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第9話

街の中の右上、俺たちが2番と番号を付けた場所。

ここには、錬金術や鍛冶に使う素材、料理に使う食材を扱うお店が多い。

他にも、各種ギルドの本部がここに存在する。

ギルド本部に一度集められ、そのあとここのお店に素材が出回っているんだろう。

後で出店なんかも見ておこうかな?


「素材を扱っているお店、食材を扱っているお店、各種ギルド、どこに行く?」


黒猫が聞いてくる。

うーん・・・、素材は今見てもわかんないだろうからパス。

食材は俺しか意味ないだろうから保留だな。

残るはギルド関連か・・・。


「ギルド・・・かな?」


「理由は?俺的には素材を見るのかなって思ってたけど」


「や、素材見てもわからなくね?って思ってさ。あと、食材は俺しか関係ないじゃん」


「あー・・・まぁ・・・うん、だな。そうするとギルドしか残ってないのか」


「うん。ギルドでお勧めのお店とか聞けるかもしれないしさ、ギルドでよくね?」


「・・・だな。じゃあ、どのギルドに行く?個人的にはそこにある冒険者ギルドがいいんだけど」


「奇遇だな、俺もそこがいい。なぜなら、冒険者ギルド、その響きがいいからだ」


「わかる、わかるぞ。やっぱり冒険者ギルドっていいよね。じゃ、入るか」


大通りに面している、冒険者ギルド。

剣と杖と盾がモチーフの看板はなかなかにかっこいい。

ただ、銃がないことにちょっと不満があるけどな。


中に入ると、物語に出てくるような場所とはまったく違った。

机と椅子があって、冒険者が酒を飲んでいる。

そして、掲示板に依頼書が貼ってあるのを想像していた。

実際は、役所を連想させる構造になっていた。

受付に番号が振られ、そこでどんな仕事をしているのかが横に書いてあった。


「すぅー・・・はぁー・・・。あれだな、これじゃない」


「・・・・・・わかる」


一瞬でテンションが落ちる。

中に入る前までのワクワクとドキドキが嘘だったかのようになくなる。

なんでゲームの中で役所を見ているのだろうかと本気で思う。


「・・・とりあえず、受付に話を聞きにいくか」


「・・・だな」


横にある案内板に従い、総合案内の受付に向かう。

受付にはそれはそれは美しい女性がなんてことはなく、普通の中年のおっさんがいた。

ここの運営は力の入れ所がおかしくないか?

キャラクターエディットのあいつなんかめっちゃ美人だったけど1度しか会わないじゃん。

こっちのおっさんは定期的に会うんだぞ?

どっちに力を入れるべきかなんてわかるだろ。


「あのー・・・」


「はいはい、どうしました?」


「ここって冒険者ギルドでいいんですよね?」


「はい、ここは冒険者ギルドですよ?何かお困りごとですか?」


「ここで何ができるのかとか、何をする場所なのかとかが知りたくてですね・・・」


「あーはいはい、ギルドの役割についてですね。その説明は長くなるのですがよろしいですか?」


「大丈夫です」


「こっちも大丈夫です」


「では、担当の者に説明させますので、あちらの応接室にてお待ちください」


俺たちのやや後ろ、入ってきた扉から見れば右側の部屋に行くよう言われた。

まぁ、うん、あれだ。これ現実の役所じゃん。

この少し雑だけど丁寧な対応とか絶対役所だろ。


応接室にて少し不満を洩らしながら待っていると、さっきとは別のおっさんが現れた。

おい、運営。なんでここでもおっさんなんだよ。

不満しか出ねーぞ、可愛い女の人に変えろ。


「いやはや、お待たせしました。ギルドの役割についてお聞きしたいとのことですが、よろしいですか?」


「はい、お願いします」


「では、ギルドとは、と冒険者ギルドとは、の2つをお話しさせていただきます。途中疑問が出てくるかもしれませんが、遠慮なく質問してください。最初にギルドとは何かを説明させていただきますね。ギルドはそもそも・・・」


このおっさんの話は長かった。

が、結構大事なことを話していた。

ギルドとは、運営が用意した補助施設のことで、誰でも利用可能とのこと。

対してクランとは、プレイヤーが用意した施設のことで、特定の個人しか利用できない。

だから、目的別にギルドが作られているとのこと。

ここ、冒険者ギルドの他にも各種生産職ギルドがあって、誰でも利用可能らしい。


冒険者ギルドとは、戦闘職用のギルドであり、モンスターの素材買い取りがメインらしい。

生産職向けの素材販売であったり、仕事の依頼なんかも扱っているとのこと。

プレイヤーが他のプレイヤーに仕事を頼むことも可能ってのは少し面白いなと思った。

俺じゃ取りに行けない素材を他のプレイヤーに頼む、いいね。

知り合いが少ない人やソロプレイヤーにとっては大きな助けになると思う。


「・・・以上となります。他にもいくつかあるのですが、レベル制限があったりするので、今全てをお話しすることは出来ません。そうですね・・・15レベルになったときに来ていただければお話しできます」


「15レベル・・・なるほど、その時にまた来ますね」


「ええ、お待ちしております。何か質問等ありますか?無ければ長話もこれで終わりにしますが」


「あ、はい。ここら辺にはモンスターの素材を扱っているお店が多いじゃないですか。それってどこのお店にどういった素材を渡すとかって決まってますか?」


「近辺のお店ですか・・・、そうですね。ある程度決まっています。なんでしたら、一覧表のようなものをお持ちいたしましょうか?」


「あ、お願いします」


「畏まりました。そうですね・・・5分から10分程お待ちください」


そう言って中年のおっさんが出ていく。

少しリラックスする。


「長いって言ってたけどさ・・・長いわ」


「それ・・・え?あのおっさん30分もしゃべり続けてたの?なげーわ」


「30・・・そりゃこっちも疲れるわ。あーでも、ギルドとクランの違いは知らなかったな」


「ちゃんと意味があったんだって思った。あと、依頼は便利だと思う」


「あれなー。知り合い少ないと自分じゃ無理な場合諦めるしかないからな、これなら運さえよければ誰かが解決してくれる」


「問題は依頼について知ってる人がどれくらいいるかだよな」


「そこそこいるんじゃない?」


「俺らプレイヤーも依頼を出せるってことを知ってるかどうかだよ。そんなこと、どっかに書いてあったか?」


黒猫が何かを思い出そうとしている。

おそらく、事前に見た公式HPの内容だろう。


「・・・なかった気がするな。運営が自分の足で情報は探せって言ってたのはこういうことか」


「だろうね。結構重要な情報だと思うぞ。ただ、あの長話はもういい」


「俺も2度目は嫌だわ。あっ、てかさ、一覧表とか結構便利なもの貰えたな」


「貰えなかったら割に合わないから。てか、戻ってくるまでちょっと休むわ」


「確かに・・・。俺も少し休むか」


二人してかなりぐでーっとした体勢になる。

今見られたら多分だけど怒られるだろうね。


しばらくすると、おっさんが戻ってきた。

一瞬で元の姿勢に戻ることに成功し、変な体勢になっていたのはばれなかった。


「お待たせしました、こちらになります」


「ありがとうございます」


4.5枚の紙を貰う。

そこには店と店主の名前、店の位置、その店に卸している素材の種類が書いてあった。

意外に細かく書いてあって驚きだ・・・。


「他には何かありますでしょうか?」


「そうですね・・・いえ、特に思いつかないのでいいです」


「こっちも特にないので、大丈夫です。本日はありがとうございました」


「いえいえ、これも仕事ですから。喜んでいただけたなら幸いです。では、出口まで案内させていただきます」


おっさんの見送りとかはいらないけども、流れ的に断れなかった。

見送られながら今後のことを少し話し合う。


「おっさん、見送りしすぎじゃね?まだこっち見てるよ」


「・・・もうおっさんはいいよ。女の子見たい」


「・・・わからなくはないな。とりあえず、そこの喫茶店で休もう」


「・・・俺座れなくね?・・・って、ここ最初の喫茶店じゃん。あ、店員さんが俺専用の椅子用意してくれてる。これ入るしかないじゃん」


「なんでもいいよ。俺は疲れた」


商売上手な店員と疲れたから休みたいとの理由で俺たちは喫茶店で休憩することにした。

思い返せば今日は集中して何かをすることが多かったし、結構疲れが溜まってるのかな?

まぁ、初めてのVRで緊張してたのもあるかもしれないし、今日はここで終わるのもいいな。


「さて、どうするって聞きたいけど俺は疲れた」


「俺も疲れたわ。俺はとりあえずさっき聞いた話を掲示板に載せるのと、アホ共一言落ちるって伝えて今日は終わろうと思う。」


「あー・・・俺もそうするかね。なんだかんだ言ってもう22時過ぎだし」


「うっわ、本当だ・・・。気付かなかった」


黒猫に言われて気付く、もう22時だ。

普通にゲームやるだけならこれくらい普通にぶっ通せるけど、VRだと無理だな。

実際に歩いたり、長話を聞いたりで、精神的な疲労がやばい。

○ボタン連打での会話がどれくらい楽なのか改めて知ったよ。


その後は、掲示板に情報を書き込む作業をした。

途中、色々と質問がきて大変だったが、なんとか対応できた。

大変だったのはリストを見たいと言う声が多かったこと。

スクショを撮ることで大量の文字入力をしなくて済んだ。

あれを手打ちで書き込むとかやりたくない。


最後に、アホ共に先に落ちるってメールをした。

予想通り返事は返ってこなかったけど、気にしない。

黒猫と明日の待ち合わせ時間と場所を決め、ログアウトする。

晩御飯を食べて、お風呂入って寝て、続きは明日だ。




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