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14、想定外です・・はい

店がある谷の入り口が国の玄関であるとするなら反対側は国の門扉だろうか。


文字通り国の門と成っている砦の外には2千もの軍勢が整列していた。


混乱が続き疲弊した他の地方とは違い 豊かで平和なこの地を狙うのはある意味自然な流れかもしれない。迷惑だな。



「砦の兵達よ聞けぇ!。俺はぁ爆炎の勇者 テツヤ である。我が魔法で焼かれたく無くば速やかに開門せよ。

真の王者を迎え入れよ。さすれば常しえの繁栄と安寧が約束されるだろう」


ずいぶんと厨二を拗らせてる演説だな。

見た目は20代だろうに。

いや召喚で若返ってアレなら日本ではもっと高年齢だったはずだ。

違反行為をしてまで勇者に成るだけはあるか。

しかし、「常しえの繁栄と安寧が約束される」とか言ってるけど、その言葉の前に「おれの」を入れ忘れてるぞ。


それは良いとして、 勇者・・まだ居たんだな。

そう言えば拠点の城や貴族は壊滅させたけど奴らの生死はおざなりだった。

1匹残ってるなら30匹は居るかもしれない。


それにしても テツヤ?!あの野田哲夫のクソガキと一つ字違いか。

危なく石を投げて瞬殺してしまうところだった。



「うはーっ。凄い景色。でも少し恐いね」


「だから母様は残って留守番すべきです」


「シリア、仲間外れは悲しいよ。

私は他の人に汚れ役をさせて自分だけはキレイ事を言って手を汚さないラノベの主人公が大っ嫌いだったのよ。だから、もし自分が異世界に行けたら たとえ人殺しでも仲間に擦り付けたりしないと誓ってたの。

あの侵略者、殺すんでしょ。家族が手を汚すなら私もその現実から逃げたりしないわ」


凄い決意で勇ましい事を言っているがアイの声は震えている。

ただし、今の言葉が嘘なのでは無く、今オレ達が立っている場所が恐くて震えているのだ。


これから戦が始まろうとしている場所からは百メートルほど高い切り立った崖の中腹に三人で立っている。



オレとシリアがこの地に定住を考えていた時に色々な調査を行った。

その中でも特に安全面では妥協しなかった。


土地に入り込む裏道の有無から調べ上げ、もしも侵略を受けた場合のシミュレーションを徹底的に行った。

結果として侵略するなら外海を越えるか 空を越えるか、あるいは谷を貫くしか方法が無いと分かる。

外海を越えるのは危険すぎて論外。

空から軍隊を侵入させられるほどの相手など居ないだろう。

もしも、万が一そんな能力を持つ者が軍隊で攻めて来るなら逃げた方が良い。


結論として谷の入り口さえ守れば ほぼ安全。


その上で敵を撃退する方法をシリアと検討した結果、外側の崖の中ほどに迎撃用の足場を作った。

瞬時にこの場に来る為に手持ち少ない常設できる転移の魔法陣を据え付けて有事に備えていた。


良くも悪くも、今回はその苦労が無駄に成らなかった。



「でも、以外だよね。タイジ君ってのんびり、ゆったりと長閑な生活を望んでいたから戦争には参加しないと思ってた」


「んー・・まぁ、基本的にはそうなんだけどね。

アイはオレが頻繁に海外出張させられてたの知ってるよな」


「知ってるよ。タダで旅行できて良いなーって」


「ヤッパリ、外から見ればそうなんだよな。

ところがだ、そんな安全な国の美味しい商談は上の連中が独占するから下っ端には回ってこない。

オレが行かされてた国なんて紛争地帯とか危険地帯とかのヤバイ国ばっかだった」


「・・そんな国によく渡航許可が下りたね」


「ほんとだよ。余計な所だけ優秀な会社だった」


海外との交易が無ければ日本経済は成り立たない。

当然、商談するのは他国の人間が相手だ。

そんな取引を成立させる為には時として危険な場所へも赴く事が必要に成る。勇気ある企業戦士に感謝。



「だから・・知ってるんだ。テレビには映らない本当の戦争の悲惨な姿をね。不本意でも戦うよ」


特に他国の街を占領した後なんて悲惨なものだ。

明日死ぬかも知れない兵士にモラルという言葉は無くなる。

負けた側の人間なんて野良犬以下の存在でしかなくなるからだ。


兵士は気が向けば人々が見ている路上だろうと人を殺すし、平気で少女を犯す。

彼らは勝者であり、それを罰する者などいない。


女性が怒り狂いそうな話だがそれが戦争の現実の姿だ。


報道ではそんな姿は絶対に写さないが世界中の戦争の裏にはそんな現実が有ると思ったほうがいい。




「唸れ黎炎、轟け爆炎、ファイィアーバズーーカァァ」


ドドーーン☆


勇者テツヤは軍の先頭に立ち、魔法で直径1メートルほどの火の玉を砦の門にめがけて打ち出した。

鳥肌が立つほど恥ずかしい掛け声が大きかった割りに着弾した門には殆ど被害が無い。

派手なスキルを貰ったは良いが、業者の支援や聖女の魔法を当てにして ろくにレベル上げをしてなかったのだろう。


「恐ろしく恥ずかしいわね。あれって詠唱なのかしら」


「母様、あれはいわゆるカッコツケです。言葉による魔力の流れは一切有りませんでした」


「それに、ショボイわ・・普通あれだけ大きな火球ならもう少し威力が有りそうなんだけど・・」


「砦の表面に魔力によるコーティングがなされています。あれを破るには今の10倍以上の火力が必要です」


シリアからの解説が淀み無いな。

魔力のコーティングなんて初めて知ったよ。


「はーい、シリア先生。どうして結界とかシールドの魔法じゃないんですか?」


「えっと・・空間に独立した状態で魔力を維持するには膨大な魔力量が必要です。一般の魔法使いでは不可能と推測します」


「コストを削減して長期の篭城も可能にしてるんだろうな。派手な魔法を打ち込む勇者は直ぐに疲れ果てるだろうから役に立たなくなるぞ」


「けっこう頭脳戦・・いや、勇者がバカなだけだよね」


予想通り、魔法を二回撃っただけで勇者は後ろに下がり、盾を構えた歩兵が前進を始めた。

その後ろからは投石器や破城槌らしき物が運ばれてくる。結局レトロな攻城戦になった。

あと少しで両軍から激しい矢の応酬が始まるだろう。


この時を待っていた。


オレはストレージから一本の矢を取り出す。

この高さから矢を撃てば風や重力によるロスが殆ど無くなる。むしろ加速して威力が増すだろう。

そして何より大事なのは、これで勇者を殺しても特別な攻撃とは気が付かないことだ。


矢をダーツのように構えて勇者に狙いを付ける。

自分だけは安全だと思っている勇者は遠目にも分かりやすいほど目立つ姿なので狙いやすい。


バカみたいに高いレベルによる筋力と もろもろの補正によって打ち出された矢は眼下を蠢くアリのように小さな勇者の一点に吸い込まれていく。


敵の本陣であろう集団が慌てふためいている。

無事に勇者テツヤをゲームオーバーさせたらしい。



「シリア、打ち合わせ通り最後の仕上げだ」


「うふふ。承りましたわ。葬儀を執り行うなんて久しぶりです♡」


「えっ・・、シリアちゃん、どうしたの」


アイは あの嬉しそうなシリアの姿は見たこと無かったな。


シリアは人間に成って弱体化したけど以前に持っていたスキルは今も持っている。

魔王を瞬殺するほどの火力は無いし、死体が無ければスキルが発動しなくなる下方修正がされている。


「折角ですから私もノリノリでいきますね。気高き虚空の王者よ、穢れし地上の魂を清浄の地へと運ばん」


「女の子がやると少しは雰囲気出てるかな。でも結果が見たいから早くしてくれ」


「もぅ、せっかち。では、『鳥葬』・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アレッ?」


「何も起きないね」


シリアが手を軽やかに振ってスキルを発動させた。

いつもなら直ぐに結果が出るのに反応が無い。


少し待ったが戦場には何の変化も無かった。

特殊すぎるスキルだし、発動しなかったのかも知れない。

鳥葬とは人の死体を鳥に食べさせて自然に帰す葬儀だ。



「私、ダメな子になってしまいました・・」


「まぁ良いさ。敵の総大将は死んだかr・・・・!。

ふせろ!!」



キュッギャャアァァァァァァァァァ



突然、鼓膜がおかしくなるほどの大音声。

オレはアイとシリアを押し倒し、上から押し寄せる暴風と石礫から2人を守った。

同時に視界は竜巻の中に入ったかのように荒れ狂う。


崖をくり貫いて作った足場は洞窟のような作りにに成っていたから無事ですんだ。

吹き荒れる風圧によって巨大な存在が何体も通過した事が分かる。

程なく、地上から多くの悲鳴が聞こえてきた。


頭上を見上げて安全を確認してから恐る恐る三人で下を見下ろす。



「でか・・」


「あれは山の上に住んでいる魔物の鳥?のようです。一応 鳥に類するのでスキルに呼ばれて来たのでしょう」

テヘペロッ


ハトが豆を啄ばんでいるかのように人が食べられている。

くちばしだけでも人より大きい。

体の大きさは大型のトレーラーほどだろうか?。

そんな巨体の鳥?が10羽ほどで群がっている。

この世界だから鳥も大きいとは思ったけど、これほどとは」


「鳥葬と言うより鳥地獄だな・・これ」


「2人共、これをねらってスキル使ったの?」


「いや、鳥の大きさは想定して無かった」


「責任逃れの言い訳はしなくて良いけど、この鳥たち殺さないと人の味覚えたら街に襲って来るよ」


それは確かにまずい。

一番被害が出るのは山に囲まれたリスティルティクス王国になる。

上からこいつ等が襲ってきたら安心して暮らせなくなる。


「母様、大丈夫みたいだよ。ほら、あれ」


確かに良く見ると鳥達が食べているのはウマだけのようだ。

人も襲われているが直ぐに口から吐き出している。

人間は彼らにとってゲロマズな生き物なのだろう。


「少し焦ったけど、これで狙い通りだな」


「何か嘘くさいなぁ。狙いって何?」


「だから、誤算だったのは鳥の大きさだけだよ。

最初から敵に鳥を嗾ける計画だった」


この説明では納得しないのか、アイはジト目で見ている。


「想像してみな、敵が来るたびに鳥に襲われたらどう思う?」


「ここを攻めると鳥に襲われる?」


「正解。この国を狙っている勢力は多いそうだ。普通に戦っても勝てるだろうけど、そうなると敵は共闘して大きな勢力で攻めて来るようになるかも知れない。でも、来るたびに恐ろしい鳥が襲ってきたら誰も再戦しようとは思わないだろうよ」


何度も戦争に成ればその度にお金がかかり、何より落ち着いてダラダラ出来ない。それに、せっかく仲良くなった知り合いがバカバカしい戦いでゲームオーバーしたらつまらない。


敵が来ないのが一番だ。


ただし、脳筋のバカな勇者なら来るかもな・・。







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