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おとぎ話

「あるところに、小さな村がありました。村人達は皆仲が良く、平和に暮らしていました。

 ところがある夜、何か(・・)によって一人の少女が永遠の眠りに落ちてしまいました。村人達は手の限りを尽くしましたが、とうとう目覚めることはありませんでした。

 村人達は途方に暮れていました。さらに悪いことに、僅か数日後に再び目覚めなくなった女性が出てきてしまったのです。


 それからと言うもの、一月に一人、女性が次々と永遠の眠りに就いていきました。村人達は為す(すべ)もなく、震えながら夜を過ごしていました。


 やがて誰も覚めない眠りに就かなくなりました。そうして、次第に村人達の間にあった恐怖や不安は薄れていきました。


 数年後に、再び何か(・・)がその村に迫っていました。

 ある少女がその何かに逢ってしまいました。全身に黒い服を着た何かは少女の家に侵入すると、その魔の手で少女を掴みました。ドラキュラと名乗るその何かが少女に襲い掛かろうとした時、突然目を開けていられないほど空が光り、何かは跡形も無く消えていました。


 それっきり、村では何も起こらなくなり、今まで平和が続いているそうです」


「怖いね。でも結局どうなったの?」


 一人の女性を囲むように座った子供達は、口々に感想を述べている。大半が怖がっている。その中の年長の子が質問した。


「それは分からないのよ。消えてしまったからね」

「ある村ってどこ?」


 また他の子が質問した。


「ここかもしれないし、はたまた違う村かもしれない。私も聞いた話だからよくは知らないの」


 女性は意地悪く笑っている。尋ねた子供はどこか不満げだ。


「この話、ナビリお姉さんは誰に聞いたの?」


 ナビリと呼ばれた女性は遠くを見たまま答えた。


「誰だったかしら。私が小さかった時の事だから、忘れてしまったわ」


 女性が手を二回叩いた。途端に子供達は静かになり、女性を注目する。


「今日のお話はおしまい。明日はそうね、ダンゴムシおじさんの話でもしましょうかね。みんな気を付けて帰るのよ」

「はーい」

「でないと黒い服を着た何かに襲われちゃうかもしれないからね」


 所々で悲鳴が上がった。女性は静かに微笑んだ。






***************************





 男は突然の夕陽(ゆうひ)に目を細めていた。空模様が夜から一気に夕方へと逆戻りしたのだから仕方無い。


「また知らぬ所へ飛ばされてしまったのか。それにしてもこの人だかりは……」


 呟きながら辺りを見回すと、カボチャを被っている人や、悪魔のような尻尾をつけている人など、実に様々な怪物(・・)がうじゃうじゃいた。


「我輩には此処がお似合いということか。取り合えず誰かに話を聞きたいところだが……」


 男は品定めするように注意深く人を観察する。ちょうど話終えた人を見つけた。近付きそっと声を掛ける。


「お嬢さん、ちょっとよろしいかね?」

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