↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

13、見送りはほどほどに

同じ地球ではあるがチャンネルが違う為、前世?の日本が存在する地球とは色々と違う今の世界。


生態系においても魔物が存在し、普通の生物でさえ巨大で獰猛なものが多く人間にだけ都合よくは出来ていない。

他の生物の命を奪って肉を得る為にはこちらも命がけで挑まなくてはならない場合が殆どである。


そして、今現在オレの目の前にそびえ立つコレもそんな似て非なるものの一つだ。


「ほえーっ、すごいね。コレ」


「確かにこんなものを見れば異世界だと思い知るよ」


巨木のようにそびえ立っているのは竹である。

フレバンブロアと呼ばれているこの巨大な竹はリスティルティクス王国自慢の内海と外海とを繋ぐ幅50メートルほどの水路に竹林を形成している。


そう、海の中に群生している植物なのである。

いまだに日本での常識を消せないオレやアイが驚くのも無理は無いだろう。


その立ち並ぶ竹を利用して対岸まで橋が作られているのも面白い。

馬車が通れる広さのものや、人だけが渡る為のクモの巣のように細かく張り巡らせた橋などが有る。

この無駄に入り組んで作られている橋は大切な仕事の足場でもある、とのこと。


「あそこから顔を出しているのが今年の新芽だ。今年は多いから気合を入れて間引いてもらうぞ」


「「「「おおーーっ」」」」


世話になっている漁師の親方がはっぱをかけると屈強な若衆が盛り上がる。



内海を生活の基盤としている各漁師組合は毎年交代で竹の新芽を伐採する作業を行っているそうだ。

海水の流れを良くしないと魚の流入も減り 漁獲高に大きな影響が出るとのこと。


平均して3メートルほどしか水深の無い内海は小魚の楽園でもある。

竹林によって巨大な魚が入れないからだ。


入って来た幼魚は有る程度の大きさに成るとエサを求めて外海に旅立つ。しかし竹が密集してしまうと出る事ができずに居残ってしまう。居残りは大量のエサを必要とするので魚が激減して漁師にとって死活問題となる。

駆除しようにも、先日のカニのように居残るものは巨大であり大変な労力を必要とする。


そのような理由から竹の間引きが必要とされ、今年は我が家の近くの港町カフスレディアの組合が担当である。


漁師の親方に「面白いものが見れる」と誘われ、今日は家族3人でそんな風物詩を見学に来ていた。


男達は旗竿のように長い棒の先に大きな刃物が取り付けられた専用の道具で上から若竹の横をどつく。

何度かどつくと刈り取られた若い竹がプカーッと浮き上がってきた。見た目は薹が立った竹の子みたいだ。



「面白いだろ嬢ちゃん。あれはな大きな奴の横から枝みたいに出て来て根をのばして海底に落ち着くと独立する。だから今の内に横に伸びた部分を狙うと効率が良いんだ」


「アレって食べられないの?」


「ははは、面白れぇ事言うなぁ。

残念だがありゃあ食べるどころか何の使い道もねぇから外海に流して処分するしか無いのさ」


外海に流す、つまり捨てるだけなのか・・。


「木材にもならないのかい?」


「さすがの若旦那でもアレは無理だぜ。硬いのは中心の細い所だけで後はブヨブヨのヘナヘナだしな。

乾燥させて薪にする前に腐っちまうから使いようがねぇぞ」


そうこう話をしている間にもプカプカと浮かび上がる竹の子?は相当な数になる。ふむ・・


「親方。手間をかけて悪いんだけど、アレ何本かもらえるかな?」


「あんなの食べたら死ぬぞ」


「いや、食べないって」


「ははは、まぁなんだ、若旦那の収納魔法ならあの程度は入るんだろ?。もし使えなかったら森にでも放置しとけば消化されるだろうし試してみる事だな」


あぁ・・親方は気が付いているか。

使えない物が利用出来るなら仕入れタダの商品になる。

新商品開発の基本の一つだな。



「おい、お前等。その浮いてる奴を集めて来い。

若旦那が酒をおごってくれるぞ」


「うおおっ。まじか」


はは、これで利用できなかったら大赤字だ。




「ところで、若旦那のとこにも例の勅令が来たか?。キナ臭く成って来やがったもんだぜ」


「あぁ・・民間兵として召集が有るかも知れない話だろ。来たよ」


「で、どうする?」


「どうもこうも、勅令を持ってきた係官がオレの姿を見たとたん苦笑いして『戦えない者は軍事支援金を徴収する事となる』ってあっさり態度を変えた」


「ほほぅ、そんな制度が有ったのかい」


「こんな細腕だし、戦う前に犬死するからね。

その代わり けっこう痛い金額を徴収されたけど」


建国してそろそろ一月。予想通り この国に攻め込みそうな動きを見せる軍閥が複数確認されたらしい。

騎士団だけでは不安なのか、民間から有志?の者達が民兵として集められている。

その矛先は国の財産とも言える漁師達にも向けられていた。


「心配はしてないよ。親方やみんなが敵に銛を投げつければ直ぐに戦争なんて終わるだろうからね」


「嬉しい事を言うじゃねえか。だが、魚を相手にするのとは違うからなぁ」


親方はそう言うがあの攻撃は下手な盾や鎧は貫通するだろう。


それほど心配していないのも本当だ。

谷には堅牢な要塞が二重にもうけられている。

よほど無茶をしなければ勝利は揺るがないだろう。


しかし、勝てば良いというものではない。



漁師の若衆が喜々として集めてきた竹の子をオレが小船に乗って次々インベトリーに放り込む。

「これは面白い素材だ」と何となく思う。

使えなくても良い暇つぶしには成るだろう。

この地の素材で何か出来ないか考えるのは意外と楽しい。


その晩も例の如く漁師達の宴会に酒を持っていく。

そろそろ普通の食事に慣れたのでアイも参加した。


勿論シリアも来るが、彼女が参加すると若い男衆が落ち着かなくなるから面倒だ。

アイは同じ年齢に見える漁師の子供達から友達認定されていたが複雑な心境だろう。


普通の平和な一時に幸せを感じる。




翌朝、盛大に鐘が打ち鳴らされ敵の襲来を告げた。


国の玄関とも言える谷『アガルティアの通り道』の手前に建つオレ達の店。

その前を参戦する為に国中から集まった男たちが通り過ぎていく。

支給されたのであろう皮で作られた簡素な胸当てと木製の盾を装備し、武器も殆どが支給品の槍という姿だ。

中には自前の弓を持つ者も居る。猟師なのだろう。


オレは1人で勇敢な彼らを見送る。

どの家も女子供は家の中に隠れて出てこない。

危険回避なのだろう。

戦争で負ければそんなもの何の意味も成さないが気持ちの問題なのだ。



「おう、タイジ。お前さんは行かねぇのか・・って、まぁ無理だな。直ぐに死にそうだ」


「フリアドスさん?!。参加するのか、職人なのに」


「あたりめぇよ。この筋肉を見な、騎士の1人や2人ぶっとばしてやるぜ」


隣に工房が有る皮革加工職人のフリアドスも参戦するようだ。


強がって威勢の良い事を言っているが生粋の職人であり、本心では戦いなどしたくないだろう。

なのに参戦する理由は一つ。

年頃の娘を守る為に死をも覚悟した父親なのだ。



「タイジ、最後の頼みだ「断る!」・・ぬぁ」


どうせ「俺が死んだら娘のマナリィをたのむ」とか言って言質をとるつもりだろう。バレバレだ。


「てめぇ、最後まで言わせやがれ」


「必要無い。あんたは絶対に生きて戻る。あの子を悲しませて良いなら別だけど」


「くそーっ、相変わらず可愛くねぇな。帰ったらおぼえてやがれ」


巨漢のゴリマッチョがブリブリ怒りながら歩いて行く。

下手な騎士なら見ただけで逃げそうだ。



さてと、見送りはほどほどにして


オレも準備しますか。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。