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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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生徒会選挙に神現る(2)

ハッ!先ほどは少々見苦しい所を見せてしまったな。

あれは一種の悪癖……というよりは戯れだ。遊びのようなものなのだよ。

綿華君がうるさいから仕方なく付き合ってやってるのだ。

ハッ!神たるものはいかなる人民にも付き合ってやるものだ。

崇めたくなったらいつでも崇めたまえ。らくらく信仰コースは五万円からだ。



「よう、立候補用紙を出しに来たのか?」


生徒会室で神を迎えたのは、野太い声と見上げんばかりの高い身長。

現体育委員長、青木元斗アオキ ゲント

ムキムキの筋肉はサッカー部エースで部長の堂々たる証。

そのムキムキは地元で勝田・秋山・志田の三人を育て、

BL学園に三人を連れてきたと言われているムキムキ。

仕事ぶりもムキムキで、とにかくムキムキ。


……たまりませんなァァァァァ!!

しかしムキムキだ。けしからんムキムキだ。

罰として、そのたくましい肉体で組み敷いて下さいお願いします!




「……おい、どうした?大丈夫か?」

「ハッ!貴様こそ何の用だ。」

「……それはこっちのセリフだが……」

「ハッ!神としたことが。仕方あるまいこれを提出しよう。」


「……あ、ああ……確かに受け取った……」

「ハッ!では失敬!」


神は身を翻した。サッとトイレに逃げ込む。

そして大きく一息。ふう。

何あの筋肉?発禁ものじゃないの?本当にありがとうございました。

これはご飯何杯でもいけるわ。


おっとまたまた失敬、神としたことが。

これはいわば遊びなのだよ。バランスを取るためのものと言っておこう。

常にSだと人類が可哀想だからな。

こうして時折Mの自分が出てくることでバランスを保っているのだ。

何らかの不安を帯びた時、または目の前に筋肉が現れた時、

神は低俗な人間に成り果て、全てを忘れてしまうのだ。


ハッ!まあ滅多に民に見せるものじゃないからな。

断言しておこう。愚民どもにもう二度と見る機会がない事を。

そもそも神が常に人間の欲望、需要に応え続けていては、

世界が破滅に向かってしまう事は世の常であるからな。

そもそも世界というものは……


「大樹、おめ立候補するけ?」


精神を落ち着かせてトイレから出る頃、神は捕まった。

寮生ならだれでも知っているこの男。寮長「後藤 俊平(ゴトウシュンペイ)」。

元々寮内にあったらしい、厳しいルールを撤廃した男で、

恐らく一年全員がこの男を信頼しているだろう。

ハッ!神は神が最も尊大で聡明で高貴であるからして、

たかが歳一つ離れただけの一般の人間を尊敬する気持ちが分からんがな!

そもそも神とは全ての者達の中より選ばれし者であり……


「おめも事務局なんだってな!おれと一緒だっぺ!」


さすがに神はこの男にタメ口・神様口調を使う事は出来ないので、

少し何をどう喋ったらいいのか分からなくなる。

どうしよ緊張して来たんじゃけど小百合ちゃん助けてくれんかね。


「……ハッ、でも負けませんよ。」

「おう!けどおれたち二人とも当選するっぺ!」


「……どうした俊平。」


そんな後藤俊平より一回り背の大きい巨人が、彼の肩を支えた。

神はそこまで接点がないのだがこの男、読者なら知っている事だろう。

落合恒太と同室の男、「菊池博明」だ。

まあそんな事はどうでも良い。先ほどの神の発言を聞いたか?

キャラ設定を壊さないながらも最も堅実で確実な発言。

さすが神。こんなところで格の違いを見せつけてしまったぞ。


「おう博明!大樹も生徒会選挙に立候補するって!」

「……そうか。精々頑張る事だな。」

「そうだっぺ大樹、一緒に頑張るっぺ!なんがあっだら相談しろ!」

「……行くぞ俊平。」


菊池博明は引っ張るように後藤俊平を連れて行った。

これは同室の二年生から聞いた話なのだが、あの二人は付き合っていると、

そんな噂があるのは本当だろうか。


分からんくもないよね。菊池先輩も結構ガチムチじゃし。

その身体の下に埋もれたくなる気持ちはすごい分かるんよ。人間だもの。


ハッ!神としたことが。またまた失敬。

ん?なんだと?先ほど約束したじゃないかって?

もう二度と下劣なシーンを見せない約束をしたじゃないかって?

ハッ!神が君達読者との約束を守るとでも思ったのか。

これは神の気まぐれさ。世界はそうして今まで回って来たのだ。

ついでに君たちの考えている事など一目瞭然なのだよ。

私は神なのだ。物語がホワイト大河によって書かれており、

少数の読者が物語を読み、薄ら笑いを浮かべている事など、

常識レベルで知っており、民の未来がどうなっているのかも……


ガンッ!


「遅い!油売ってる暇あったら帰るわよ。一応待ってたんだから。」


「ハッ……しかし綿華君、神聖なる神の頭を殴るとは何事か。教団幹部の君がそんな事では下々の者に示しがつかんだろう。」

「え何それ、下々って何?オチくんたちの事?分かんない。」

「ハッ!理解しようとしない人間に説明する程無駄な事は無いな。」


神一行は帰路に着いた。

とはいえ二人とも寮で、それが別々なだけなので大した帰路では無いが。


「大丈夫なの?立候補者は四人、誰か一人が落ちるんでしょ?男子寮長の後藤先輩、2年のアイドル月山先輩、それから大人気の桜塚君の三人相手に、圧倒的少数派の私達が勝てるとは思えないけど。」

「ハッ!神ならどんな状況でも覆すものだよ。」

「……あら、すっかり神様モードじゃない。頼りになるわね。」

「見ていろ綿華君。神が天をつかむ時への、カウントダウンは始まっている。」


綿華君はため息をついた。

頼りになると言っている割に、神を信頼していないとでも言うのだろうか。

ふむ。そろそろ教団の幹部としての再教育を施さねばならんな。


「気軽に推薦者代表やるって言っちゃったけど、檀上でスピーチよね……ちょっと決断早まっちゃったかしら?」

「珍しいな。君の弱気は滅多に見れるものじゃないからな。神でさえまだ一度しか見た事は無いぞ。」

「さすがに弱気になるわよ。ポスターに垂れ幕、あいさつ運動……そういうのは何とかなるにしても、壇上に一人で立ち慣れて無いの。中学校生徒会長だった貴方のようには、ね!」

「ハッ、神が弱気になる度に、神を叩き上げた女の言うセリフとは思えんな。」

「……そんな事したかしら?」

「まあいい。神は休む。教徒の落合君たちが待っているのでな。これにて。」

「……オチ君にはほどほどにしといてあげなさいよ!」


綿華はそう言って左手を挙げ、西の方角へ走り去っていった。

ふむ。忘れていた。新しく作った神様体操第四体操を披露せねば!

さあただ待っているだけで良いぞ神の民よ。まもなく神のお出ましだ。


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