引き寄せ甲子園70
夏の甲子園大会2戦目、A校は2対0でリードのまま 最終回抑えの場面を迎えていた。
最終回には、弱小チーム時代を引っ張っていた元エース前田が登板した。
前田の耳元には、甲子園球場の屋外でプラカードを持ちトイレの場所を案内している、応援団長の木下や坂元部員のことを、愛子副監督から伝えられた。
それから、試合をしていて何か「変化」に気づかなかったかな?という所をマウンド上で考えてきなさい、という課題も出された。
それは彼のプレッシャーを半減させる効果となった。
前田は木下と坂元のことを粋に感じ、涙を流しながらグラウンドに向かった。
あぁ、愛子副監督が言っていた「変化」って何だろう。
副監督に女子高生の愛子が、安田監督は試合そっちのけで鉢植えのシダ植物を持ちながら、ベンチ内の選手がリラックスできる様に声がけを行っている。
このことだけでも特殊でマスコミに注目されているのに。
前田は1回で肩が壊れても構わないぐらいの全力投球で抑えきり、見事2回戦も突破した。
「前田くんはクローザーだけなら、プロで通用するかもですね」
アルプススタンドの元プロ野球投手遠山は、そう評価した。
「うむ」
だるま職人辰巳も、あえてベンチを外れて実質監督としての役割を外れている。
「愛子さん。変化って、ベンチに居る選手の明るくなった表情のことですか?」
前田は、投げ切った爽やかハツラツ表情で答えた。
「違うよ。馬鹿コノ。吹奏楽応援団がオリジナルで出場選手それぞれにヒッティングマーチをつくって応援してたろう。簡単にできることかいや?」
「はぁ、気づかなかった」
あぁ、馬鹿コノって、コノが馬鹿の後ろにつくと、なんか優しく聞こえる。




