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ダンジョン配信の理由  作者: 八谷 響
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発見

『まじでかよ。やばいじゃん』


『ミネルヴァたんがんばれ!』


『スキャン急がないと。大丈夫か?』


『ていうか、先に蛇倒せばよくね?』


『導入で説明してたじゃん。下手にウロボロスを倒したらダンジョンのタイムループがなくなって、大損害になるかもしれないからできないって』


 そうなのだ。


 ダンジョン内のタイムループを起こしているのがウロボロスである以上、仕留めてしまえばダンジョンの時間が地上の時空と同一になる可能性が高い。そうなると、タイムループに依存しているダンジョン資源は、安定的な確保が困難になる。下手をすれば、枯渇してしまうかもしれないのだ。


 ダンジョン資源、特にグソール草への依存度が高い日本にとっては致命傷になる。


 心臓さえ避ければウロボロスは簡単に死なないだろうということで、縫い止めて腹の中の豊浦を探し出し、その部分だけ切開して救出するというまどろっこしい作戦になったのはそのためだ。


「ブレイドリーダー! ジョーさん!」


 かぼすが叫ぶ。


 ウロボロスが、尾を大きく振ったのだ。刺さっていた剣がはじけ飛び、尾はそのまま近くにいたシールドを襲った。


「シールド!」


「姉さん!」


 穣とブレイドは思わず一歩踏み出したが、ほぼ同時にウロボロスの頭を振り返った。


 ――まずい。


 ウロボロスは大きく身体を振り動かし、剣を抜こうとしている。


「ブレイド、こっちを任せても?」


「はい、尾をお願いします!」


 短く言い交わし、穣は尾に向けて走った。途中で落ちていた剣を拾う。刃こぼれはしていない。まだ使えそうだ。


「くっそ!」


 スクリーン内で、かぼすがウロボロスの頭部の傷目がけて槍のようなものを投げた。内部に麻酔薬が入っている注入器だ。犬などにも使える薬剤だが、ウロボロスに投与して十分効力がでるかは不明だ。通常の蛇では、ガスにして吸引させるか気管から投与するなどの方法もあるが、おとなしくしてくれそうにないので注射式だ。


 注射槍はウロボロスの身体に刺さり、蛇はまた威嚇音を立てた。尾が痙攣したようにぴんと張っている。そこを目がけて、穣は拾った剣とスペアを同時に突き刺した。


「すまない」


 体勢を立て直していたシールドが、超音波スキャンを再開する。尾の先端から一メートルほどは人間が入れるほどの幅がないので、スキャンを後回しにしているようだ。


 改めてウロボロスの全長を見ると、本当に長い。一〇メートルはあるだろうか。頭部と尾から同時にスキャンしているといっても、終わるまで時間はかかる。


 焦ってもしかたがない。だが、やはり気は急く。


 ――あと一回しか、次元位相ずらしを妨害できない。


『いたにゃ!』


 超音波スキャンの結果を分析していたドラが叫んだ。


『目標対象物と思われる影を発見したにゃ! 直ちに分析に入るにゃ!』


『量子コンピューターに接続中。――人間である可能性が九〇パーセント以上になります』


「よっしゃ!」


 ウグイスが拳を握った。


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