第10話 栄華の暗躍と刹那の幸せ
「え、栄富学園の授業難しすぎじゃないですか?」
「そうか? 俺はそう感じたことは無いんだけど」
「それは春斗さんが優秀だからですよ。私にはまったく理解が出来ませんでした」
「なら、家に帰ったら今日の授業範囲の復習でもするか? 教えられる範囲で教えるぞ」
一限目の数学が終わった段階で刹那の頭はパンクしているようでぷしゅ~といいながら机に突っ伏してぐったりしていた。
なんだか小動物みたいで可愛い。
「良いんですか? ご迷惑になったりしないですか?」
「迷惑な事なら提案なんかしないって。それに、刹那に教えれると俺の復習にもなるから一緒に復習しようぜ」
「じゃ、じゃあお願いします! でも、私ばっかり助けられてはなんなので私にできる範囲で春斗さんのお願いを聞きたいのですが何かありますか?」
「じゃあ、今日の夕飯をハンバーグにしてくれないか? 最近全く食べてなかったんだよ」
ハンバーグは好物だし、刹那の料理の腕で作ってもらえたら物凄く美味しいのではないだろうか? と言う考えの元提案してみた。
個人的には好きでやっていることだから見返りは必要してないんだけど、そう言っても刹那は納得しないだろうからこの提案をしてみた。
「そんなことでよろしければ。今日の放課後一緒に食材を買いに行きましょう」
「わかった。刹那の作る料理は凄くおいしいから楽しみだな」
こうして今日に献立が決まったわけだけど、そんな俺たちを紅葉たちがニヤニヤしながら見つめてきていた。
「お熱いですな~壮太さん」
「ですね~紅葉さん。会話がまるで新婚さんではありませんか」
「し、新婚!?」
「おい、あんまり刹那を揶揄うなよ。てか、新婚ではないしな」
全く、新婚だなんてやめて欲しい。
結構恥ずかしいし、クラスの人からの視線もヤバい。
「そ、そうですよ! 私達まだ知り合って一週間しか経ってないんですよ?」
「にしてはかなり仲良く見えるけどね」
「そうだそうだ~」
「いい加減にしろって」
和気あいあいと三人と会話をして、休み時間を過ごす。
すぐに次の授業が始まって、また終わっていく。
そんなサイクルを繰り返すだけの日常だが、今日は帰ったら刹那がハンバーグを作ってくれる。
それを楽しみに今日の授業を乗り越えることにしよう。
◇
「なるほどね。あの男は春斗って名前なのね。通ってる学校は栄富学園っと。なるほどね」
あれから数日をかけて刹那と一緒に居た男について調べた。
本当に名家の出身でかなり優秀らしい。
名前を見たことがあるなと思ったら全国統一高校生テストで一位をとっていた奴だ。
「本気で優秀じゃない。しかも、名家の出身なんて結婚出来れば玉の輿も良いところじゃない! あんな子には勿体ないわ」
私の方が刹那なんかよりも優秀だし、可愛い。
成績も良ければ顔も良い。
あの子に負けてる部分が私には無いんだから、絶対にアタックして刹那からあの男を奪ってやる。
「私があの男を落とせたら刹那に樹を返せばいいや」
そうしたら大好きな幼馴染が帰ってきてあの子にとってもプラスでしょ。
私って本当に天才。
「そうと決まれば、次の休みの日にでもあの男の家を調べに行こ。ふふ、これで人生安泰ね」
輝かしい未来に向けて私の期待は膨れ上がるのだった。
◇
「本当に疲れました」
「お疲れ様。少し休憩してから復習する?」
「はい。そうさせてください」
刹那は一度自分の部屋に戻って部屋着に着替えてからソファーの上でぐでぇ~っとくつろいでいる。
最初は緊張しているのかガチガチだったけど、今ではある程度リラックスできているようだった。
「刹那は本当に可愛いね」
「いきなり何なんですか? 褒めても何も出ませんよ?」
「いや、別に何かが欲しくて褒めたわけじゃないよ。純粋に思ったから言っただけで」
透き通るような青みがかった綺麗な銀髪。
大きな瞳に長いまつ毛。
可愛い系と言うよりかは美人系の顔なのに、たまに見せる表情は物凄く可愛い。
「も、もう。あなたは本当に……」
「隣失礼するね」
寝ころんでる刹那の隣に腰を下ろす。
いつものソファーなのに、隣に刹那がいるとなんだかドキドキする。
「頭撫でても良い?」
「何ですかいきなり」
「いや、綺麗な髪だからさ。撫でてみたくなって。ダメかな」
刹那の髪は言わずもがな綺麗だ。
手入れも行き届いていそうで、サラサラしているように見える。
「別にいいですけど、撫でても何も面白くないと思うんですけど」
「いやいや、そんなことは無いぞ。結構撫でてみたいと思ってるから」
許可を取れたことだし、俺はなるべく優しい手つきを心がけて刹那の頭を撫でる。
予想通りサラサラしていて撫でて気持ちいい。
できることならずっと撫でていたいくらいだ。
「春斗さんは私なんかを婚約者にして本当に良かったんですか?」
「またその話か? それは前にも言っただろ。俺は刹那のことが好きなんだよ」
「ですけど、学校には私なんかよりも素敵な女性がたくさんいました。どうしてその方ではなくて私なんですか?」
「好きだからって言うのもそうだし、初めて会った時君を幸せにしたいと心の底から思ったんだ。なんでそう思ったのかって聞かれても明確な答えがあるわけじゃない」
「本当ですか?」
「君に嘘はつかないよ。頭撫でさせてくれてありがとう」
卑屈すぎる性格はなんとか治してあげたいけど、幼少期から姉と比べられて見下されていた子だからそう簡単に自身の価値観を変えれるとは思っていない。
気長に対応しよう。
「あ……」
「どうした?」
「いえ、頭撫でられるの気持ちよかったので。またやってもらえると、その、嬉しいです」
「もちろん。いつでも撫でるよ。俺も刹那の頭撫でるの好きだし」
それだけ言って俺は一度部屋に戻って教科書類を持ってくる。
約束通り、今日の授業の復習をするためだ。
「じゃあ、今から復習をしようと思うんだがいいか?」
「はい! お願いします。今日の授業は本当に分からないところが多かったので助かります」
「大げさだよ。じゃあ、数学から始めようか」
「はい!」
その後、俺たちはみっちり二時間ほど復習して晩御飯を食べた。
刹那の作ってくれた晩御飯は凄くおいしくておかわりしてしまった。
こんなにもおいしい手料理を毎日食べれるなんて俺は本当に幸せ者だ。
この幸せを手放さないためにも、刹那が抱えている問題を全て解決しなくては。
新たにそう決意を固めるのだった。




