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坂本さんの異世界飯処  作者: とま坊


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【第21話】教師とチキン南蛮定食

異世界に何故か飛ばさせてしまった料理人「坂本」は腹を空かせたお客に温かい普通のごはんを振る舞うハートフルストーリー…

本日のお客様は学校の先生。

いつもはあまり食べないのだが…

王都にある学園で教師を務める男、

エドガーは今日も朝から忙しく働いていた。


授業の準備に、生徒達の課題の確認。

更に会議まで重なり、

気がつけば昼を大きく過ぎていた…


「――もうこんな時間か…」


もともと食が細い彼は、

食事を抜くことも珍しくはない。

昼食も簡単なもので済ませるつもりだったが、今日は朝からほとんど何も口にしていなかった。


そろそろ何か食べようと、

学園を出て通りを歩いていると、

見慣れない店が目に入った。


小さな看板を掲げた、

落ち着いた雰囲気の店だ。


「へぇ、こんな所に店があったのか…」


少し迷ったが空腹には勝てなかった。


「いらっしゃいませ!」


エドガーがドアを開けると一人の少女が声をかけてきた。


「お一人様ですか?」


「あぁ、一人だ。」


「こちらの席にどうぞ!!」


案内された席に腰を下ろすと、

エドガーは店内を見回した。

小ぢんまりとしているが、

清潔感があり落ち着いて食事が出来そうな店だ。


「本日の日替わり定食はチキン南蛮定食ですよ。少々お待ちくださいね!」


シャルロットが笑顔で告げる。


「チキンナンバン…?」


聞き慣れない料理名に、

エドガーは首を傾げた。


「はい!

鶏肉を揚げて甘酸っぱいタレに絡めた料理です。とっても美味しいんです!」


「なるほど。ではよろしく頼む。」


「はい!」


注文を受けたシャルロットは、

厨房へと向かった。


「坂本さん、チキン南蛮定食一つです!」


「あいよ。」


厨房では坂本が調理を始めていた。


鶏肉に軽く下味をつけ、

衣をまとわせて油の中へ入れていく。

じゅわっ、と小気味よい音が店内に響き渡る。

揚がった鶏肉を取り出すと、

余分な油を切り甘酢ダレにくぐらせていく。そして細かく刻んだ玉ねぎや卵を使った

自家製タルタルソースをたっぷりと乗せた。

皿に盛りつけたチキン南蛮の隣に

千切りキャベツと彩りの野菜を乗せ、

炊きたてのご飯と味噌汁を添えれば完成だ。


「はーい、お待たせしました!

本日の日替わり、チキン南蛮定食です!」


目の前に置かれた料理を見て、

エドガーは少し目を見開いた。


「ほぉ、なかなかの量だな。」


皿の上には揚げた鶏肉が何切れも並んでいる。

その上に白いタルタルソースがたっぷりとかかっていた。


普段から食事の量が少ないエドガーにとっては、少々多く感じる。


「いっぱいあるんで沢山食べて下さいね!」


シャルロットがそう声をかけると、

エドガーは苦笑した。


「あぁ、ありがとう。」


彼はまずチキン南蛮を一切れ口に運んだ。


――サクッ…


衣の軽い食感の後、

柔らかな鶏肉の旨味が広がっていく…

甘酢の程良い酸味が口の中をさっぱりさせ、そこにタルタルソースの濃厚な味わいが重なった。


「これは良い…」


思わず声が漏れた。


酸味とまろやかさのバランスが絶妙だ。

揚げ物でありながらもくどさを感じない。


続けてご飯を一口。


甘酢とタルタルソースの絡んだ鶏肉を食べ、ご飯を頬張る。

今度は味噌汁を口に運ぶ。


「うん、これはオコメによく合うな。」


いつもはおかずを少し食べただけで満足してしまうが今日は違った。


一切れ、また一切れと箸が進んでいくのだ。


気がつけば、ご飯も半分以上減っていた。


「お口に合いましたか?」


様子を見ていたシャルロットが声をかける。


「あぁ、実に美味いね。

実は私はあまり食べる方ではないんだが、

これは不思議と箸が進むよ。」


「ふふっ。それは良かったです!」


エドガーは少し照れくさそうに笑い、

再び食事に戻った。


ゆっくりと時間をかけながら、

最後の一切れまで食べ終える。


ご飯も味噌汁も、

皿の上にほとんど残っていなかった。


「ふぅ、ごちそうさまでした。」


エドガーは満足そうに腹をさすった。さすがに満腹だったが、

不思議と苦しいという感じはしない。


「ふぅ、久々にこんなにしっかり食事をした気がするな。」


「それは良かったです!

また食べに来てくださいね!」


「あぁ。そうさせてもらうよ。」


会計を済ませ、エドガーは店を出た。

午後の仕事はまだ残っている。

明日も授業があり、やるべき事は山積みだ。

それでも、今日は少し気分が軽かった。


「――また来よう…」


そう呟くと、エドガーは学園へと続く道を歩き始めた。

店内では、シャルロットが厨房の坂本に声をかけていた。


「坂本さん、さっきのお客さん、

とっても満足そうでしたね!」


「あぁ、そうだな。」


「また来てくれるといいですね!」


「来るかどうかは本人次第だよ。

まぁ、喜んでもらえたのは良かったがな。」


いつも通りの素っ気ない坂本の返事に、

シャルロットはくすりと笑う。


そんな坂本との何気ない会話が

シャルロットには特別だったのだ…

後片付けをしていたのであった…

読んでくださりありがとうございました。

チキン南蛮は様々なタイプがあると思いますが皆さんはどんなタイプがお好きでしょうか?

私はしっかりと甘酢が染みたタイプが好きで、鳥の酸味とタルタルのまろやかさがめっちゃ美味しいんですよね!


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