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絶対感知

「ミーちゃん、そのビルの向こう側っ!」


 ミーの視覚映像を共有しながらリリスの心を探るさや。

 ビルに沿って歩道上を超速ダッシュしていたミーは、それを聞いて進行方向を突如として変更。九〇度曲がってビルの壁を駆け上がる。


「下から撃たれるよっ」


 ビルの側壁から離脱して可能な限り上空へ飛んだミーの周囲に、銃弾が乱れ飛んだ。

 確かに、敵からの距離を取ることで、直線上に障害物のない状況でも被弾率は飛躍的に下げることができるだろう。射撃センスに関しては、リリスは特殊能力を持っていないはずだから。


 ミーは、隣のビルの壁と元のビルの壁を交互に蹴って上空へと駆け上がっていく。

 再びビルの屋上へと辿り着き、屋上にある塔屋のかげに隠れて様子をうかがった。


 そこへ静かに流れてくるリリスの声。奴も屋上に辿り着いたようだ。

 

「くくく……クズがいつまで逃げたところで何も変わりはしない」

「そうかあ? さっきの手合わせを見る限り、そう差があるとは思えんな。神も大したことないのう。あ、そういや、あたしも神になったんやったわw」


 イダテン様はケケケ、と笑った。


「クズとはいえ、お前らのことは認めている。私や艦長には遠く及ばんが、リョウマとナキを下したのは大したものだ」

「そりゃどうも。さっきも言うたけどな、お前らとの差ぁなんぞ無いわ。そやから、あたしらがクズやと言うなら、お前らはゴミあたりかな」

「強がるな。私は、このままこのエリアのゲートを全て封鎖して、イグナイターの融合完了までお前たちを閉じ込めておくこともできるのだ」


 なら、こいつらはいったい何を考えているのだろうか?

 こんな真っ向勝負みたいなことをして……


「何度も言うが、私はお前たちをある程度は認めている。これまでの手合わせを見る限り、なかなかの戦闘力だと言って良いだろう。リョウマとナキが使えなくなった今、我らの任務を遂行するためには人手が足らんのだ。仲間になれ、このまま死にたくはないだろう?」 


 ここへ来て、リリスはミーを勧誘し始める。


「まゆとギガントアーマーの融合を解除して、雪人くんの病気を治してくれたら考えんでもないけどな」

「組織に属する者は、ただ組織の方針に従うのみだ」

「仕事のためかいな? お前らは、何のために仕事しとるんや。自分の大事なものを捨ててまで、やる意味あるんか」

「国家のためだ。一個人がどうのと、くだらん」

「その国家を構成する人間一人ひとりを見捨てるような奴が、国全体をどうにかできるとでも思っとんか」

「命の一つも切り捨てられないような奴は、結局、土壇場で何一つ決断できはしない」

「それがお前の大事な人でもか?」

「小の虫を殺して大の虫を生かす、か」

「……まゆや雪人くんが小やと、誰が決めた」


 言葉の衝突で火花が散る。

 ミーの声色が変わり、

 視界に、紅蓮の気体が見え始めた。


「私が決めたのではない。決まっているのだ」

「なら、あたしが変えてやる」

「ハハハ。お前一人に何ができる」

「ここでお前を倒せば、残りは艦長一人やろ」

「ここでお前らを殺した後、寝咲ネムの首を刎ねてやる」


 視界は紅く染まる。


 爆発的な速度で塔屋から飛び出すミー。おそらくリリスが持つサブマシンガンの射程に入ったはず。

 同時に、以前感じた妙な感覚──リリスが時を止める直前の違和感が、俺の身体を包んでいた。


「ミーっ!!!」


 俺が叫んだ瞬間にリリスの姿は消え──

 同時に現れる。リリスの姿がブレたように見えたので、俺は、奴が「エージェント」を使ったのを視覚でも認知できた。


 が……


 俺は絶句した。

 ミーは、なぜか、無傷で奴の「絶対時間」をやり過ごしていたのだ。


 ミーの視界映像を確認した俺は、ミーが、隣のビルの屋上にいることに気付く。

 塔屋を飛び出したミーは、そのまま瞬間的に隣のビルの屋上へと飛んでいたのだ。どうやらリリスは、時間を止めたものの、ミーがどこにいるかを見失っていたらしい。

 

「よん」

「くっ!」

 

 再び元のビルの屋上へと風を巻いて飛び戻り、その勢いでミーはリリスへ斬りつけた。

 着地したミーの視界へサブマシンガンの銃口が向けられる。


 だが、時を止めない限り、ミーの動きについて来れる者などいないだろう。

 あのリョウマも、ナキの能力でミーの動きを先読みして回避し続けていたが、テレパスが無くなった瞬間から、奴はミーの動きについて来れなくなったのだから。


 そして、ミーの姿を見失っていた間に一秒間などゆうに過ぎる。おそらく今回、エージェントは僅かな時間も残されていないだろう。


 神速で動いたミーはいとも簡単にリリスの背後をとる。リリスはまだミーに背を向けており、ミーのいる位置を把握できているとは思えない状況だ。死の一秒間を生き延びたミーは、命をつなぐ四秒間を無駄にすることなく動き出す。


 背中を狙ったミーの太刀筋。足音を知覚した時にはすでに斬られているはず──。


 ところが、口角をあげてこぶしを握りしめていた俺の期待を裏切る事態がここで発生する。


 リリスは振り向くことなく、剣だけを肩越しに後ろへ回し、ノールックでミーの斬撃を受けたのだ。


「なっ!」

「さん、だ」


 なおも顔を後ろへ向けずに、剣を持つほうの脇の下から現れるサブマシンガン。真っ直ぐに向けられた銃口がミーの視界に映る。


 ダダダダ、と響く銃声が聞こえた時には、ミーは再び塔屋のかげに隠れていた。


「さっ、さや! 今の、テレパスでわかったか? なんやあれっ」

「……うん。今のは──」


 呼吸の乱れた身体で、ミーはさやの声を聞く。

 

「あいつ──リリスのダブル・アビリティ『神の領域/アブソリュート・センシング』。半径五メートル以内のあらゆる存在を完全把握する、……みたい」

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