文字を書き始める。

学級、生活、文化、体育、美化、図書。

現存する六つの委員会であり、それぞれ委員長を選出。

その六人が執行部メンバーとなり、今いるこの五人に加わる事となる。


「これが今までの六つの委員会だが、今年度はまず最初の改革として、新たな委員会を設立するぜ!」


桜塚翼はチョークの色を赤に持ち変える。

……どうやら彼が進行役を務めるらしい。

しかしそこで意気込んだ彼が書いた文字を、花園総希が読み上げる。


「保健委員会です。設立の主な理由は、生徒数の増加により保健室が多忙化した事で、保健室の小泉先生が生徒の救護という本職をなかなか出来ていない事ですね。」


確かに綿華のおかげで保健室にはよく行くが、

小泉先生はいつもほけんだよりやら何やら別の仕事に追われて、忙しそうだ。

しかし、「彼女」のせいでよく保健室に行く神だから分かるものの、

それを花園総希や桜塚翼はよく気づいたものだ。


神が感心する一方で、月山和佳子はキョロキョロと机の上を見渡す。


「それで、保健委員長候補は誰?紙が置いてないみたいだけど。」

「ん?あれ、持ってきたはずなんだけどな……」


桜塚翼は後ろに置いていた鞄に手を伸ばし、中をごそごそと漁り始める。

その鞄の感じを見るからにあまり整理整頓が得意とは言えなさそうだ。

保健委員長か――。

……何となく、何となくだが、いやな予感がするぞ。

花園総希がこちらを見て笑顔を浮かべている。


「彼女以上の適任者は恐らくいないでしょうから、候補は限りなく一人に絞ってあります。上川君のお察しの通り……」






「あ、あたしが保健委員長ですってー!?」


古臭い反応はやめてくれないか、綿華君。

あの会議の翌日の朝、話すには早い方が良いだろうと思い、

登校中に話してみたらこの反応だ。


「……それって主にどんな事をするの?面倒な感じならやらないわよ?」

「それは神も知らん。何せ今年から初めてできる委員長、委員会だからな。」

「あっそう……それって断る事は出来るわけ?」


こうして事前に本人に伝えるという事は、この場で断る事も可能だろう。

しかし……昨日は驚きはしたものの、よくよく考えてみれば、

彼女は保健室に入り浸っているのが幸か不幸か、

かなり保健室の小泉先生の助けにはなっているようなのだ。

例えば小泉先生のサポートと言うなれば、

綿華君以上の働きぶりが出来る人間も居まい。


「断っても良いが、保健室にちゃんとした人間が入れば、今の君の様に自由に出入りは出来なくなるかもしれんぞ。」

「……それは困るわね。あたしの楽園を手放すわけにはいかないわ。」

「ハッ、ずいぶん自分勝手な楽園だな。」

「そうと分かったら引き受けるわ。ただ、私はそんなに活躍出来ないと思うわよ?その辺、変に期待しないでよね。」

「ツンデレか君は。」

「あーん女の子のおっぱい揉みたい。」

「迷わず110番。」


何とか綿華君の許可も取った所で一安心だが、

そうなってくると綿華君が執行部のメンバーに対して興味を示し始めた。


「あたし、月山先輩はグラマラスボディ過ぎてちょっとダメなのよね。他の委員長に女子は選ばれたのかしら?」

「……ハッ、残念ながら一人もだ。」




小説という物は非常に便利なもので、面倒な時間を一瞬で短縮できる。

そうだ、時間はすでに放課後。そして神ら三人は生徒会室へと向かっていた。


「はあホント、あたしこんなに気軽に引き受けて良かったのかしら。」

「まあ綿華は大丈夫だろ。なんだかんだで全部ソツなくこなすだろうしな。」

「えっそう?あたしはなんだかんだで全部メチャクチャにする女よ。」

「……うん、まあ、分からなくもないが。」

「ちょっとそこは否定してよ翔ちゃーん!」


彼の名前は翔ちゃんこと花園翔希。選挙で月山和佳子に振り回された男だ。

普段の彼はクラスの人気者で人望に厚く、そして陸上部のWエースの一人だ。

花園英希にはチャラ男系の雰囲気を感じたものだが、

この男からは男臭さが滲み出ているな。臭いという意味では無いぞ。


ちなみに四組の面々からは、花園翔希は翔ちゃんと称されている。

その理由として、クラスがまだ余所余所しかった時代に、

綿華君が、強面な彼に突然「翔ちゃん」と呼びかけ仲良くなった事による。

ハッ、なんだかんだで綿華君の果たしている役割は大きいのだ。

さすがは教団幹部。しかし布教に全然乗り気ではないのはどういう事だ。

ついでに四組の面々を神の民に加えようと思わぬか。


「思いません。」

「……えっ、何が……」

「いやごめんね翔ちゃん。なんか脳内に変な言葉が流れ込んできたから。」

「えっ、あ、ああ……」

「ハッ、それはともかく、着いたぞ。」


神の面前には扉が置いてある。それは新しい世界を開く扉だ。

この扉の向こうには選ばれた人間達が揃っている。

バルガクの選ばれた者達。ハッ、胸が高鳴るではないか。

まだ神はその中の一人に過ぎなくとも良いが、かならず頂点に立って見せようぞ。


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