サイモン・サイラスの嘘
「リチャード、このワンちゃんを車へ運んでねェ」
麻袋を頭から被せられた僕は、聞こえてくる情報だけで自分の状況を理解する事にした。
リチャード……さっきの執事だな。
「かしこまりました」
声と同時に僕はリチャードに抱え上げられる。
しばらくすると身体を包み込むようなゆったりした椅子に座らされた。どうやらロールス・ロイスに乗せられたらしい。
「運転はリチャードがいいねェ。貴方の運転じゃないと酔っちゃうからァ」
「仰せのままに」
後方からサイモンの声がする。僕は助手席に乗せられたようだ。
そのあと誰かが後部座席に座った気配を感じた。これがアルフォンスだな。
「ではではァ、ロンドン支部まで安全運転で頼むねェ」
その声を合図に微かな振動を感じた。つまり、ロンドン支部へ向け発車したという事だ。
「――さァ、そろそろ到着かなァ」
何分経っただろうか? 暗闇の中で恐怖する僕には何時間も経ったように感じたが、実際はほんの数分かもしれない。
到着しないでと願う僕の気持ちをよそに、徐々に車が減速してゆく。
やがて停車した事を伝える微かな振動があった。
コンコン……ウィーーン。
どうやら窓をノックされて、誰かが車の窓を開けたらしい。
「失礼します!」
聞き覚えのない声が聞こえた。
「貴方だれェ? なんの用かなァ?」
「申し訳ございません、自分は世界教会パリ支部所属のロワイエと申します。現在、ロンドン支部は封鎖されておりまして。如何なる方もお入りできません」
「おやおやァ。サイモン・サイラス、懲罰執行官だよォ。このスーツのダンディーは仕事仲間だァ。こっちの奴は捕まえた悪魔崇拝者だよォ」
「執行官の方でいらっしゃいましたか、失礼致しました! ですが通行を許可出来ません」
「仕事なんだァ。こいつを拷問をさせてくれないかねェ? そうだァ、本部に通していいか聞いてみてくれると助かるんだけどねェ」
「少々お待ち下さい!」
……嘘だ。サイモンは嘘をついている。僕を拷問するつもりはないって事か?
わずかに見えた希望に安堵する。過信するにはまだ早い……それでも心に広がっていた絶望を打ち払うには十分だった。
「お待たせ致しました、お通り下さい!」
車は再発進したが、すぐに駐車したようだった。
「ではではァ、仕事場に運んでおくれェ」
サイモンの指示で、リチャードが僕を担ぎ歩き出す。
しばらくすると目的地に着いたのか、僕は地面に降ろされた。
「さァさァ、ここが仕事場だァ」
サイモンが僕に被せた麻袋を脱がせると、目の前に広がっていたのは正に拷問部屋だった。
赤黒い汚れが部屋中を覆い、不潔極まりない。吐き気をもよおす悪臭が鼻につき、胃液がせり上がるのを感じる。
するとサイモンが手近にあったチェーンソーを持ち、エンジンをかけてニタリと笑う。
「それではァ、始めるとしようかァ」
次回、いよいよサイモンとアルフォンスの目的が明らかになります!
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