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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
最終章 罰

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【斬琉SIDE】死後の世界に愛されし二人の末路 後編

 「そんなに怖がることないじゃん。傷ついちゃうな~」


 私が一歩足を踏み出す度、ヘルちゃんと一ノ瀬心が後ずさる。

 二人は私が聞えない程度の声で言葉を交わす。


 そしてー


 「冥界の管理者として命令します。あれを足止めして!!」

 「裏拍手 開門!!」


 一斉に能力を開放した。

 6体の人型死体で私の気を引いて、その間に一ノ瀬心が作ったゲートで冥界に逃げ込む算段かな。

 

 かなり無茶な力の使い方してるなぁ。

 これじゃぁ、私から逃げきったとして日常生活で確実に支障が出るよ。

 体の半分殺したのと同じじゃん。


 そこまでして私に捕まりたくなかったのかな?

 まぁ、逃がすつもりは無いけどね。


 「グレイプニル・レプリカ」


 私の右手からあふれ出る紫色の液体がひとりでに動き出し、形を作る。

 それはグレイプニルの能力をコピーした模造品(レプリカ)となって現れた6体の死体を貫き、ヘルちゃんと一ノ瀬心の体を捕縛した。


 「逃げきれると思った?」


 グレイプニルを振り回して、二人の体を地面に叩きつける。

 もうその場から動く体力も残っていない二人に向かって、私はゆっくりと近づいた。


 「別に私としては逃がしてあげても良かったんだけどさぁ。それするとこの首輪が容赦してくれなくてね」


 『罪人へ罰を与える事』

 『そして牛草秋良とファナエル・ユピテルの件は最優先で処理すること』


 アルゴスに課せられた神罰に逆らった瞬間に私の首がしまっちゃうからね。

 秋にぃとファナエルさんに近づく為にヘルちゃんの計画に乗っかったのはセーフ判定だったけど、ここで見逃しちゃうのはアウトだ。


 「さて、一ノ瀬心君。君は『僕』と始っちに向かってこう言ってたね、僕は人間全員悪やと思っとる。いわゆる性悪説って奴を信じてるってさ」


 「……こんな時になんの話や」


 「いや~、もったいない事言ってたから死ぬ前に考えだけでも改めてもらおうと思ったんだよ」


 元々私に課せられていた神罰は『下等生物である人間に従事する存在となる生活を未来永劫続ける事による尊厳の破壊と身柄の束縛』だった。


 だからこそ色んな人間の生活を、願いを沢山見て来た。


 だからこそ思うんだ、『世の中の人間は全員悪人だ!!』な~んて思いながら過ごすのはもったいないってさ。


 「世の中にはいろんな人が居るんだよ。善人、悪人、家族だけに優しい人、自己嫌悪が鳴りやまない人……全てを口にするのは不可能なぐらいね。だからこそ人間の世界は面白い」


 私は色んな人間の願いを叶えて来た。

 

 男からモテる為にこの世の全てを知りたいと言った魔女は代償として私に体を差しだした。

 身の回りの人間を見返す為に努力したいと願った青年は私に教えを願った。

 不治の病に侵された母親を救いたいと願った少女は私に泣きついた。

 会社に復讐を誓った男の為に、私は数多の人間を殺した。



 そして、綺麗な転校生と恋人になりたいと願った兄の恋愛を応援した。


 「この世界には心温まる話も胸糞悪い話も何でもござれなんだよ。色んな味を楽しめるのに憎悪や悪意にだけ没頭しちゃうのはもったい無いでしょ?良い事も悪い事も満遍なくこなしてこの世界をもっと楽しまないと!!」


 気持ちよく演説する私を二人は呆然と見つめていた。

 しかも私達を見逃すハッピーエンドがあっても良いじゃないかと言いたげな表情で。


 確かに、冥界の支配者とただの人間の禁断の恋とか面白いと思うよ。

 死後の存在を操るって共通点もあるしね。


 でも……そう言うのもう飽きたんだよね。

 秋にぃとファナエルさんでお腹いっぱいなの。


 「さて、言いたい事は終わったし終わりにするね」

 「ま、まってー」

 「ごめんね~。この後大好きな秋にぃとファナエルさんを叩き潰すっていうメインディッシュが待ってるんだ」


 ヘルちゃんの制止を振り切って、私は左の拳で思いっきり二人の体を貫いた。

 死体となった二人の顔は絶望にまみれた面白い表情をしている。


 アンモラルな刺激で心がゾクゾクする。

 疎遠だった娘とその彼氏を絶望させただけでこんなに満足できる。


 兄として慕ってきた人間と、自分が懇切丁寧に手助けして出来たその恋人を自らの手で壊したそのとき、どれほどの刺激が私の心に響いて来るだろう。


 「さて、秋にぃとファナエルさんの絶望顔はどれだけ私を楽しませてくれるのかな」


 ヘルちゃんの体からあふれ出たヘドロの一部をすくって口に流しながら、私は一人で静かに笑ったのだった。

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