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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
3章 罪

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『いつかいつか』は手遅れになる前に

 「おーい帰ったぞ」

 

 ファナエルと一緒に映画を見た後、俺は一つのレジ袋を持って自宅へ帰っていた。

 右手にぶら下げたレジ袋の中にはこの家の暴君が食べたがっていたアイスクリームが入っている。


 「おかえり、秋にぃ」

 「ほら、食べたがってたやつ買ってきたぞ」

 「どれどれ〜。秋にぃがちゃんとお使いできたかどうか、天才妹のこの僕が確かめてしんぜよう」

 

 だぼっとした黒いTシャツとショートパンツで出迎えた斬琉(きる)は俺の腕からレジ袋をひったくるとスキップしながらリビングへと向かっていく。

 俺は玄関の鍵を締めてやけにテンションの高い妹の後を追った。


 「お〜ちゃんと買ってきてるじゃん。奇跡の復活を果たした伝説のナポリタン味」

 「それ、ネットでは不味いって騒がれてるやつだろ?なんでわざわざそんなゲテモノ食べるんだよ」

 「秋にぃは分かってない。美味しいアイスなんていつでも食べれるんだよ?こんなに不味いって評判のアイス、一回は自分の口で食べてみたいじゃん」

 

 斬琉(きる)はそう言うとアイスの封を破いて口の中へ放り込んだ。

 アイスを頬張るその顔を見る限り、ナポリタン味は相当まずかったらしい。


 「お前の考えは否定しないけど無茶はすんなよ。口直し用のアイスも買ってあるから」

 「これ高いやつじゃん、本当に良いの秋にぃ?」

 「いいんだよ。めったに無いお兄様からのプレゼントだ、ありがたくもらっとけ」

 「え、まじで良いの?やったー!!」


 まぁかなり痛い出費だったけど良い事にしよう。

 なんだかんだに斬琉(きる)は感謝してるからな。

 

 「そう言えばもうすぐ7月だねぇ」


 斬琉(きる)は口直し用の高級アイスを頬張りながらそんな事を呟いた。

 今年の夏は熱くならないと良いなとか、やっと快晴の空が見れるなって言葉を返したのだが‥‥‥なぜか斬琉(きる)は困った様な顔を浮かべていた。


 「もう一回言うよ?もうすぐ7月だね秋にぃ」

 「お、おう。そうだな」

 「あ~もう!!コントやってるんじゃないんだよ!!自分の誕生日がいつか覚えてる?」

 「自分の誕生日忘れる訳が無いだろ。7月1日だよ……あ!」


 そう、俺は自分で言葉に出してようやく気づいたんだ。

 自分の誕生日が近づいている事実をすっかり忘れてたって事を。


 「そ~だよ、1日だよ!!7月始まって一番最初の日だよ!!なんで6月も終盤なのにそんな他人事みたいな感じなの??」

 「あ、いやほら。ここ最近色んな事があったからすっかり頭の中から抜けててさ」

 「もしかして秋にぃ……ファナエルさんに自分の誕生日教えてないの?」

 「そういえば互いに誕生日の話はしてないな」


 斬琉(きる)は呆れた顔をして大きなため息を吐いた。


 「道理で僕の予定が狂う訳だよ」

 「なんだよ、予定って」


 そんな疑問を投げかけると、斬琉(きる)は何故かテーブルの上に置いてあったサングラスをおもむろに装着し「いいですか?」と教師の様な口調でその予定とやらを語り始めた。


 「まず、秋にぃの誕生日にサプライズプレゼントを送ろうと考えたファナエルさんが僕に相談をします」

 「おう」

 「そこで男装した僕がファナエルさんと二人で買い物に行きます」

 「おい、ちょっと待て」

 「それを見て嫉妬する秋にぃを僕がニヤニヤしながら眺めます。めでたしめでたし」

 「何もめでたくないだろその計画!!」

 「うるさいうるさ~い!!妹としてはベタベタなお約束に振り回される兄をこの目で見たかったの!!」


 ぷくーと頬を膨らませて駄々をこねる妹。

 こんな姿を見たのも久しぶりの様な気がするな。


 ポコスカと俺の身体を叩きながら声を上げること数分、やっと落ち着いたのかいつもの調子に戻った斬琉(きる)はサングラスをでこの方へグイッと上げてこちらをジィっと睨みつけていた。


 「このまま終わるもんか。プランBを結構して誕生日デートでイチャイチャしてる二人の写真かき集めて一生からかってやる~!!」

 「お、おい。どこ行くんだよ」

 「僕の部屋だよ。秋にぃは7月1日まで変な予定入れないでよね」


 斬琉(きる)はそんな捨て台詞を吐きながらリビングを去っていった。


 「始っち、やっぱり駄目だった。プランBでいこう。ファナエルさんへの連絡は僕がするよ」

 「……まったく、お節介な奴らだな」


 スマホを耳に当て、階段を上っていく妹の姿を見てそんな言葉をこぼす。

 この時、俺は不思議とファナエルが転校してからの数日間を思い返していた。


 『でも俺は知ってるぜ。クラスメイト達がファナエルさんに告白してる場面を見るたびお前がどぎまぎしてることをよ』


 最初に(はじめ)が背中を押してくれたおかげで俺はファナエルに告白することが出来て。


 『本当は嫌だけど!!僕の気持ちを割り切って秋にぃとゲロクッキー女が付き合えるようにサポートしてあげる!!』


斬琉(きる)が何かとサポートしてくれたおかげでファナエルとの距離を縮めることが出来た。


 今の俺があるのは二人のお陰だ。

 だから、今日斬琉(きる)にアイスを買ったみたいに少しづつ恩を返して、いつか感謝の言葉を伝えたいって考えている。


 『愛の言葉は声に出したほうが良く心に響くと思うの』


 ファナエルに言われた言葉が頭の中を巡る。

 きっとあいつらへの感謝の言葉も声に出した方がきっと良い。


 頭ではそう分かっているのに昔からの付き合いのあいつらに改めて感謝の言葉を告げるのは、ある意味ではファナエルに愛の言葉を告げるより難しい様に感じてしまう。

 昔から一緒だった分、あいつらに見せていない所……変わった自分を見せることによく分からない抵抗感を感じてしまうからだ。


 「でも、いつかいつかって思ってるだけじゃ駄目なんだよな」


 自分の頬を軽く叩く。

 7月1日の誕生日を迎えた後、俺は17歳になる。

 成人まで1歳差、ほとんど大人みたいなもんだ。


 大人になった俺ならきっと感謝の言葉を二人に伝えられるだろう。

 そこでもどもってしまえば心の中で「情けない」って自分に発破をかけることも出来る。


 臆病な俺を動かせられる理由が出来る。


 だからその時はちゃんと声に出して始と斬琉(きる)に今までの感謝を伝えよう。

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