第八十一話 生産者そのモノ狂いて
お久しぶりのHekutoです。
だいぶ間があいてしまいましたが、ちゃんと執筆続いていますのでどうぞお楽しみください。
『生産者そのモノ狂いて』
とある忍者達が、草木も眠る丑三つ時に野太い叫び声で、周辺に住む村人達を恐怖のどん底に陥れた明くる朝、ここはユウヒの泊まる宿の一室。
「という夢を見たでござる!」
「矢鱈冷たいお化けに縛られて毒物を食わされたんだが!」
「俺達何か憑かれてるの!? 何か見えない大明神!?」
「朝から暑苦しいなぁ・・・(それってあれか? 精神体だからカテゴリー的にはお化けと一緒か? 祟ったか?)」
そこには早朝に似つかわしくない暑苦しい3人の男共が、涙と鼻水を垂らしながらユウヒに縋り付く姿があった。ユウヒはそんな3人の姿に呆れつつも、内心彼らを祟ったかもしれない存在に嫌な汗を流すのだった。
「寝汗マックスで気持ち悪かったけど真っ直ぐ真っ直ぐ帰ってきますた!」
「拙者もでござる・・・」
「廃鉱山荒しすぎたからか? そう言えばクロモリも時間経過で呪われるダンジョンが・・・そのタイプですか!?」
どうやらあの後気を取り戻した3人は、恐怖のあまり荷物をまとめ暗い夜道を只管走ってきたようで、その姿は泥と汗と涙と鼻水でぐちゃぐちゃである。・・・正直汚い。
「少なくとも・・・何かに憑りつかれてる感じはしないから、疲れてるだけだろ? 水浴びか風呂でも行ってきたらどうだ?」
そんな3人の姿に妙な罪悪感を感じたユウヒは、苦笑いを浮かべながらも右と左両方の目で彼らを調べ、異常がない事を伝え遠まわしに汚いと伝える。なぜならユウヒが調べた彼らの状態に、【汚物】と言う悪意を感じる表記があったからである。
「疲れたと憑かれたをかけるとかぷふぶべら!?」
「流石ジライダ、おもっくそ踏み抜いたな」
「この石は何でござる? なにか触媒と似た記号が書かれてるでござる」
ユウヒに大丈夫と告げられると、安心したのかほっと胸を撫で下ろす3人。そんな気の抜けた状態だったからか、ユウヒが心配してかけた言葉がダジャレに聞こえたジライダは、容赦なく笑おうとし、容赦なく顔面に固い石をぶち込まれるのであった。
「まったく、それは試作品の熱くなる石だよ簡易風呂様に作ってみたけど、まだ使ってないんだ」
妙な所を指摘されたからか、若干頬の赤いユウヒは溜息交じり一言呟くと、今投げた石について話し始める。それはユウヒが余った材料で作った熱石と言う魔法具である。
【熱石】製作者:ユウヒ
ユウヒが廃材を使って作った人工石に、【招来】と【安定持続】の記号、それから【熱】の文字を組み合わせた熱くなる石護符である。
しかしこれもユウヒ作である為唯では済まない。石を構成する物質は様々な廃材や鉱石からなり、中には精霊銀なんかも含まれ、さらにそう言った上質な素材を使ったため、内包するユウヒの魔力は紙護符の比では無い。この護符の構成に【安定持続】が無ければ、まるで溶岩の塊の様な熱量を出し続けることになったであろう。
効果:安全定温持続 熱放出
属性:打撃 投擲 火 土
「これはテストして来いと言う事ですね、解ります」
「魔力を少し注げば起動するはずだから、あとは石鍋にも使えるかもね。止める時は少し魔力を抜けば止まるよ」
すっかりテスト役となったヒゾウは、手に丁度フィットする平たい石を手の上で弄びながら、ユウヒの説明を聞いている。
「良いでござるなぁ、それでは武器が出来るまでの間一風呂行って来るでござる」
「あ! あと魔物の素材とか良く分からない物とか持ってきたのでネタ武器も欲しいです!」
ユウヒの提案に頬を綻ばせるゴエンモと、素になりながらユウヒに新たなお願いをするジライダ。
「またいっぱい持ってきたな・・・足の踏み場もないぞ」
そんな新たな要求にわざとらしく迷惑がるユウヒは、足の踏み場が無くなったと愚痴を漏らす。
『それは最初からでは?』
「ですよねー」
しかしその状態は最初からであり、それはユウヒも分かっていたようで、いつも通りなやり取りにお互いニヤニヤする4人。やはり共通の価値観を持ち合わせる友と言う物は良いものであるようだ。
そんなやり取りがあり、3人の忍者が露天風呂製作の為に窓辺から飛び立った頃、宿の一階では・・・。
「あんた、三階のユウヒさんだけど」
「ん? また荷物か?」
この宿の主人とその奥さんが、朝の一仕事を終え休憩をとっている所の様だ。しかしその様子は少しおかしく、奥さんは少し不安げな顔で主人に話しかけている。
「ええ、黒ずくめの人達が何か運び込んでたのよ」
「ふむぅやっぱり1階に移動してもらうか、いやでも今更なぁ」
「天井が抜けなきゃいんだけど・・・」
「まぁ物壊してるわけじゃないし問題無いだろ? 抜けたらその時だ」
「うぅん・・・」
どうやら女性は大量に荷物を持ち込むユウヒと、怪しい3人の黒い男達に対して不安があるようである。現在ユウヒの泊まっている部屋は宿の最上階である3階にあり、当然その下は別の客室である。万が一大量の荷物で底が抜ければ大参事となることから、女性の不安ももっともだろう。
「大体料金以上の事をやってもらっておいて、今更追い出したら不義理にもほどがあるだろ」
「・・・そうよね、お鍋に包丁迄直してもらったし」
「そうだぞ? あんな良い冒険者滅多にいねんだからよ」
不安そうな奥さんに対して、主人の方はユウヒに好印象である。その理由は冒険者とは思えない礼儀正しさと物腰の軟さ、その上直接依頼として刃の欠けた包丁や穴の開いた鍋などを直しているのだ、しかも報酬は宿代の割引である。
最近の情勢でそんな冒険者と巡り合う事など極めて珍しく、その為宿の主人がユウヒを上客と認めても可笑しくは無い。主人の言葉で思い直したのか、女性の不安そうな表情は好意的なものへと変わって行く。丁度その時、
「そうねぇってあら? ユウヒさんおはようございます」
「おはようございます。すいません色々お騒がせして」
「いやいや、こちらこそ頼みごとをしてしまって申し訳ない」
噂をすれば影か、今まさに会話に上がっていた人物であるユウヒが降りてきたのである。今の会話を聞かれたのではと若干表情に焦りのある主人は、にこやかな顔を造ると、3モブ忍者の事で詫びを入れに来たユウヒに対応する。
この時主人は、先ほどの話題に触れてこなかったユウヒが、話しを聞いていなかったと思いほっとしていたのだが、残念ながらばっちり聞かれており、ユウヒは表情を作りながら心の中で苦笑いを浮かべるのであった。
「今日も一日部屋に居るので、あとこれお酒なんですけど。差し上げるので飲んだ感想とかもらえませんか ?」
そんな事を知るわけもない主人に、ユウヒは迷惑料と試飲を兼ねて、8リットル樽に入った試作ビールを渡す。
「ええ!? そんな小樽一個分の酒を、いいんですかい?」
「味の感想を頂ければ、あと感想は多い方がありがたいですね」
「そうですか、では午後また来ていただければそれまでに家のもんに飲ませてみますわ」
「お願いします。それでは」
ユウヒにとって何気ない好意であったとしても、この好意的過ぎる態度は、時にある感情を人の心に浮上させる。
「・・・なんだろねぇ?」
「わかんねぇなぁ・・・おい! 誰かいねぇか!」
「はい? どうしました?」
「冒険者ギルドまで行ってきて、これで人物情報提供してもらってこい」
「あんた?」
そうそれは疑惑、必要以上の善意を受け取った人間は大きく分けて2つの感情を懐くであろう。単純に良い人だと受け取る者と、何か裏があるんじゃないだろうかと懐疑的になる者。
「悪い人じゃねぇが気になってしょうがない、せめてギルドの評価だけでも分かれば変に疑う必要もないだろ?」
「まぁねぇ? でもなんだか悪い気がしてきたよ」
ここの主人はどうやら好印象は持っているものの、ユウヒと言う冒険者がいったいどんな人なのか気になって来たようである。それが不安や悪意からでは無くただの興味だろうと、ユウヒにまた一つ噂が立つのは確実である。そんな噂の原因が自分の行いのせいだと、ユウヒが気が付くことは有るのだろうか・・・。
そんな噂製造機ユウヒは、部屋まで戻り目の前の惨状を腕を組み確認すると、険しい表情で何か考え始める。
「さてと、部屋の床が抜ける前に何か手を打たないとな・・・」
そう、先ほどの話しからユウヒも部屋の床が心配になって来たのである。現代日本建築物において、室内の床が抜ける事など非常にレアなケースだが、実際にそう言う事故も起きている為、ユウヒも心配になり対策を講じるようだ。
「どうするの? 固くするの?」
会話の一部始終を、ユウヒと一緒に聞いていた一番小さな水精霊は、ユウヒの顔の高さをふわふわ飛びながら首を傾げる。
「ふむ、妄想魔法で床を強化するかな? クロモリの防御力アップ系でいいか・・・えーっと、かよわき者にあらがう力を【フォースレジスト】」
そんな小精霊の言葉に何か思いついたユウヒは、珍しく呪文を唱えながら妄想魔法を使う。これはクロモリオンラインで良く使われる防御力アップの魔法で、音声認識を使っていたこともあり自然と口に出てきた様だ。
「うわぁ・・・すごい魔力」
「ユウヒってよく干からびないよね? 実は精霊なのかな?」
そんな簡単に使って見せた魔法だが、呪文を唱えたからかそれともしっかりとイメージがされていた為か、あるいは両方か、ユウヒの予想以上に強力な魔法が発動し、使用された魔力も多かった様で小精霊もびっくりしている。
「むぅ、手加減間違えて部屋全体にかかったけど・・・まぁいいか、どした?」
『なんでもないよ』
実質、無限に等しい魔力を持っているユウヒ的にはちょっとの失敗だが、それは精霊から見ても異常なレベルである。その為、小精霊達が妙な疑惑の籠った視線を、ユウヒに注いだとしても仕方ない事なのであった。
「ねぇユウヒ? さっきのはどんな魔法なの?」
「ん? どんなねぇ・・・確か外部からかかる力を減衰させてダメージを軽減する。そんな感じだったかな」
一番大人しいが、一番知的好奇心の旺盛な小精霊がユウヒに問いかける。この魔法は外部からかかった力に反発する不可視の力を発生させ、強ければより強い反発を示す魔法である。反射するような強力な物ではないが、クロモリオンラインでは重宝される魔法だ。しかし精霊達にとっては、別の意味で重宝されるようだ。
「へぇー・・・何か変」
「ほんとだ何か変な感じ!」
「おお面白い!」
何故ならこの魔法で保護された対象に物理的接触をすると、ゴムと綿を足して割ったような、不思議な感触が返って来る。今までに感じた事の無い不思議な感触に、小精霊達は新しい玩具をもらった子供のように燥ぎだすのであった。
「鉄、鉄、魔鉄、お! 精霊銀が混ざってる・・・これなら、この間買った分と合わせれば俺の分も作れそうだな」
燥ぐ精霊達を後目に、ユウヒは三忍が採掘してきた鉱石を、一つ一つ右目で鑑定していく。その中身は想像以上にバリエーションに富んでおり、さらに欲しい物も入っていたからか、ユウヒの顔にも自然と笑みが零れる。
「ユウヒ、精霊銀欲しいの?」
「ああ、俺の武器に使おうと思ってな、魔法の補助になるみたいだし槍の穂かシャフトか・・・」
足で床を突いて首を傾げていた小精霊は、ユウヒの言葉が耳に入ったのか、座っているユウヒを見上げ問い掛ける。どうやら、ユウヒは新相棒の主要素材に、精霊銀を考えているようだ。
「・・・ねぇユウヒ? 銀と魔力分けてくれたら良い物作って上げるよ?」
「ん? 良い物? まぁ銀鉱石もあるし使い道が微妙だからいいけど、ちょっとまってろ」
新しい相棒の構想に笑みを漏らすユウヒに、手を後ろで組んで上目使いを向ける小精霊。まぁ、立ち位置的にどう頑張ってもそうなるのだろうが、そんな小精霊の、いつもとは違う行動に首を傾げるユウヒだが、特に使う予定も無いので承諾すると、合成魔法で銀鉱石を銀のインゴットに変え始める。
「レイギンつくるの?」
「手伝います」
正直、目の前で鼻歌を歌いつつ行われている作業は、現代日本だろうとこの世界だろうと相当驚くべき事なのだが、慣れた小精霊もユウヒも、特に感慨も無く進められ、二人の小精霊は今から何をするのか分かったようで、袖をまくり上げる様な仕草でやる気を表現している。
「よし! こんなものだな、ほれ銀塊だ置いとくぞ? あと魔力だったか・・・また外に出せばいんだよな?」
因みに、小精霊達の着ていると思われる蒼い服は、多少の長さや個性の違いはあっても袖は1分から3分袖位である。
「ひ、控えめでいいからね?」
「控えめな、えーっと【放出(小)】」
そんな涼しそうな服装の小精霊達の前に、ほぼ純銀のインゴットを置いたユウヒは、若干腰の引けている蒼少女の言葉に従い、控えめに魔力を放出する。どうやら小精霊的にも、前回の二の舞い(酔っ払い事件)は御免なようである。
「おおぅ!? 控えめでも結構濃度が・・・」
「この前みたいにはなりませんが、すごいです」
「よーし! さくっと作っちゃうぞー!」
彼女達の思惑通り、おかしくなるほどの魔力では無かったようだが、その魔力の質に思わず笑顔が引き攣っている。一番ちっこい小精霊が、若干テンション高めだが問題は無さそうである。
「ふむ、何を作ってくれるか知らんが出来たら教えてくれ」
『おう! まかせとけ!』
それでも彼女達にとって上質な魔力はアルコールと似ているのか、全員いつもよりテンションが高く、ユウヒの言葉にまるで江戸っ子の様に答える。
「さてこっちは、先ず水と風の触媒を3セットずつ、それから・・・」
そんなどこかアンバランスな仕草に微笑んだユウヒは、三忍が貰って来た蓮の花の様な素材などが置かれている場所に移る。しかし、その素材を見た時ふとある事に気が付く。
「そういえば、水の触媒ってこの三人に頼めばよかったのでは・・・」と・・・。
まさに灯台下暗しな事態に気が付いたユウヒだったが、今更である。銀塊を囲んで楽しそうに何かやってる水の小精霊が視界の端に入るが、ユウヒは引き攣った表情で目を逸らし現実逃避をするのであった。
「うん、何も見えない何も見えない」
一方、若干の無駄あ・・・知らぬが仏な三人の可哀想な忍者はと言うと。
「ふいぃぃ」
「いいゆでござるぅぅ」
「いやぁぁだいしぜんさいこぉ」
学園都市から少し離れた場所に流れる川の河原で、石造りの窪地に川の水を引き込んだ簡易露天風呂を作り寛いでいた。
「しかし勇者ユウヒの作る道具は凄いな」
「そうでござるなぁ、この石一個で小さな銭湯くらい賄えそうでござる」
「・・・帰ったらこの石で風呂屋でも開こうかな」
何故か覆面だけ残し、下半身裸の猛烈に怪しい三人は、適温のお湯に浸かりながらユウヒのくれた石について話しているようだ。水路の途中に置かれたその熱い石は、露天風呂内に入ってくる水を良い塩梅のお湯に変えてくれ、その性能に感心してかそんな言葉が漏らす。
「帰ったらか・・・帰らないといけないのか」
「こっちは、楽しいでござるからな・・・」
「もう少し残れないものか・・・」
しかしヒゾウの漏らした言葉に、三人の表情は少し難しいものへと変わる。そう、本来ならユウヒと無事合流出来た彼らは、現代日本に帰らなくてはならないはずなのだ。現在もここに残っているのは偶然そうなっただけなのである。
「・・・勇者ユウヒなら何とかしてくれそうな気がする」
「また・・・でもユウヒ殿なら神様と交渉出来そうでござるなぁ」
「だめなら神様に直談判だなぁ」
彼らにとって楽しい事が溢れているこの世界、忍者の力も手に入れ、まるでリアルなゲームを楽しんでいるかのような現状は、彼らの心を元の世界から遠ざけているようだ。
ぼーっと空を眺める三人は、漠然とした希望を描きながら、雲の数を数えるのであった。
その後お湯にのぼせた三人は、必然帰るのが遅くなるのだが、それは彼等だけの秘密である。
おはようこんにちはこんばんは、いつも元気なユウヒです。俺、誰にあいさつしてるんだ? 合成楽しすぎてテンションが可笑しいのかな・・・。
「よし、完成だ。水の触媒護符に風の触媒護符、それから各属性の触媒苦無・・・これは要テストだな」
現在、借りている宿の部屋を魔法で強化してから始めた合成は、楽しくまた特に失敗も無く進み、目の前にはたくさんの触媒護符の束、それに試作触媒苦無が置いてある。苦無に関しては繰り返し使える触媒や護符の案から作られた試作品なので、実際に試してもらうまで成功かは分からないのだが・・・。
「次は、魔物素材かぁ・・・固さもそこそこ、刀と混ぜてみるか? 魔石も有るならそれも混ぜてみるか」
「出来た!」
「ユウヒできたよ!」
「つかれた・・・」
次に、三人が厳選してきたらしい魔物素材を使った刀をどうするか考えていると、背後から少女特有の高い声が嬉しそうな色を帯びて聞こえてくる。一人だけ疲れたのか床に崩れているが、何をそんなにがんばったのやら。
「ん? 何が出来たんだ?」
「これ! 私たちのレイギン!」
「れいぎん?」
その子の様子を確認しながら何が出来たのか聞いてみると、二人で抱え運んできた銀のインゴットは、渡した時と違い仄かに青みがかっている。どうやらそれが『れいぎん』らしいので、俺は右目で詳しく確認する事にした。
【水霊銀】
水精霊の力で精製された精霊銀の一種。精霊銀は地中や水、空気などの残留魔力が自然と銀に溜まり精製される為、これと言って強い属性を持たないが、水霊銀は水精霊が高濃度の水属性を含んだ魔力で作る為、上質な水属性の魔力が宿っている。また精霊銀としての特性も一般的な物と異なり、総じて上質な物が多い。
しかし欠点もある。一般的なの精霊銀以上の性能を持つ水霊銀だが、その反面希少性や扱いの難しさも有り、人の世で扱われる事は少ない。現在でも扱っているのは、エルフや魔法に長けた種族の中でも水を信仰する一部の部族位である。
特性:高品質 魔力浸透率(高) 水の助力 水気 火属性無効 炎熱弱体
水の助力:高い水の属性により、水が関与する魔法すべてに補助の力が働く。
水気:五行の一角である水の力により火気を殺し木気を活かす。
火属性無効:この性質を持つ物は魔力による火を受け付けず消失させる。
炎熱弱体:有りと有らゆる炎を弱体させ、この特性を持つ金属は、加熱による変質をほぼ起こさない。
結果・・・予想外に凄い物でした。流石は精霊様なのか、こんなびっくりアイテム作れるんですね、俺では無理そうである。
「おおぉ・・・こんな素材もあるのか、しかしこれは鍛冶屋泣かせな素材だな、扱い難しいなんてもんじゃないだろ」
性能は凄いが、火が使えない金属とか鍛冶屋じゃ絶対加工できないだろ、と言うかこの世界の人はどうやって加工してるんだ? 削り出しくらいしか方法が浮かばないぞ。
「すごい? うれしい?」
「ああ凄いな、これなら良い武器が作れそうだよ、ありがとう」
何故か床の上で跳ねながら、褒めて欲しい感情をまったく隠せていない小精霊、その可愛さにときめきながら、俺は心の底から感謝の言葉をかけ、その思いは自然と俺に彼女の頭を撫でさせていた。
「あうあう、うぇへへへ」
「ズルい! 私も撫でろ!」
「こっちもお願いします」
「おう! ありがとな、なんだか始めてお前らに心から感謝した気がするよ」
褒めて欲しいのは後ろの二人も同じなのか、頬が緩んで凄い顔になってる子の両隣に陣取ると、ずいっと頭を突き出してくる。その可愛さは甘えてくる子猫並みに反則で、俺は感謝の感情を籠めて優しく撫で、言葉でも感謝に気持ちを伝えた。
『えへへ・・・あれ? それって褒められてるのかな』
「褒めてるぞ? さてこれはさっさと忍者グッズ作って自分の装備作らないとな!」
やはり誰でも褒められると嬉しいものなのか、三人共その表情を綻ばせている。何故か後半キョトンとした表情を浮かべていたけど、どうしたのだろうか。しかし、こんなに良い素材が手に入ったのならば早く相棒作ってやらねばなるまい、しかしそこは自称生産職、頼まれた物にも妥協は許されない。
「手伝うよ!」
「そうか! なら鉄鉱石と魔鉄鉱石を分けて集めてくれ」
俺の気合に呼応するかの如く元気に声を上げてくれる小精霊、そんな粋なことを言ってくれる彼女達に俺は感謝しながら簡単な手伝いを頼む。
『あいさー!』
しかし何故さっきから飛ばないで歩いてるんだ? まぁ歩いてる姿も可愛いけど、え? 力使い過ぎてまだ飛べない? ・・・大丈夫なのか? 急に不安になって来たんだが。
そんな微笑ましくも鈍感なユウヒと、小精霊達のやり取りから数時間後。
「いやーついつい長湯になったな」
「と言うかのぼせて気を失ってたでござる」
「そろそろ出来てるかな触媒と俺らの武器」
長湯のし過ぎで、のぼせて気を失っていた3モブ忍者は、漸くユウヒの泊まる部屋が見える所まで帰って来ていた。しかし毎度こいつらの移動手段は屋根伝いなのだが、良い子は絶対に真似しないようにしましょう。
「そうでござるなぁ、ユウヒ殿の合成魔法は鍛冶とかと違ってすぐ出来るらしいでござるからな」
「我年甲斐も無くドキドキしてきた」
「俺も緊張してるからか、ユウヒの部屋から異様な気配を感じる気がする!」
いつもは跳んで跳ねて移動する三人だが、今日は風呂上りと言う事もあり日が落ち始めた空の下、屋根の上をゆっくりとした足取りで歩いている。その顔は、まるで新作ゲームを買って、これから家でやり込むつもりでいる少年の様な表情である。しかしそんな雰囲気も束の間・・・。
「・・・我も感じるのだが」
「これは、危険な気がするでござる」
「・・・ねぇ今夜は野宿しない? 俺野宿大好き」
ヒゾウが感じた異様な気配をジライダとゴエンモも感じ、急激にその表情を蒼くさせる。ヒゾウなんかは既に逃げの姿勢のようで、普段は言わない様なセリフを真顔で呟いている。
「くくく、この素材は良い物だ」
「ユウヒ! これは!」
「おお! それもいいな暗殺にピッタリじゃないか」
「これもよさそうですよ!」
「お! これは毒耐性の要素があるな!」
「こっちの魔石何だが淀んでるね」
「ふむ? なにか変質したみたいだな・・・毒の魔石か、ふふふふふふ」
間近まで迫ったユウヒの部屋からは、そんな声が漏れてきており、ユウヒが合成魔法で垂れ流す魔力も合いまり、彼ら三人の忍者に恐怖を与える。
「あわわわわ!? ま、魔王だ魔王が降臨された!?」
「ちち、違うでござる! あれはマッドクラフターでござる! そう言えばマッドクラフターの名前もユウヒでござる!?」
「どど、同一人物!? 二つの伝説がここに!?」
その恐怖は、とある人物の事をゴエンモに思い出させた。まぁユウヒの数ある二つ名の一つなのだが・・・。
「実験台にされた者数知れず、5人の廃神と共に数多の大地を焦土に変えたあの!?」
「焦土と言うか、一番有名なのは永久凍土のコキュート事件でござるな・・・」
「総員回れ右して前進! 前進!」
その二つ名でも比較的新しい『生産狂人』は、ユウヒが暗黒時代に戦闘面に特化していた自分を顧みて、ギルドに入ったのを良い転換期と生産に手を出した事に始まる。
「「ラジャー!」」
簡単な話、戦闘へのやり込み意欲が生産、所謂物づくりに切り替わっただけで、伝説を増やしただけでしかなかったのだ。そんな有名人がまさか魔王と同一人物など流石に知らなかった三人は、その優れた直観力からすべてを察し、その身体能力に任せその場から立ち去るのであった。
心なしかデジャブを感じる光景だが、それだけユウヒが色々やらかしていると言う事である。
窓の外でそんな事が起きていたなど知らないユウヒは、その後も作業を続け数時間後、ついに新たな相棒を作り上げていた。
「ふむ、良い出来だ・・・そう言えばあの三人どこまで行ったんだ?」
魔法の優しい光が室内を照らす中、ユウヒは総金属性の美しいショートランスを掲げていた。しばらくその魔力を薄らと纏わせる槍に見惚れていたユウヒは、正気に戻るとすっかり暗くなった窓の外に目を向け、帰ってこない三人に首を傾げる。
「・・・」
「ん? ふふ、大分頑張ったみたいだからな、寝るならベッドで寝な?」
そしてそのまま視線を戻すと、すっかり静かになってしまった足下に目を向ける。そこには、胡坐を掻いたユウヒの太ももの辺りに体を預け、うとうとし始めている二人の小精霊と、完全に寝入ってしまっているいつもは一番元気の良い小精霊が折り重なっていた。
「あ、いえそれは」
「だ、だいじょうぶれす!」
「ほれ二人も、もう寝ると良い。俺はまだ続けるからちょっとうるさいかもしれんがな」
ユウヒの声に慌てて頭を上げると、若干寝ぼけながらも遠慮する二人、その姿に微笑むユウヒは寝入った子を抱えベッド迄運ぶと、残る二人も抱えそっとベッドに下ろす。その表情はとてもやさしく、親のそれに似ていた。
「えっと、じゃあそうさせてもらいます。端の方で寝てますので」
「おうおやすみ」
最後にそう会話を交わすと、急激に眠気が来たのか布団に倒れ込む小さな少女、その姿にもう一度微笑んだユウヒは、床に座り直すと槍の穂を鞘に入れ壁に立てかける。
「さて、酒の方も好評だったし、アミールからの依頼用も作るとするかな」
ユウヒはまだ作業を続けるつもりの様で、以前作った発酵樽より明らかに装飾や掘り込まれた幾何学的模様の質が違う、上質な樽を手に取ると、そこに黄金色の液体を注ぎ始める。
「神様用なら全力でやれるな、ふふふふふ・・・」
そう呟くと、樽に刻み込まれた魔法を起動させながら楽しそうに笑い、また別の作業に移るユウヒ。
その日の夜、とある宿の一室からは濃密な魔力の光が怪しく揺れ続けるのであった。
いかがでしたでしょうか?
いろいろ気にするところが増えると更新速度も落ちますねと言い訳しつつ、次の話に取り掛かりますので、次回もお楽しみにしていただけたら幸いです。
それでは今回もこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




