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拍手小話4 最後は笑って

 私がデュクロ司祭の部屋に入ると、彼はゆっくりと上半身を起こし、こちらを見つめて言った。




 やあ、いらっしゃい。

 待っていたよ。

 最近寝ていることが多いんだけれど、今日は調子がよくて、午前は外に出てきたんだ。

 そうしたら怒られちゃった。

 え? 何してきたのかって?

 孤児院だよ。

 ちょっと心配されちゃったけれどね。

 え、なんでそんなことをって?

 だって、僕を必要としてくれるからね。

 僕はなにも残さなかった。

 司祭としての勤めも果たさなかったし、結婚もしなかったしね。

 僕には人を癒すことしかできないんだ。

 僕には、他には何にもないから。

 だから僕は魔法を使う。

 これは、僕ができる数少ない事だから。

 え? 命を削ってまでやることなのかって?

 さあ、考えたことないや。

 僕は34だけれど、充分だと思ってるよ。

 え、早すぎる?

 そうかなあ。

 したいことしてきたし、心残りはないよ、僕は。

 強いて言うなら、魔法が必要ないほど医療が発達して、色んな国や町に高度な医療技術が広まった世界を見たかったかなあ。

 まあ、それはすぐには無理だろうしね。

 僕は幸せだと思ってるよ。

 好きなことだけして生きてきたんだもの。

 皆には感謝しているよ。

 こんな僕のために食事を用意してくれるし、生活を支えてくれるんだもの。

 初めて結婚式で祝福をしたけれど、あれもいいものだね。

 幸せな顔をみるのは、嬉しいことなんだなって初めて思ったよ。

 こちらまで幸せな気持ちになれるんだね。

 今日は来てくれてありがとう。

 君に出会えて僕は幸せだよ。

 少し、喋りすぎたかな。

 疲れちゃった。

 僕は寝るね。




 そう言って、デュクロ司祭はゆっくりと横たわり目を閉じた。

 口許に笑みをたたえて。 

以上になります

お付き合い下さりありがとうございました

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