再会
「よし、救助に入ります。ジョーさん、かぼす、剣を」
「了解!」
「ああ」
スクリーンに、ウロボロスの超音波スキャン映像が出る。
長い胴体に、ぼんやりと白い影がいくつか見える。骨と、内臓。
ポインタが、大きな影を指し示している。
穣は、唾を飲んで立ち尽くした。
情けない。手が震えている。足も。
「ジョーさん!」
ブレイドに呼ばれ、何も考えずに身体は動いていた。
影。
あれが。
本当に、あれが。
「豊浦……!」
めまいがする。片方のこめかみががんがん痛む。
息ができない。
「ジョーさん、左側からお願いします」
「大丈夫っすか?」
二人の問いに、機械的に頷いていた。
蛇の腹に、剣を突き入れる。麻酔のせいか、反応が鈍い。
スクリーンを確認しながら、慎重に切開を始めた。
シールドとミラーが傍らから超音波の照射を続けていてくれるので、剣の影もはっきり見える。
反対側から、ブレイドも同じように蛇の腹を開いている。
誰もが無言だった。コメントの表示も切ってあるので、配信の様子もわからない。
豊浦。
本当に、ここに。
『次元位相のずれを確認』
額の汗を拭ったとき、ミネルヴァからの警告が入った。手元を見ると、わずかにウロボロスの身体にブレが生じている。
「くっそ、おとなしくしとけよ、あとちょっとなのに!」
「大丈夫よ、冷静に続けて。ここまで来たらあと少しよ」
『ずれに干渉。対象物の次元固定を完了しました』
ウロボロスの状態が戻る。深呼吸して、穣は作業を再開した。
シミュレーションよりも、肉が厚い。とはいえ刃を入れすぎると、中にいる豊浦を傷つけてしまう。
「ジョーさん」
ブレイドが、剣を抜いた。穣はそのまま、歯を押し進める。
切開口が、繋がる。
かぼすとミネルヴァが、上下に大きく割り開く。
ぬちょ、という音が、まず耳についた。
スクリーンの中で、影が動く。
ゆっくりと、外側に。
穣は、手を伸ばした。
腕と上半身、顔にまで不快な粘液が飛び散った。
けれど少しも気にならなかった。
迷彩服。ヘルメット。
汚れた顔。
でも、わかった。
「豊浦……っ!」
記憶の中の面影と、寸分違わない顔立ちだった。




