第42話
「んで?なんで俺までいるの?」
ここは草原。
ただし、いつもの草原ではない。
試験に合格した為、結界を超えることが出来るようになった。
つまりは、結界を超えた先にある草原。
出てくる敵が強くなったくらいでそこまで差はない。
「近くにいたから」
「白狐が敵を連れてくる人が必要って言ってたから」
「それは分かるけどさ、何で俺なの?」
虹鳥が俺と灰虎に対し文句を言う。
一応こいつはまだデスペナ中だからな、その気持ちは分かる。
「近くにいたから」
「近くにいたらしいから」
「それで納得すると思うなよ?」
「じゃあ帰っていいよ。試験中に自分勝手な行動をして死ぬ雑魚リーダーさん」
「・・・・・・頑張ります」
「よろしい。とりあえずお前は敵を連れてくるのとその剣を扱えるように練習な」
「くっそぉ・・・行ってくるわ」
ふっ、勝負にすらならなかったな。
本音を言えばきちんとした理由があるけどそれを伝える必要は無い。
だって恥ずかしいもん。
「本音は?」
「雑用で使ってあげたし大剣使うの許してあげようかなーって。他のメンバーの為に頑張ったって大義名分が必要だろ?」
「なるほどね。勝ったからいいけど、場合によってはあいつだけ再戦する必要すらあったからね」
「ね。ただで許すのはあれかなーって思う訳ですよ。再戦する場合俺らは入れなきゃあいつやばいだろうし」
「一人寂しく別の街で練習か・・・それも面白いな」
「誰も残ってあげないとか・・・薄情者だな」
「白狐は?」
「残る訳無いじゃん。灰虎は?」
「残る訳無いじゃん」
「「ですよねー」」
二人で笑い合う。
仲が良くて一緒にいることが多いとはいえ、煽れる時にはきっちり煽り合うのが俺らだ。
どれくらいまでなら許されるとかはきちんと把握してるからな、ガチの喧嘩になるのは少ない。
「さて、そろそろ俺の奥の手・・・必殺技を披露しようかな?」
「おっとー?地味に気になってたんだよね。はよはよ」
「急かすなよ・・・うん、問題なし。【尻尾分身】」
俺はMP残量をチラっと確認した後に魔法を唱える。
俺の白く、美しい尻尾が輝き、それぞれが光となって離れていく。
そして、尻尾が1本しかない俺が9人現れる。
「分身系か・・・しかも態々尻尾を減らす演出までしてるし、それ絶対無駄な消費になってるよね?」
「「「「「「「「「うん」」」」」」」」」
「うるっさ・・・設定教えてー」
「尻尾減らして分身作成、HPMP完全共有でAIは俺の性格をベースに作成」
「完全共有って大丈夫なの?あれって確かデメリット扱いになってなかった?」
「分身なのに本体にもダメージ入るとかデメリットだね。まぁ、今回はメリットになるんだけどな!」
9人の俺でドヤ顔をする。
これ絶対にうざいだろうな・・・だが、それがいい。
煽り性能高い技とか最高だ。
「メリット?普通に的が増えるだけじゃないの?」
「職業的に的が増えるってのは否定出来ないね。MPは・・・まだ足りないか。ポーション飲まなきゃ」
「んん?まだなんか魔法使うの?」
「ぷはぁ・・・このMPポーションの味ぶどうジュースなんだよな・・・絶対色だけで決めただろ。んで、これが答えになるのかな?【もふもふ】」
MPポーションと言う名のぶどうジュースを飲み終え、新たに魔法を発動する。
俺の・・・正確に言えば本体の尻尾がやや発行する。
ピカッーって感じではなく、ふわぁって感じのぼんやりとした光だ。
「これで尻尾をもふもふしている人はHPとMPが回復する。発動時間は誰かがもふもふしている間ずっとだ。だから、俺が分身して俺をもふもふしている限り永久にHPとMPは無限!さいっきょ」
「マジか!最強じゃんそれ」
「だろ?本体である俺が一切動けないことと攻撃が出来ないことを除けば最強だろ?」
「意味なくね?雑魚じゃん」
「HPとMPタンクなのと本体以外の分身が固定砲台になる」
「お前遊撃だったよね?完全に役割間違えてるじゃん」
「最初はもっと凄いことになると思ってた。実際はAIがそこまで優秀じゃないから出来ることが少ない」
「優秀にすると?」
「消費がががががが」
「数を減らして尻尾の演出をやめろ」
「俺らしくないから却下。お前だって火力落としてMP温存しろって言われたら拒否するだろ?」
「当たり前じゃん。俺から火力を抜いたら何が残ると思ってるの?何も残らないよ?」
「自分で言うなよ・・・俺も人の事言えないけどな」
「「あっはっはっはっ」」
自虐に近い発言をしつつも笑い合う。
灰虎も火力に関すること以外はまともだからな、ある意味一番常識人だ。
「それにしてもさ・・・9人中4人が尻尾をもふってるのは凄いな」
「圧巻だろ?全部同じ顔ってのもこう・・・キモイだろ?」
「うん」
「否定して?」
「無理。バカバカバカ、同じ顔でこっち見んじゃねぇよ怖いだろ」
「あっはっはっ、でもこれさ、リアルの自分の顔じゃないからまだ耐えれるけど結構きついんだよね」
「だろうな。そこまで自分の顔に自信持てる奴とか少ないし」
「ねー。狐のお面を作って被る予定なんだよ」
「それならまだ・・・それはそれで怖いな」
白い尻尾を生やし、同じお面を付けた9人。
うん、ちょっとしたホラーだな。
「本体である俺は魔法もスキルも攻撃も防御も移動も出来ないからさ、仕留め損ねるのだけはやめろよ?」
「ふっ、安心しな。俺の辞書に火力不足って言葉は無い」
「かーくぅいー。余った1人がお前にMP譲渡するからよろしく」
「同じ顔だからどれか分かり辛いな。回復速度は間に合う?」
「回復条件が結構厳しいから回復量はやばいよ?しかも通常の4倍で回復してるし」
「あー・・・もふってる間だけ回復か。確かに足止めて特定の行動をさせるってのはバカみたいにでかいデメリットだな。それなら・・・譲渡の速度は?」
「一瞬で全部送るやつにした」
「おー有能」
「だろー?今こっちに向かって走ってるどこかのリーダーとは大違いだ」
「あいつも一緒にふっ飛ばしたら怒られるかな?」
「いいんじゃない?避けろって言えば避けられなかったあいつの責任になるだろ」
「あーでもトレインしてくれる人がいなくなるのもあれだしやめるか」
「確かにな。余ってるとは言え危険に晒したくない」
「共有してるから?」
「うん。本体は安全な場所にいるのに唐突に死ぬとか怖い」
「それ確かに怖いな・・・っと、んじゃ、いきますか!」
「頑張ってー」
のんびりとしゃべっていたけど、虹鳥が敵を何匹か連れて戻ってくる。
あれは・・・オークか?
確かレベル25で、パワーが付いてた気がする。
鑑定使いたいけど今使えないからな・・・ちょっと失敗したな。
「あれって格上?」
「鑑定出来ぬ。掲示板では25って書いてあったと記憶してまする」
「ぐぬぬって顔してるね・・・なんで分身まで同じ顔するんだようぜぇ!」
「うぜぇはないd「うわっ!何かいっぱいいるって思ったけど全部同じ顔だ。きめぇ!」・・・灰虎、あいつも一緒に殺せ!遠慮すんな、俺が許す!」
「待て待て待て、落ち着けって!誰だってこの状況は驚くだろ」
「気持ちは分かるけど言葉は飲み込めよ」
「溢れ出るこの思いを塞き止められなかった・・・すまん」
「許さん!とは言ってもこの魔法のデメリットで俺動けないんだけどね?」
「まーた変なデメリット付けてるな・・・で、灰虎はもう終わらせたのか」
「ん?うん。範囲魔法でドカンってね。それよりも早く次連れてきてよ。まだ3匹だよ?100匹倒すまで終わらないからね?分かってる?」
虹鳥とふざけてる間に灰虎が敵を倒していた。
爆音がしなかったからまだ詠唱中かと思ったけど、あたり一面凍ってる。
広範囲を一瞬で凍らせて敵を倒すとか発動するだけでも大変だろ・・・。
俺がMPタンクになってなければ発動するのを止めるレベルだ。
どうでもいいけどそのご満悦顔はやめろ、キモイ。
「あと97匹か・・・これで能力が手に入るといいね」
「ねー。こう・・・最強の火力で有名プレイヤーになりたい」
「俺と一緒にいるだけである程度有名になれるよ?」
「それはちょっと・・・」
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