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『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』  作者: 笠井 裕二
堕ちた英雄

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下剋上 4

続きです。



◇◆◇



ー…と、言う様な事を一部の()()が企んでいる様ですが…ー

ー………ー


一方その頃、やはりこの宇宙の何処か。

今現在、“アドウェナ・アウィス”を主導している()()達がそんな会話を交わしていた。


例の先鋭的な()()達は、自分達の事など気にも留めないと考えていたが、それは、半分正解で半分間違っていた。


何故ならば、彼らの勝手な行動はメインの()()達には筒抜けだったからである。


…では、何故半分は正解なのかと言うと、


ー…それで?いかが致しますか?ー

ー放っておけ。ー

ー………へっ?ー


それを知った上で、メインの()()がそれを黙認する事を決定したからであった。


補佐的な()()がその決定に驚いていた。

それに、メインの()()は続けて自身の考えを説明し始めた。


ー…私の考えが分からないという顔だな?ー

ー…ええ、まぁ。これは、ある意味では我々への裏切り行為です。故に、普通に考えれば、彼らの計画を阻止した上で、彼らを罰するべきだと思われますが…ー

ー…普通ならそうだろう。普通ならな。だが、以前にも述べた通り、私はある意味ではイレギュラーこそ、今現在の我々には必要な事ではないかと考えている。ー

ー…と、申しますと?ー

ーうむ。つまりな、我々の中にも、これまでとは違った変革が起こっている、という事ではないか?ー

ー………ふむ。ー


メインの()()の言葉に、補佐的な()()は、分かった様な分からない様な相槌を打った。


ー我々が『肉体』を持っていた以前はまた別の話だが、我々が今現在の状態に成ってからこれまで、我々と袂を分かったのはネメシスだけだ。逆に言えば、彼以外に離反者はいない事になる。これは、ある意味では組織としては盤石な体制になっていると捉える事も出来るが、またある意味では停滞しているだけ、とも捉える事が出来る。ー

ー…確かに。ー

ー我々の目的は“鍵”を探す事であって、強固な組織、体制を築く事ではない。故に、それが目的に叶うかもしれないならば、あらゆる可能性は肯定されて然るべきだ。ー

ー…ふむ。ー

ー実際、ネメシスが袂を分かった時は、様々な変化が起こった。まぁ、それでも目的の“鍵”を見付けるには至っていないが、以前にも述べた通り、“予定調和”の物語ではこれまでと何ら変わらない訳で、それで運よく“鍵”が見付かるとは到底思えない。ならば、これまでとは違った事。つまり、様々なイレギュラー、そして、我々の中にも再び起こったイレギュラーを、ここで潰す訳には行かない、と私は考えているのだよ。ー

ー…なるほど。ー


アドウェナ()アウィス()”は、別に仲良しごっこをしたい訳ではないのである。


あくまで“アドウェナ()アウィス()”の望みは目的の“鍵”を見付ける事であり、その可能性があるのならば、たとえ仲間内の裏切りであろうとも、イレギュラー達の反抗であろうとも、それで目的を達する事が出来るのであれば手段はどうでも良かったのであろう。


ーつまり、彼らの行動を妨害する必要はない、と?ー

ーその通りだ。むしろ、立場が許すのであれば、積極的に支援したいところだが…、流石にそれは他の()()達の手前、出来ないからね。ー

ー…ふむ。それ故に、あえて見て見ぬフリをする、という訳ですな?ー

ーそうだ。ー

ーなるほど…ー


とは言えど、ここがややこしいところであるが、凝り固まった固定概念や伝統の様なものもいまだに根強く存在しているので、メインの()()の様な考え方は受け入れられない可能性が高いのである。


実際、補佐的な()()でさえ、一部の()()の動きを問題視していたし、“結果さえ出せればそれで良い”、というのは、特に保守的な()()達からは反発される恐れがあるのだ。


『肉体』から脱却し、『精神』や『思念』、『霊魂』だけの存在になったというのに、いや、だからこそかもしれないが、()()達の意見を取りまとめるという事は、想像以上に難しいのかもしれない。


ー承知致しました。では、そちらに関しては、他の()()達が騒ぎ出すまでは放置、という事で…ー

ーうむ、すまんな。ー

ーいえ…ー


そんな訳で、カエサルの計画と、それを利用して新しい試みを企てていた()()達の計画はメインの()()達にも筒抜けだったにも関わらず、妨害を受ける事もなく滞りなく進めるられる事となった訳であったがーーー。



◇◆◇



「…拍子抜けでしたね。」

「いや、全くだ。アルメリア様がお隠れになったと聞いた時は、正直どうしようかと思っていたが…」


『新人類』の代表者達は、そんな会話を交わしていた。



場所は、人間族と『新人類』達のちょうど中間あたりの街であった。


そこでは、人間族と『新人類』達との、正式な停戦合意の調印式が、大々的に行われていたのである。


もちろん、ネメシスも、『新人類』側の代表的な立場として出席しており、人間族側からもその代表者が、そして、各々の勢力の偉い立場にある者達も一堂に会していたのであった。


「ですな。しかし、それからすぐ、人間族側から、正式な停戦交渉の打診を受けたんですよね?」

「うむ。ここだけの話、最初は罠を疑いましたがね。アルメリア様がお隠れになった以上、我々の戦力は大きく低下しましたからね。一気に攻勢を仕掛けてくるかと思いきや、停戦交渉の打診でしょう?」

「ああ。こちらを油断させておいて、一網打尽にするつもりなのではないか、と?」

「ええ。アルメリア様もいらっしゃらない。そこに更に首脳陣もいなくなれば、こちら側はますます混乱しますからね。そこを一気に叩けば、彼らはこちらをやすやすと支配下に置く事が出来ますからね。」


とは言えど、この日に漕ぎ着けるまでには、それなりの山場もあったのである。


今、彼らが話した内容の様に、突然の人間族側からの停戦交渉の打診に、『新人類』側の代表者達が疑念を抱いたからである。


確かに、以前から言及していた通り、かなり前から実質的な休戦状態が続いていたのは事実であり、それ故に、正式な停戦交渉が始まるのは何ら不思議な流れではない。


だが、物事にはタイミングというものがあり、アルメリアという、ある種絶対的な存在がいなくなってからのそれというのは、罠を疑っても仕方のない状況なのだ。


もちろん、人間族側がアルメリアをなき者にした、などと疑う事はなかったが(残念ながら、そんな人材は少なくとも人間族側には存在しないからである)、それでも、水面下で虎視眈々と機会をうかがっていた、というのなら、別段おかしな話ではない。


実際、向こうの世界(地球)の歴史においても、あまりに強い者とはマトモに戦り合う事は徹底的に避け、その者が亡くなるまでじっと待った、という記録も存在する。


まぁ、“神”たるアルメリアが死ぬ事はあり得ないのだが(もちろん、人間族側はそんな事実は知らないが)、今回のネメシスとのあれこれの様に、内部で権力争いが起こる事はあり得る訳で、その結果、有力な指導者が失脚する、体制が変わる、という事はよくある話だ。


組織というのは不思議なものであり、トップの変化により、その強弱が変わるものでもある。


まぁ、ここら辺は、いくら最強の軍団とは言えど、あくまでそれを構成しているのは“人”であるから、有力な指導者との強固な信頼関係によって成り立っていたものが、後継者に交代する事により、その前提条件が崩れ去り、組織内にほころびが生じる為でもあるが。


いずれにしても、アスタルテという、ある種象徴的な存在がいなくなる事は、人間族側からしたらまたとない機会が到来した事と同義な訳であった。


まぁ、それでも、まだネメシスが存在するし、『新人類』側の戦力が失われた訳ではないので、ある意味では五分五分に戻っただけの話なのだが、そこら辺は、勢いとか流れの様なものが確かに存在する訳であるから、そのタイミングで人間族側が一気に攻勢を仕掛けてくるものと考えた訳である。


だが、そうした予想には反して、人間族側は正式な停戦交渉を『新人類』側に打診してきた訳であった。


額面通り受け止めるのであれば、長々と続く不毛な紛争を終結させるべく、人間族側が歩み寄りを見せた、と受け止める事も出来るが、その一方で、先程述べた通り、冷静に戦力を分析するのであれば、人間族側に不利な状況が解消された訳であるから、ここでひくのはかなり違和感のある事でもあった。


と、なれば、その停戦交渉は罠であり、ホイホイと交渉のテーブルについた『新人類』側の代表者をなき者とするつもりなのではないか、という疑念が生まれてしまったとしても不思議な話ではないのである。


とは言えど、正式に停戦交渉を打診して来た以上、それを突っぱねる事も出来ないのである。


何故ならば、相手に大義を与える事に成りかねないからである。


疑心暗鬼に囚われて、停戦交渉は罠である、として交渉そのものを拒否すれば、つまり、“『新人類』側は和平を望んでいない”、“こちらの譲歩を踏みにじった”というメッセージと受け止められかねない。


かと言って、交渉そのものには、かなりの危険が伴う可能性も高い。(仮に、やはり罠だった場合、交渉の場が一転して修羅場と化す可能性があるからである。)


それ故に、『新人類』側で交渉団の人員の選定に、かなり揉める事となってしまったのである。


残念ながら、『新人類』側の代表者達は、長らく政治的な立場にあった事により、言い方は悪いが、自らの保身を最優先に考えてしまう俗物に成り果ててしまっていたのである。(まぁ、とは言えど、危険な任務である事が分かっている以上、なるべくなら自分以外の誰かがやってくれないかなぁ〜、という雰囲気になってしまう事も致し方ない事ではあるが。)


当然、ネメシスは困ってしまった。


もちろん、ネメシス自ら、自分が交渉をする、とは言ったのだが、アスタルテがいなくなった以上、『新人類』側の実質的なトップは彼であるから、それは全員から反対された。


ここで更に、ネメシスまでいなくなってしまえば、それこそ『新人類』側を纏められる者が不在となってしまうからである。


だが、では誰が行くのか、となると、お互いが牽制し合ってしまい、結論が一向に出なかったのである。


が、ここで、アベル達が名乗りをあげた事によって、状況は一変する。



・・・



「ったく、『新人類』側の代表者達が雁首揃えて何やってやがんだ、情けねぇ。」

「ちょっ、アベルッ!」


一向にまとまらない話し合いにしびれを切らしたアベルが、開口一番そう非難したのである。


それに、フリットがフォローをする為に割って入ろうとするが、それより先に、ヴェルムンドがそれに追従したのであった。


「アベルの言う通りだね。いつから君達は、牙を引き抜かれたんだい?」

「「「「「………」」」」」


ヴェルムンドの遠回しな非難に、代表者達はぐうの音も出なかった。


今現在の『新人類』側の代表者達は、アベル達の後継者達が引き継いだ形である。


そのアベル達は、魔王軍との友好関係を否定した立場でもある。


もちろん、政治的・外交的な戦略があった事は否定しないが、それでも、要は日和見主義に徹して、“自分達さえ良ければそれで良い”、という当時の政治家達のスタンスへの反発があったのである。


確かに魔王軍は『新人類』達に対して好意的ではあったが、それがずっと続くなどある筈もなく、仮にカエサルらが立ち上がらずに人間族側が支配下に置かれた場合、その次は『新人類』達が侵略されたかもしれないのである。


いずれにしても、保身を完全に否定するつもりはないが、彼らは元・悪ガキとしての、反骨精神をいまだに持ち続けているのである。

今の『新人類』達の代表者達とは違って。


「大人になると、守るべきものが増えるのは理解出来る。しかし、今現在の君達が守りたいのは、本当に仲間達の事かい?私にはそうは思えないね。」

「自分達の立場を守る事に執着してるだけ、って感じに見えるぜ?それこそ、お前らも大嫌いだったかつての大人達みたいに、な。」

「「「「「っ!!!」」」」」


そのアベルとヴェルムンドの言葉に、代表者達はハッとしていた。


よくある話ではあるが、若い内は情けない大人達(そういう風に見えた)に対して否定的だったにも関わらず、いつの間にかその自分自身がそういう大人になっている事は往々にしてあるものである。


もちろん、先程も述べた通り、それは完全に否定されるものではない。


情けなくとも、誰かを守る為に、あえて道化を演じる必要も出てくるからである。


だが、それが仲間達、未来ある子供達の為ではなく、ただ自分自身の身を守るだけの事ならば、話は変わってくるのである。


「ま、別に俺らも、偉そうに説教するつもりで来た訳じゃねぇ。」

「ネメシス殿。人間族側との交渉は、私達にお任せ頂けないでしょうか?」

「………ふむ。」

「「「「「………」」」」」


今まで黙って事の経緯を見守っていたネメシスに、アベルとヴェルムンドがそう告げた。

それに、その場にいる全員が、その手があったか、と納得していた。


以前にも述べた通り、アベル達英雄4人組は、今現在はこの場にいる代表者達に席を譲り、半ば隠居に近い状況にあった。


これは、いつまでも同じ者が権力の座に居座ると、組織の新陳代謝が落ちる、不正が横行する、などの懸念があったからである。


それ故に、まぁ、カエサル達とは違い、徐々に年老いて事もあってだが、いまだ武人としても政治家としても一線級の働きが出来るにも関わらず、彼らはトップから退き、ご意見番、相談役の様な立場となった訳である。


だが、その華々しい活躍が、むしろ時を経た事により、以前よりも盛られる事となった。


当たり前の話だが、他勢力、ここでは人間族側となるが、との正式な停戦交渉を開始するに当たって、人員は誰でも良い訳ではない。


これは、相手方にも面子が存在するからである。


当然だが、停戦交渉などという重要な決め事を担う者を、そこら辺の一般人に任せる訳には行かないし、相手方にとっても失礼に当たる。


となれば、それなりの立場にある者、向こうの世界(地球)で言えば、大臣クラス、各省庁のトップクラスが担う事であるが、今現在の『新人類』側は、その立場にある者達が、全員及び腰となっていた訳である。


が、ここで、かつての『新人類』側のトップを経験し、かつ、今現在でもご意見番、相談役としての(一応の)立場を持ち、それでいて、英雄としての経験からも、修羅場にも慣れたアベル達は、これ以上ない人材であった。


人間族側からしても、アベル達英雄4人組は特別な存在であるから、面子を見て難癖をつける事も出来ない上に、仮に罠であったとしても、彼らの実力ならば、容易に切り抜ける事が出来る。


「…それは、こちらとしては願ってもない話だが…、その、良いのか?」


一瞬でそれらの計算を頭の中でつけたネメシスは、アベル達が今回の件の最適解である事を理解した上で、言葉を濁してそう言った。


先程も述べた通り、すでにアベル達は一線を退いた身だ。

それが、再び矢面に立つという事は、色々とごちゃごちゃとする可能性を危惧しての事だろう。


「もちろんです。後進の尻拭いをしてやるのも、先達の役割でしょう?」

「それに、私達ならば、仮に何かあったとしても、失うものは特にありませんからね。」

「「「「「………」」」」」


多少嫌味が入った言い方であったが、事実である以上何も言えなかった代表者達をチラリと見やり、アベル達はそう言った。


それに、これまで黙っていたフリットとアルフォンスも、コクリッと頷いた。


「…分かった。なら、人間族側との停戦交渉は、アベル達に一任する事としよう。反対の者はいるか?」

「「「「「………」」」」」


すでに、4人組の意思が固まっている事を察して、ネメシスはそう宣言した。


そして、当然ながらそれに反対する者は誰一人としていなかったのである。


こうして、アベル達が交渉役を買って出た事により、人間族側との正式な停戦合意に至った訳であるがーーー。



・・・



「…しかし、今回の件でも結果を出されたから、表向きは文句こそ出ませんでしたが…」

「…アベル様達の事ですか?」


ヒソヒソと声を潜めて会話を続ける二人の話題は、アベル達の事へと移り変わっていった。


「何もあの様な態度を取られる必要はなかったのではないですかな?そもそも、あの方達はすでに一線を退いていた筈ですのに。」

「まあまあ。お気持ちは理解出来ますが、彼らは彼らで、我々の行動を見ていられなかったのではないですかな?」


やはりと言うか、厳しい叱責を受けた事もあってか、アベル達に対する不満を持つ者達もいた様であった。


とは言えど、片割れの者の様に、自分達の不甲斐なさが招いた事である事をしっかりと理解していた者達もいたが、ここら辺は、もはや感情とかそういう理屈とはまた別の話であろう。


「それは分かりますが、それならそれで、他にやり様もあったでしょうに…」

「…まぁ、確かに。」


ハッキリ言って、アベル達の指摘した事は圧倒的な正論である。


『新人類』側の代表者達が、我が身可愛さに、お互いに牽制し合い、結論を先延ばしにしていたのだから。


だが、それを真正面から“お前らは間違っている”と言われて、いい気はしないものなのだ。


そうなると、一部の者達は面白くない、子供っぽい論理で言えば、拗ねてしまった訳である。


だが、いい大人が何を言っているのか、という話ではあるが、えてしてこういう事があると、(自分達が悪いにも関わらず)よろしくない事を考える者達も現れてしまうものなのである。


「…あの方達には、早々に()退()して頂かなければなりませんな…(ボソッ)」

「………」


不吉な事を呟く男に、もう一人の男は聞こえないフリをしながらも、背中に冷や汗を一筋流すのであったーーー。



誤字・脱字がありましたら、御指摘頂けると幸いです。


いつも御覧頂いてありがとうございます。

よろしければ、ブクマ登録、評価、感想、いいね等頂けると非常に嬉しく思います。

ぜひ、よろしくお願い致します。

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