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断罪された悪役令息は、処刑ループのたびに帝国を救う  作者: とま


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第46話 宰相府の影

 宰相府を敵に回すことの意味を、ヴァルターは理解していた。


 宰相府は帝国行政の中枢だ。


 皇帝の決裁を補佐し、各省庁の取りまとめを担う。


 そこに噛みつけば、クラウゼ家でも無事ではいられない。


 公爵家の嫡男であろうと、相手の規模が違いすぎる。



 だから、正面から動くわけにはいかない。


 ヴァルターは副署の真偽だけを確かめることにした。


 あの帳簿に押されていた宰相府の印が、本物かどうか。


 それだけを、静かに確認する。



 宮廷の文書管理局に、以前から顔を出している書記を通じて、間接的に調べた。


 宰相府が文書に副署する際の様式は、書式と押印位置に決まりがある。


 その規則を確認し、帳簿の写しの印と照合した。



 結論。


 副署そのものは、本物だった。


 宰相府の印は正規のものと一致している。


 だが——



 付随文書が、差し替えられている。


 副署の対象になっているはずの本文書が、帳簿の内容と一致しない。


 つまり、宰相府は「本来の文書」に副署した。


 しかし、その後に内容だけが入れ替えられた。



 (宰相府全体が黒なのではない)


 ヴァルターはそう分析した。


 宰相府の内部に、「流れを加工する者」がいる。


 正規の手続きを踏みながら、その過程で密かに書類を差し替えている。


 外から見れば、すべてが正規の承認を経た文書に見える。



 さらに、もう一つ気づいた。


 皇帝の決裁が下りにくい案件——政治的に敏感な案件ほど、この「加工」が行われやすい。


 皇帝の目が届かない隙間を狙って動いている。


 皇帝の判断力が鈍れば、その隙間は広がる。



 (これは偶然ではない)


 ヴァルターの頭の中で、一本の線が繋がり始めた。


 皇帝の異常。


 宰相府内部の工作。


 北辺特別支出。


 辺境への資金の不流通。



 個別の不正ではない。


 構造的な腐敗だ。


 誰か一人が悪いのではなく、その「仕組み」全体が腐っている。


 そして、その仕組みが機能するために——



 皇帝が判断できない状態であることが、必要条件になっている。


 ヴァルターは紙に書いた。


**「皇帝の異常は、帝国崩壊の中心にある」**


 初めて、そう確信した。



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