第八十二話 欲望満たす忍者の武器
お久しぶりのHekutoです。
八十二話が完成しましたのでお送りいたします。どうぞお楽しみください。
『欲望満たす忍者の武器』
ここは管理神アミール・トラペットの仕事部屋、少し前までは足の踏み場もないほど資料で溢れていた部屋だったが、今はだいぶマシになっている。
「うぅ、やっと近代分の資料まとめが終わりました・・・」
しかしそれはマシであり、元の広く綺麗な部屋に戻ったとは言い難く、今もまるで見たくないもののように部屋の隅に追いやられた古めかしい資料の山や、机の周りには整理されていない資料が詰まれていて、その部屋の現状は『若干足の踏み場がある』程度である。
「そろそろユウヒさんとも連絡をとりましょう。・・・いえ! とります!」
相当疲れているのか、机の上に崩れていたアミールは最後の力を振り絞るように起き上がると、誰に宣言しているのか気合の籠められた言葉と共に立ち上がる。
「先ずは通信機の電源コードをさしてっと」
するとそのまま、何時ぞや抜き去られ無造作に転がる通信機の電源プラグを、壁のコンセントに差し込むアミール、その表情が何かを思い出して引き攣っているのは仕様である。
「・・・点きました! って何ですかこの履歴の量は!?」
その後通信機本体の操作をしスイッチを入れて数十秒、久しぶりに立ち上がった通信機の着信履歴を見て素っ頓狂な声を上げるアミールの目には、通信機画面上に並んだ4ケタにおよぶ着信履歴の列が映っていた。
言わずもがな、すべて某先輩からである。
「先輩、あとで連絡したほうがいいでしょうか・・・いやでも先ずはユウヒさんに連絡をですね」
そんな履歴を見て苦笑い一つで済ませた後、ユウヒへの連絡を優先する辺り、流石恋する乙女と言うものであろうか。
「・・・まってください。そうです私ずっと仕事してたんですよね」
しかしその恋する乙女にはもう一つ気にするものがあった。それは通信機の画面に薄らと映り込む自らの顔、そう顔である。それは唯の人に見せる顔では無く、今から好意を寄せる人に魅せる顔である。天然なアミールとは言え、乙女が気にしないわけが無い。
「こ、こんな姿ユウヒさんにみせられません!? お、お風呂! それから、少し化粧もしましょう」
しかも今回の場合は、とてもじゃないが好きな人以前に普通でも見せられる顔では無い、永遠に続くように感じる量の仕事を休むことなく続けた結果、目の下には隈が浮かび、肌は荒れ、髪は乱れ、唇は薄く不健康そうな色になっている。
といってもそれはアミール自身がそう感じるだけで、たぶんこの状態でユウヒに通信したからと、千年の恋も冷める衝撃は与えはしないだろう。むしろユウヒの事だ、病気か何かと勘違いして心配するだろうし、3モブ忍者が見たとしても、
『色白病弱美女キタコレ!!』と騒ぎ出す程度だろう。
「ワークシステムロック! バスルームフルクリーンで起動! 着替えもお願いしますってあわわ!?」
まぁそんなアホ3人は別としても、アミールにとっては重要な事であり、慌てて入浴の準備を始める。
この仕事部屋、と言うかアミールの私室はかなりハイスペックな作りになっており、まるで現代日本人が夢見る未来の家の様に、言葉一つで多数の機能が止まりまたは動きだす。一つ声を上げれば御風呂の湯船にはお湯が湧き出し始め、適度な室温と湿度で使用者を迎えてくれる。
「痛いです・・・待っててください、ユウヒさん」
そんな使用者は慌てて足場の少ない部屋を移動した為、資料の一つである大きな緑色の石版に小指をぶつけ、準備されたばかりの着替えとタオルの上に倒れ込む。アミールはその痛さと妙な悲しさで、思い人の名前を呟きながら涙を流すのであった。
神様と言えど、予期せぬ小指の痛打には勝てないようである。
一方その頃、思われ人のユウヒはと言うと・・・。
「ふ・・・清々しいあさ、ではないな。御日様がもうあんなところに居るよ」
宿の窓を開け放ち清々しそうな表情で、真上に上った御日様を見上げていた。どうやら徹夜で作業を続けそのまま寝落ちした結果、目が覚めたのはお昼というパターンに相成ったようである。
「しっかし、三人とも出かけるなら一声かけてくれればいいものを」
そんなユウヒが振り返る宿の部屋には、合成魔法で作ったと思われる物が綺麗に整理されているが、昨日まで居た三人の騒がしい少女達の姿は見当たらなかった。
「でもなんでこの書置き字がふるえてんだろ? やっぱ体が小さいからか?」
どうやらユウヒが寝ている間に、置手紙を残してどこかへ行ってしまった様である。
『 ユウヒへ
姉さんに呼ばれたので逝ってきます。もしまた出会うことが出来たら、その時は飴玉が欲しいです。美味しい果物でも良いです。できれば頭も撫でてください。
水の小精霊三人より 哀を籠めて』
「妙に誤字が多いが、何で呼ばれたんだろな?」
そんなどこか、いや確実に不穏な空気を感じる机の上の手紙を呼んだユウヒは、首を傾げどこかへ行ってしまった騒がしい小精霊の事を考えるのであった。
「じー」
「じー」
「じー」
その時ユウヒの背後、窓枠からユウヒを見詰める三対の瞳・・・その瞳を持つ者はあの三人の小精霊、
「・・・え? 何つっこみ待ちなの?」
ではなく、何故かびくびくと不安そうな視線を向ける三モブ忍者達であった。
「おお、勇者ユウヒに戻っているぞ」
「普通のユウヒ殿でござる」
「スニールも居ないな!」
どうやら昨日のユウヒ暴走中から逃げ帰った後、今の今まで近づけなかったようである。
「ん? 基本呼ばないと出てこないけど?」
そんな事があったなど知らないユウヒは、探知の魔法で少し前からじりじりと近づいて来ていた三人の行動と言動に、首を傾げるのであった。
「あいや何でもないぞ!? そう例の物を貰いにだな」
「そ、そうでござる! 例のぶ・・・それだと犯罪臭がするでござる」
「触媒もだけど武器はもっと気になります! ギブミーメインウェポン!」
「ふん? まぁ全部出来てるけどね・・・」
スニールコンパニオンの事に触れると何故か慌て出す三人に、どこか釈然としない表情を浮かべるユウヒ、しかし深く考える気も無いのかすぐに表情を戻すと、綺麗に整理して分かりやす様に置かれた物を取りに、部屋の奥へと入って行く。
「先ずこれが使い捨ての触媒で、薄いけど耐水性とかもあるから、相当乱暴に使わない限り使用以外で破損することはない、と思うよ?」
最初に取り出したのは護符型触媒の束とそれを入れておける革製ポーチであった。
「おお・・・水と風と火だな! くくく、これで我野望も叶う! ふはははは!」
触媒に素早く反応したジライダは震える手で触媒を受け取ると、怪しい炎を灯らせた目で高笑いを始める。そのまま妄想に突入したのか、怪しい踊りまで踊り始める。
「んでこっちは使い捨てじゃない触媒効果のある苦無だね、これはちょっとテストしてみないと使い勝手分からないけど便利だと思うよ?」
次に取り出した物は氷属性の苦無を作った時から考えていたらしい触媒にもなる苦無であった。
「なるほど属性武器みたいなものでござるな? とりあえずテストはヒゾウ担当でござる」
「ちょwwいつから俺担当になったんだよwww」
「あ? ウェルダンに焼かれた時からだろ?」
そんなエコロジーな触媒苦無は、ゴエンモの手によりヒゾウに渡される。当然これには自爆経験者のヒゾウが拒否反応を示すものの、即座にジライダの「は? 何言ってんだ?」と言った感じの真顔で押し付けられる。
「む、先に渡した触媒は失敗だったか?」
その三人のやり取りに、少しテンションの下がったユウヒが不安そうに尋ねる。ユウヒ自身、少し不安があったのも事実なのである。
「失敗ではないでござるが、予想より火力が出たらしいでござる」
「想定だと3メートルくらいの火炎旋風のはずが、高層ビルみたいなのが出たんですけど」
「地面も一部溶けてガラス質になってたな」
ユウヒの問い掛けに何があったのか説明する三人、その説明から解る通り廃炭鉱でなければ結構な被害になっていたところである。ついでに、震える手で触媒苦無を握るヒゾウの心には、すでに結構なダメージを負わせたようだ。
「魔力の籠めすぎかな? 何分勝手がわかんないんだよね、今渡したのは慣れて来たから少し魔力の量も少なく出来たと思うけど気を付けて使ってね?」
「了解でござる」
実際に魔力の籠めすぎなのだが、新しく作った護符は一札入魂の試作品と違い、一度に何百枚もの同時合成だった為、色々と分散された結果丁度いい塩梅になっていたりする。
「後は武器だね、広げるから端によってくれる?」
触媒についていくつか考えたいこともあったユウヒだが、今は先にやる事があるので頭の片隅にその研究欲求を置いておくと、布に包まれた三人御揃いの武器を取出しベッドの上に並べ始める。
「待ってました! 端と言わず天井にくっつきますよwwっうぇ」
「いや、そこまでしなくても・・・」
ユウヒ的にはそこまで広くない部屋に長物を広げるので、少しスペースを開けるだけで良かったのだが、ユウヒの言葉にテンションの上がったヒゾウは天井に張り付くと、並べられた武器を真上から眺め始める。
「ドキドキでござるなぁ」
「虫素材も使ったのか?」
「よいしょっと、使ったよ? 中々良い素材でねー暗殺とかに使えそうな感じかな」
ヒゾウと違い少し離れた位置から眺めるゴエンモとジライダ、ヒゾウほどでもないがその表情からは隠し切れない感情が漏れている。
『・・・あれ? 不安になってきたんですけど?』
しかし質問に答えたユウヒの言葉で、その顔色に蒼が含まれる。
「先ずこれがメインの刀で、ちょっと長めの忍び刀だ。刃渡りは60cmくらいかな」
そんな事など気にしない、もとい気が付いていない自称普通の生産職ユウヒは、やはり自分が作った物を紹介するのが嬉しいのか、楽しそうな表情で刀を鞘から抜き説明を始める。
「ふおぉぉぉ! 黒塗りの刃が光にかざすと緑色の輝きを!?」
「うぉーすげー! 刀だ! KA・TA・NAだ!」
「今までは両刃でござったが、やはり忍者なら片刃の直刀でござるな! して名は何と言うでござる?」
忍者達の目の前で抜き放たれた忍刀は、真っ黒な刀身を日の光で撫でられる度に深い緑色が天の川の様な波紋となり輝いている。
「・・・考えて無かったな、うーん・・・。黒刀『蠱毒』なんてどうだろうか?」
「・・・なにやらおどろおどろしいのですが?」
「明らかにただの刀に付ける名前じゃないでござる」
「むぅ黒刀と言うのは解るが・・・コドク、たしか呪いの類だったか」
そんなユウヒ渾身の作品である忍刀は、その場で名前を付けられる。【蠱毒】と、蠱毒とはその昔あったとされる呪いの名前である。
「ふふふ、説明しよう」
『・・・ゴクリ』
「この刀の刀身には鍛えた魔鉄だけじゃなく、三人が持ってきた虫素材と毒属性の魔石を混ぜてみたんだ」
そしておどろおどろしい名前を付けられた忍刀の説明が始まる。元々この【蠱毒】と言う呪いは、簡単な話大量の毒虫の中で最後まで生き残った最も強い毒をもつ虫に、対象を毒殺させると言った呪いである。
「毒魔石なんて知らないでござる」
「たぶん虫の胃袋の中にあった黒い石じゃね?」
「・・・あれって毒なの? 我、軽い気持ちでお手玉して遊んだのだが」
ならばその名前を付けられた刀は当然、毒を与える刀と言うわけである。その素材になったのは彼らが言っている様に、ジライダが妙に上手いお手玉を披露していた時に使っていた黒い石の事である。
「忍者だから効かなかったんじゃね? ついでにこの刀で切られたら魔力毒に感染するけど、体力が少しづつ減って行く仕様で即死とか致死性じゃないから」
「良かったでござる、あまり強力だと扱いに困るでござる」
このズレた4人の話を訂正しておくが、この毒はかなり特殊でまた強力である。確かに即死はせず体力が少しづつ減って行く毒で死にもしないのだが、この毒を一太刀浴びれば次第に体に力が入らなくなっていき、四肢が痺れて動かせなくなると言う嫌らしい毒である。
「威力は低いけど感染力が強いって感じかな、あと鞘の方には気配遮断の効果があるから三人にはぴったりだろ? やったね暗殺し放題だ!」
『しないよ!?』
そんな毒の刀を悪人が持てばいろんな悪用の仕方があるのだろうが、良いのか悪いのかこの三人の忍者の性根は何処まで行ってもモブであり、一般人であり、ヘタレである。この刀が三人の手にある以上、先ず悪事に使われる事は無いであろう。
「そう? 一応これがスペック表ね、んで次がねー」
その辺も見越しているのか、【すぺっくひょう】と書かれた紙を手渡すユウヒのどこか飄々とした表情からは、何を考えているのかまったく読み取ることが出来ないのであった。
黒刀『蠱毒』製作者:ユウヒ
ユウヒが同朋である三人の忍者の為に作った、刃も柄も全てが黒い若干長めの忍刀。
その性能は、ユウヒが自重しなかったため、一般に流通させるには少々危険なモノとなっている。ユウヒ特製の精錬魔鉄と、毒の魔石とケイブスキュラの深緑甲殻を混ぜた合金で作られる多層構造の刀身は、一見黒一色だが光にかざすと粒子状の甲殻と魔石が怪しく光を反射し、緑色の波紋を浮かび上がらせる。
さらに黒塗りの鞘の表面は、気配遮断の特性を持つケイブストーカーと言う魔物の皮で作られており、所有者の存在をおぼろげにする効果がある。
【すぺっくひょう】
刃渡り600㎜ 刀身重量1300g
性能:物理B- 魔法E+ 耐久力C+
特性:物理耐性 魔力の毒 気配遮断
属性:斬撃 毒 闇
「ランクとかは良く分からないが闇属性とか心擽られるな」
「厨二でござるな・・・後は光があれば最強でござる!」
「忍者が光とか似合わなすぎだろwww」
ユウヒ以上にランクと言うものに理解の無い三人は、その性能云々より【闇の属性】と言うワードに心擽られたようで、各々刀を手に取り頬を緩ませ、厨二話しに花開かせる。
「こっちはサブで精霊銀の苦無だね、魔法との相性がいいから魔法を切り払ったりできるかも?」
そこにユウヒは更なる燃料を投下する。
「そ、それはまさかミスリル銀的な!?」
「空想世界の金属でござる! ・・・そういえば異世界でござった」
「まさに光と闇で最強ですね、わかります!」
目の前に出された、白く銀色に輝く長めで細身の苦無は、まるで御伽話の中に出てくる伝説の金属のようであり、色んな意味で光を求めていた三人の目をくぎ付けにした。
「ミスリルとは違うような・・・これは魔力で変質した銀なんだよ、強度は今一つだけど色々と面白い性質があるみたいでね」
実際、精霊銀は有名なミスリル銀とは性質が違う。有名なミスリル銀は『ガラスの様に磨け黒ずまず、鋼より固く軽い』と謳われるが、対してこちらの精霊銀は魔力により変質した為、魔力との親和性、浸透性や保有性などが高く、魔力伝達効率も非常に優秀である。反面、強度はそこまで期待できず、純粋な精霊銀だけの武器は耐久性能的にもコスト的にも問題が有り、数や種類は限られている。
「ほう、流石は異世界何でもありだな」
「やはりもっとこの世界を楽しみたいでござるな・・・」
「俺、この世界で美人のエルフとにゃんにゃんするんだ・・・何とかなりませんか?」
そんな話しも、彼等らしく一つの道筋を通らず次第に脱線していき、
「あーこの世界楽しいもんな・・・アミールに、俺をこっちに連れて来てくれた女神様に直接聞いてみたらどうだ? 一応この世界を管理してる神様らしいし? むしろ無断で好き勝手やったら・・・」
そんな彼らの願いは、自らもこの世界を楽しいと感じているユウヒにとっても、十分共感できるものであった。その為、ユウヒはアミールへの相談を提案してみる、というかそれしか選択肢は無いであろう。
何故なら・・・。
『やったら?』
「強制送還じゃね?」
「むぅ・・・確かにそれは道理でござるな」
という結果になるのが落ちであるからだ。
「というか勇者ユウヒが女神様を呼び捨てなのですが・・・」
「すげー美人だと噂の女神様を・・・まさか!? 既にそんな関係に!?」
「いやいやいや!? ンな訳ないだろ!?」
しかしここでも脱線していくのが3モブクオリティ、気になる事があればとりあえず突っ込んでいくアサルトなスタイル。そんな彼らに流石のユウヒも慌てて吃りながら否定する。
「な、ならば拙者等にもまだ可能性が!」
「ぬぁ!? 貴様また抜け駆けか! お前はもう一つフラグ立ててるだろうが!」
「そうだそうだ! ここは悲惨な目に合い続けてる俺に!」
そんなユウヒの反応をみて、<ガタリ!> と立ち上がるゴエンモ、その勢いに押されてバランスを崩したジライダは華麗に体勢を立て直すとゴエンモの首に手を回し、ヒゾウはゴエンモを押し退け何故かユウヒの方へ体を乗り出す。
「話が脱線してるなぁ・・・やめた方が良いと思うんだけど」
「まさか魔王ユウヒ! 貴様一人だけ優位に立つつもりだな!」
目の前の醜い争いに苦笑いを浮かべたユウヒは、そうごちる。そんな誰に聞かせるでもない独り言もジライダは聞き逃さず、今度はユウヒに襲い掛かる。
「ちげーよ! つか誰が魔王だ! 「ぶべら!?」」
「じゃ何故でござる! 後生でござる!」
「我らにも甘いフラグを!」
しかし人外は彼等だけでは無く、常時身体強化の魔法を使っているユウヒは即座に足を振り上げると、襲い掛かってくるジライダの顔面を踏みつける。さらに左右から縋り付く忍者の頭も容赦なく叩く辺り、どっからどう見ても勇者より魔王的であった。
「はぁはぁ・・・お、俺だってそう言う事を考えんわけでもないが、実は聞いた話だとアミールってさ・・・もっと偉い神様に溺愛されてるらしいんだ」
その後数分ほどかかり、物理的に三人の忍者を落ち着かせたユウヒは、息を整えると気がかりな事についての話し始めた。
「な、なんだと?」
「本人曰く、孫と祖父祖母のような関係だとか」
「・・・あれ? 俺ってば未来視出来ちゃったかも?」
その話しはまだ途中だと言うのに、真剣に聞いていた忍者達の脳味噌には、迅速かつ的確に通じたようだ。
「そんな可愛い孫がだ、ある日突然彼氏を連れてきたらどうなる? しかも相手は俺等とは次元の違う神様的存在だぞ?」
「え? 何そのムリゲーでござる・・・」
「チェーンソーは効きませんか?」
「どこの神様だよwww」
ユウヒの説明が終わると、同時に三者三様な未来を想像してしまう。それはどれもバッドエンドな感じのエンドロールが流れているが、神様に対しての認識は些か偏りが見られるようだ。
「てかこの世界、美女率高いんだから普通にいこうよ」
項垂れる三人の姿に、ユウヒは苦笑いを浮かべるとそう諭す。実際ユウヒが言う様にこの世界の住人は比較的整った者が多く、偶に明らかに人間の美醜から懸け離れた容姿もあるが、それは種族的感覚の違いが大きな理由と思われる。
「そうだな・・・」
「現実的って大事でござる」
「異世界で現実的とかwwwで、安牌はどこですか?」
ユウヒの言葉によって落ち着きを取り戻した三人、それぞれに思う所があるようでその表情は何時もと違い少しだけ真面目である。ただ、頭の中で考えていることがその表情と合うとは思えない。
「まぁ俺は依頼されたことを完遂する事が今は一番だけどな」
そんな葛藤を懐いているのは彼等だけでは無く、ユウヒもまたこの世界で出会う女性に対して惹かれるところもある。しかしそこには価値観や世界レベルでの違いがあり、ましてや万が一にもアミールからの依頼を失敗しようものなら、色恋の話以前の問題になりかねない。
「ならば拙者等も付いて行くしかないでござる」
「そうだな我等も勇者ユウヒの手伝いをするとしよう」
「俺達は同朋だもんな!」
そんな事を心の奥底に留めているユウヒ、彼の言葉に今日一の真面目な顔をした三人は、渡された武器を背負い立ち上がると、胸を張ってそう告げる。
「・・・その心は?」
そのどこか映画のワンシーンになりそうな空気の中、ユウヒは感動したような表情を一瞬浮かべるが、不穏な気配を感じたのかすぐにキナ臭げな表情でぽつりと呟くと、彼らは同時に口を開く。
『おこぼれっておいしいですよね?』
そう、男臭い笑みでサムズアップしている彼らは知っているのだ。ユウヒの近くには王家関係で何かと美女美少女が集まる事を、そして美人女神様アミールと知り合いなら、それ以外の美しい女神様に出会える可能性がある事を・・・。
「下心がダダ漏れだなおい!?」
まるであらかじめ打ち合わせていたかのような彼らのやり取りは、ユウヒのツッコミの後大きな笑い声で締めくくられるのであった。
実に締まらないやり取りだが、これはこれで微笑ましくもあるのが不思議である。
いかがでしたでしょうか?
唯でさえ人外スペックな彼らに、強力な力が加わるとこの先どんな展開になるのか、そしてアミールとユウヒは、是非次回も読みに来てください。
それではまたここでお会いしましょう。さようならー




