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ワールズダスト  作者: Hekuto


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第八十話 神秘の発酵魔法具

 どうもお久しぶりのHekutoです。


 修正作業終了しましたのでどうぞお楽しみください。



『神秘の発酵魔法具』


 現在は日も上り奥様方がそろそろお昼の支度を始めそうな時間帯。


「ふふ、完了だ」

 そんな時間からユウヒは楽しい合成魔法タイムを満喫していた。今も何か作ったようでその顔に微笑みを浮かべながら小麦色の液体を見詰めている。


「マスターこれは何ですか?」

 そんなユウヒをマスターと呼ぶのはユウヒが娘と呼ぶスニールコンパニオンで、そんな娘の中でも比較的落ち着いている子は一人、今回の合成のお手伝いで出てきている。現在はお手伝いも終わったようで小さな樽を抱え飛んでくると、明らかに普通の樽に見えないそれについて質問している。


「ん? ああ、それは高速発酵ダルだよ」


「はっこうだる?」


「んー水の力とか色々感じるね」

 呼びかけに振り向くと、小さな体で抱き抱える様に持つ樽に目を向け質問に答えるユウヒ、その視線の先では友情物マンガの様に喧嘩して以来交流があったらしく少しは仲良くなった水の小精霊が、樽に顔を近づけたり周りを飛びまわりながら不思議そうに首を傾げていた。


「複数の魔法を付与させたからな」


「どんな効果があるのですか? それに他にもいろいろ作ってましたけど」


「簡単な話通常だと何ヶ月何年とかかる発酵を短縮できるんだよ」


「たんしゅく?」

 娘から樽を受け取ったユウヒは、目の前にふわふわと浮いてる不思議そうな顔達に簡単な説明を始める。


 この高速発酵樽はお酒を作るためにユウヒが開発した魔法具である。いくつもの妄想魔法が付与されており、その力を使う事で簡単かつ安全に醸造することが出来る夢の道具なのだ。


「樽の大きさで短くできる期間は違うんだが、比較的遅めのこの樽で実践してみせよう」

 その他にも箱型の物や壺型など作っているが、どうしても付与魔法の量や質を上げるには大きさが必要な様で、樽に付けられている装飾は足りないスペースを補うための護符のようである。


「先ずこの合成したての特性麦ジュースを樽に入れる」


「入れるよー」

 しかしその性能もユウヒが足りないと感じるだけで普通に見ると十分以上の性能がある。そんな高さ50㎝ほどの小樽に水の小精霊が手を使わずに注いでいるのは、先ほどユウヒが嬉しそうに見つめていた液体で、昨日水につけて発芽させておいた麦を使って作った麦ジュース。


「次にこの樽の殺菌機能で雑菌を処理する」


「なにかビリッとしました!」

 樽の7割ほどまで麦ジュースを注ぐと、今度は樽に付けられた護符の【滅菌】と書かれた銀のプレートに魔力を流すユウヒ。どうやら電気を使った魔法で殺菌処理をする護符の様で、近くで見ていたスニールコンパニオンは魔法の余波を受けびっくりしている。


「んでここに町の酒場から採取し妄想魔法で改良培養した酵母を投入します」


「生命の息吹を感じますね」

 そんな娘の様子にクスクスと笑うユウヒは、続いて小さな陶器製の小皿に入れた白くふわふわした粉を樽に投入する。これは所謂酵母と呼ばれる菌で、特性麦ジュースの糖分をアルコールへ変え、お酒にしてくれるお酒造りの花形である。


「あとは樽の【促進】と【加速】の機能を発動させて放置する。中身の温度は【定温】の魔法で一定に保たれるのでほんと後は放置して適度にガス抜き弁からガスを抜けば」


『ぬけば?』

 小皿を片付けたユウヒは、樽に書かれた模様に指を当て魔力を流す。どうやら樽を構成する木の板などに護符由来の記号や文字を刻みさらに付与魔法などを駆使することで、難しい管理をフリーにしてしまったようだ。


「たぶんビールになってるはず、いろいろめんどくさい部分は魔法のおかげで何とかなったけど、味は出来てみないとな」

 ユウヒの話しに不思議そうな表情を浮かべる小さな少女達。【滅菌】の力で酵母の楽園になった麦ジュースは動植物の成長を加速させる【促進】の魔法で活発に働き、特定の空間内の時間を早送りさせる【加速】の魔法でさらに短い時間でお酒を造る事を可能にしている。


「・・・よし! それじゃ美味しいお酒を造る実験を続けようかな」

 そんな発酵が落着いたら再度【滅菌】を使って発酵を止めることで、一番美味しい状態で飲むことが出来る。しかしそんな反則級でこの世界の人から見ればまさに奇跡の塊である発酵樽にも、ユウヒは納得しているとは言えないようだ。





 現代日本なら捕まってそうなユウヒが更なる実験を続けている頃、とある廃鉱山。


「一掘り行く前に作戦会議をするでござる」

「うほwwこれは良い作戦会議ww」

「お前は良い焼け具合だな」


 そこでは『一掘り行こうぜ!』と書かれた鉢巻を巻いた三人の忍者が、テーブル替わりの岩の前で朝の会議を行っていた。そんな中いつも黒い三人だがヒゾウに関しては何時もに増して真っ黒である。ついでにジライダも微妙に煤けている。


「ユウヒ印の触媒・・・正直甘く見ていた、後悔と反省しかない」

「中級火遁でこの威力でござるか・・・」

「流石魔王ユウヒ、魔力のレベルが違い過ぎる」


 ジライダの言葉に肩を落し露天掘りの中でも開けた場所の方へ視線を向けるヒゾウ、そこは地面の一部が溶けガラス質に変化し炭化したナニカが転がっていた。そう、これは昨日の火災旋風によって作り出された光景で、その光景にはゴエンモとジライダも表情を引き攣らせるしかなかった。


「とりあえずヒゾウは療養しつつ触媒の検証で」

「ちょまwwおれちんじゃうwww」

「一回失敗してるんだから手加減位解るだろ? むしろ初めての我らがやる方が危険だ」


 そんな光景から目を逸らしたゴエンモは、無駄にキリッとした表情をつくるとサムズアップしながらヒゾウの予定を決定する。


「・・・正論すぎてなんもいえね」

「ヒゾウの方は剥ぎ取り品で十分でござる故、残りは拙者らの鉱石採掘だけでござる」

「そうだな、我今日はつるはしで掘るわ・・・」


 ヒゾウの気持ちも分かるが二人にやらせると第二の超真っ黒忍者が出来上がりかねない為、ジライダ正論にヒゾウは肩を落すのだった。そんなヒゾウを前にゴエンモはどんどん予定を決めて行く。その隣ではジライダが若干乏しい表情でつるはしを見詰めていた。


「高性能つるはしあるんだから最初からそうしてほしいでござる」

「何を言う! 爆発は男のロマンだろ!」

「それで生き埋めになりかけるとかマジワロスwww」


 そんなジライダを心配するわけも無く冷めた視線を送るゴエンモと、仕返しとばかりに笑い飛ばすヒゾウ。実は爆発と落石のコンボで気絶していたジライダだったが、目が覚めると頭以外は全部岩や土砂で埋まっており、様子を見に来た二人に救助される羽目になっていたのだ。


 実にアホである。





 とある村の自警団長による話。


「例のモノを見た日、俺は部下数人と見張り台でエールを飲んでいたんだ」


 それは何時ごろでしょうか?


「そうだな、あと一刻ほどで日が沈むくらいの時間帯だった。その日は早番連中とネズミ駆除のお疲れ会みたいなものだったんだが」


 なるほど、確かに今回の暴走ラットは異常でしたからそう言うのも必要だったでしょう。


「あぁみんな疲れていたからな。あれは準備したエールの残りも半分ほどになった頃だった」 


 例のアレが現れたんですね? どのようなものだったのでしょう。


「遠く離れた、たぶんあれは廃鉱山の辺りだと思うが真っ赤な竜巻が現れたんだ」


 真っ赤な竜巻ですか。


「魔法の心得がある団員の娘が魔力を感じると言っていたのであれは魔法なのだろうが、あれ程の魔法は俺も見たことが無い」


 団長さんはグノー軍での従軍経験が御有りでしたが、そこでもですか?


「グノー王国の魔法レベルはそこまで高くないしな、最近は戦いも少なくその為もあって団長なんてやってるのさ」


 そうでしたか、ところでその報告はどこかへしましたか?


「王都の知り合いを通じて連絡はしてある。まぁ山ほどの高さをした炎の竜巻など信じてもらえるか分からんがな」


 そうですか、今日は忙しい中ありがとうございました。この件は学園都市に戻り次第冒険者ギルドにも報告しておきますのでご安心ください。


「とか言って情報提供料狙い何だろ?」


 おやばれてしまいましたか、次来るときにエールでもお持ちしますのでそれでご勘弁していただけませんかね。


「なに、気にしないさ。まぁ持ってきてくれると言うのであれば美味い酒にしてくれ、こっちじゃ中々手に入らないんだ」


 わかりましたご用意しましょう極上の・・・。





「――のワインをつくるぞ」


『おー』

 どこかの誰かと言葉が重なったユウヒは、『ワイン用』と書かれた紙が貼られた様々な大きさの樽に手を置きながら宣言し、そんなユウヒに水の小精霊達は手を上げながら楽しそうに同調している。


「マスターはワインも作れるのですね。流石我らがマスターです」


「まぁ基本の原理は分かってるし、あとは妄想魔法の万能性頼みな感じだけどね」

 ユウヒの隣では目を輝かせユウヒを称えるスニールコンパニオン、若干苦笑いなユウヒの表情が映るその目は純粋その物のである。


「ワインってあの赤いのだよね?」


「まぁま間違っちゃいないが、今から作るのは赤とは限らないぞ? あれはブドウの皮まで入れてるからだしな」


『そーなのかー』

 赤いワインが赤い理由は、知ってる人にとって当然のことかもしれないが要は赤かったり黒かったりする葡萄の皮の色である。しかし呆けた様に声を揃える妖精達の見た事あるワインが偶然赤だったわけでは無く、一般的なワイン=赤と言うのがこの世界の認識のようである。


「・・・とりあえず何種類かジュースを作るから種類ごと樽に入れてくれ」


「まかせろ!」

 そんな常識を知らないユウヒは、町から買ってきた何種類かの葡萄やマール、林檎などを使い数種類のジュースを作って行き、作られたジュースは小妖精達が樽に詰め、ジュースを抜かれた果物はユウヒの娘が腐らない様にフリーズドライ加工を施していく。


 阿吽の呼吸で行われる流れ作業をする事小一時間後、すべての樽にジュースを入れてしまったユウヒは一つ一つ魔法を起動させながらラベルに説明書きをしている。


「ねぇねぇ? この余った果物はどうするの?」

 作業を続けるユウヒと違いやる事が無くなった小妖精達は、目敏く余った果物に目を付けるとユウヒの服をついついと引っ張りながら問い掛ける。


「ああ、それはミックスにして別の・・・うん、分かったから食べていいから、そんな捨てられた子犬の様な視線はやめようか?」

 小妖精の思惑と違いその果物は何か別の構想があるのか振り向きながら説明を始めるユウヒ、しかし振り向いた先にはそのつぶらな瞳を潤ませ下からユウヒの瞳を見上げる3対の瞳、まるで捨てられた子犬を連想する妖精達の姿に言葉を詰まらせたユウヒは、その可愛さに負けたのか呆れたのか肩を落とすと食べる許可を出す。


『やったー!』

 ユウヒの言葉に妖精達は文字通り飛び上がり喜びの声を上げると、我先にと言った感じで果物に飛び付いて行くのであった。


「・・・まったく、困ったやつらだ」


「ふふふ、それほど困った様子には見えませんが」

 頭だけ小妖精に向けて呟くユウヒ、その表情からは傍らで優しい笑みを浮かべる氷の娘が言う様にまったく困った様子を窺う事は出来ず、彼女は心の中でどこか子供を優しく見守る父親のようだと笑みを深めるのであった。


「・・・ところでそれは何ですか?」

 そんな自らの父と言っても過言では無い男性を見詰めていた彼女は、作業を再開したユウヒが取り出した色とりどりのふわふわした何かに気が付くと首を傾げながら問い掛ける。


「これは葡萄とか他の果物とか花から作った酵母を培養したものだよ、魔法ってほんと便利だわ・・・うぅむ」


「なるほどやり方は最初の麦と変わらないのですね」

 それはジュースの中の糖分をアルコールに変える酵母と呼ばれるものであった。ビールが出来る原理もワインが出来る原理も大した差は無い事に感心した様子の氷の乙女、そんな彼女の関心を余所にユウヒは予想以上にカラフルに培養された酵母に首を傾げるのであった。


「まぁそうだね、これでちゃんとしたワインが出来るか分からないけどアルコールにはなるしあとは様子を見ながら改良するしかないね」


「なるほど、ところでお酒は非常に時間がかかるものと言う知識があるのですがこれはどの位で出来るのでしょうか?」


「んー? 一般的に条件が良ければ10日くらいでアルコールは出来ると思うけど、これは1日でお酒になる計算だな」


「え?」

 樽ごとに酵母を変えて入れているユウヒ、樽に貼られた紙には入れたモノや条件などが日本語で書かれており、その出来具合から美味しいお酒を模索するつもりのようである。しかしそこである事が気になった氷の乙女は、何気なく質問するも返った来た言葉にキョトンとした表情を浮かべる。


「発酵が落着いてお酒になってるのが確認出来れば、後は【加速】の魔法を強めて熟成させつつ1週間くらいかな?」


「・・・(流石ですマスター、この神秘の現象を僅か一日とは・・・)」

 彼女が驚くのも仕方ない事だろう、普通に考えてたった1日でワインが出来てさらに数年から長い物なら10年以上かかるような熟成期間を1週間くらいで出来ると言うのだ。もし専門家が聞けば鼻で笑って馬鹿にするか発狂するかどちらの方が多いだろうか。


「ところで果物は要らないのか? 食べ尽くされるぞ?」

 そんなとんでもない魔法具を作った男はその意味を理解しているのかしてないのか、作業の手を止めると振り返り小妖精達と娘と呼ぶ小さな乙女との間で視線を行き来させ首を傾げる。


「いえ、私はマスターさえ居ればそれで・・・」

 そんなユウヒから生まれた娘である、その中でも比較的真面な娘でもやはり癖があるのか、頬を赤らめると樽に日本語で色々書き込んでいるユウヒに熱い眼差しを送っている。


「ふーん? 俺(魔力)がいればいいのか」


「はい・・・そっちは何なのですか?」

 そんな熱の籠った視線の先のユウヒは樽の様子を見ながら、同時進行で三十cm四方の浅い木箱も蓋を開けつつ様子を見ていて、彼女はその木箱も気になったようでユウヒの傍に寄ると再度質問を始める。


「こっちか・・・味噌を作りたいんだが、こっちは完全に運だな右目のおかげで毒見をしないで良いだけマシだけど」


「味噌ですか? どうして運頼みなのですか?」

 どうやら忍者達だけでなくユウヒもまた味噌の味が恋しい一人のようである。しかし何故その味噌作りが運頼みなのかと言うと。


「こっちに味噌を作るためのコウジカビがあるか分からんからな、たぶんあると思うんだがどうも菌類なんかはある程度量が無いと鑑定出来ないんだよなぁ」


「コウジカビですか、元になりそうな物は無いのですか?」

 そうコウジカビ、この菌と同じような性質の菌が見つからない事には何も始まらないのである。しかもどこにでも居る筈の細菌も、ユウヒの目で鑑定するにはある程度まとまった量が必要な様で、その為今も酵母を増やしたのと同じような培養専用の魔法具で色々と実験を繰り返しているようである。


「この世界と言うかグノー王国では発酵食品をあまり見ないんだよ、あってお酒ぐらいじゃないか? チーズとかも見ない様な・・・」


「そうなのですか? 不思議ですね」


「異世界だからなのかねぇ? これはどうか・・・これは微妙だな」

 グノー王国では何故か発酵食品があまり発達していない、他国に行けばチーズやヨーグルトみたいな物もあるのだが、どれもその製法を各国が機密として管理している為広まらないのだ。その上味噌に関してはグノー含めて周辺国家でも作られていない為、当然どこかに都合よく菌が転がっている訳がない。


「微妙なのですか?」

 しかしユウヒが運頼みだと言う一番の理由は別にある。


「コウジカビと似た働きをしてくれそうだけど・・・毒性が少しあるな」

 そう、菌は有用な物を生み出すだけでなく毒物を生み出す種類も多く存在するのだ。事実地球に置いてもコウジカビに似た別のカビが有毒な物質を生み出すことは、知ってる人にとって有名な話である。


「致死性なのですか?」


「いやちょっと痺れる程度かな」

 今回の物もそんな毒物を生み出す種類だったようで、ユウヒはすこしがっかりした様に木箱の蓋を閉じるとそっと廃棄物の上に置くのだった。


「そ、それならあのモルモ・・・あの忍者で実験したらいいですよ」


「いやそれ言い直してもおかしいからね?・・・うん、今日はもう手伝ってもらうことないから帰っていいよ?」

 そんなユウヒを元気付けようと思ったのか、いきなりマッドな提案をし始める氷の乙女。その言葉からは忍者に対する悪意しか感じられず、ユウヒは表情を引き攣らせると怒るに怒れず頭を撫でるのだった。


「むぅ・・・わかりました。何かあったらまた呼んでください」

 思惑通り元気づかせることが出来なかったからかそれとも合法的? に忍者を苦しめることが出来なかったからか、すこし残念そうな表情を浮かべたスニールコンパニオンは最後にその名に違わぬ笑みを浮かべるとユウヒの体の中に溶けるように消える。


「・・・うちの子はどうしてああも忍者嫌いなのか、何かそんな設定あったかな? その辺詳しいのはパン子か姉さん辺りか・・・今度会ったら聞いてみようかな」

 己が娘の性格に首を捻るユウヒは、クロモリの設定か何かかと呟くと今は遠い所に居る仲間の事を思い出すのだった。


「こっちはこっちで静かだと思えば寝てるし、お腹いっぱいで寝るとか完全に子供だな・・・」

 そんな事をやってるうちに、いつの間にか静かになっていた室内に気が付いたユウヒがベッドの方に目を向けると、そこには3人の小さな精霊が満腹になったからか折り重なるようにして寝息を立てている。その姿の愛らしさに頬を緩めたユウヒはその日も晩くまで作業を続けた。





 一方そんな微笑ましい宿の一室から遠く離れたとある廃炭鉱には、即席で創られた屋根と即席大型ベッドだけの空間に、見苦しい男共が蹴飛ばし合いながら大きな鼾を立てていた。


『ふぉ!?』


 しかし次の瞬間何か起ったのか、まったく同時に驚愕の声を上げて起き上がる3人の忍者達、その表情は恐怖のあまり蒼白に染まって・・・いても黒かった。


「今やたらと冷たい殺気を感じた様な・・・」

「拙者モルモットにされる夢を見たでござる」

「前にも感じた様な背筋の冷たさだったような」


 どうやら何処からか届いた電波により悪夢を見たらしい3モブ忍者、その夢が心底怖かったのだろうか寒くなってきたこの時期だと言うのに汗の量が半端では無い。


「やはり廃鉱山なだけあって出るのでござろうか?」

「お化けか? 異世界だし普通にいそうだけど」

「おばけ怖いとかwwおまいいくつだ・・・あれ?」


 彼らが言う様に、この世界には普通にお化けの様な魔物も居ればスケルトンやゾンビの魔物も存在する。そんな怪談めいて来た話しを笑い飛ばすが、まるでお約束のようなタイミングで何かに気が付くヒゾウ。


「どうしたでござ・・・」

「なんだよふりか・・・」

「蒼白い・・・女!?」


 そのまま動かなくなるヒゾウと、その体ごと固定された視線に誘導される様にして同じく笑い顔から蒼白へと表情を変え硬直するゴエンモとジライダ。そう、彼らの視線の先には、鉱山の奥からゆっくり近づいて来る女の姿・・・。


『ぎゃぁぁぁぁぁ!?』


 いかに屈強な忍者と言えど、その心の深いところは一般人な3モブ忍者隊。恐怖が限界を超えたのか、可愛くも無い野太い叫び声を上げるとそのまま泡を噴いて気を失うのであった。


 その時その廃鉱山に3人の忍者以外に誰がいたのか、それを知る者は誰も居ない・・・。



 いかがでしたでしょうか?


 今日もユウヒと彼らは平常運転のようです。こんな感じなのでもう少しまったりとした空気が続くかもしれません。一部三人は微妙にエキサイトな日常をおくっているようですが・・・。


 それでは次回もここでお会いしましょう。さようならー

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