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百一話 進捗

久しぶりの更新です。

 その日の授業を終えてアレクはミリアの研究室へと向かう。使い魔の研究は大詰めを迎えており、あとは具現化した後の安定性を持たせるだけで完成となる予定だ。

 使い魔の形状は使用する魔石によって決まる。視覚や聴覚の共有が出来るので、獣の形をしていれば狭い場所や遠くへの偵察に役立つであろうし、人型であれば本人の代わりに労働させる事が可能となるだろう。

 この研究が認められればアレクが魔導師として認められる事となる。師としてミリアも評価される事になり、それによって少しでも恩を返せればと思うのだった。


「それにしても、安定化にはもう少し工夫が必要だな」


 アレクの目の前にはゴブリンの魔石を使用した使い魔が佇んでいる。魔物と異なり素材が土で出来ている為か本物のゴブリンに比べて重鈍である。その代わりに力はそれなりにあるようで、アレクと同じ位には重い物を持てる。 

 しかし、持続時間が問題である。現状、ゴブリン型の使い魔が形を保てるのは三十分程度となっていた。それを過ぎると魔石の魔力を使い切り形状を維持出来なくなる。


 原因は魔物と違い骨格も筋肉も無い為だろうと推測していた。死んだ魔物の死骸を用いた事で解決できた事で問題点は解決出来るのだが、やはり死骸を用いるのは世間的に受け入れられないだろうとミリアに言われたのだ。

 人工骨格や人工筋肉を作り出すことが出来れば良いのだろうが、それを作り出すには知識が圧倒的に足りず断念した。仮に可能だとしてもコスト的に高くなりすぎるであろうし、必要に応じて即座に使い魔を作り出す事も出来なくなる事からその方法は諦めざるを得ない。


「骨格だけでも魔法で作り出す事が出来れば少しはマシになるかな?」


 使用する魔石を制限して、それに応じた魔方陣を使用することである程度は解消出来るだろうとアレクは考える。しかし、目的に応じて使い魔を制作出来ない事になり、これもやはり魔術師受けが悪くなるように感じられた。


「やっぱり魔石がどうやって魔物の形状を決めているのかを知らないとこれ以上改善は無理かなぁ」


 根を詰めていた為か、気付けば周囲はすっかり暗くなっていた。アレクは大きく伸びをすると、道具を片付けて研究室をあとにした。


●


 その夜もアレクは何時もと同じ時刻にダンジョンへと向かう。

 昼間は多少なりとも出入りのあったダンジョンの入り口だが、夜間は魔法による封印だけで人気が全く無くなる。月明かりすら無い暗闇の中をアレクは光源を持たずに迷う事無く進んで行く。

 誰も周囲に居ないことを確認しつつ施されていた封印を一時的に解除すると、開いた扉から中へと入って行く。扉が自動で閉まり完全に閉ざされた闇の中でアレクは初めて口を開く。


「《眷属召喚》ツヴァイ、ドライ、キャトル、フュンフェ」


 アレクが眷属の名を順に告げると、その言葉に従い周囲の闇から次々と異形なる者達が姿を現す。


「やっと夜になったのか。昼間はやることが無くて暇だったぜ」


 実体化と同時に軽口を叩いたのは、骨鎧(ボーンアーマー)姿に両手剣を持った《スケルトンファイター》のドライである。


「確かに。主のお役に立つことこそが我々眷属の存在意義であるゆえ」


 そのドライの横で頷いているのは、同じく骨鎧姿で中型の盾とロングソードを携えたツヴァイだ。


「ほぼ毎日呼び出して貰えるだけ二人はまだいいじゃない! 私たちなんて数日に一度しか喚んで貰えないのよ?」


 そんな二人に対して怒っているのは見た目は十歳の子供に見える《リッチ》の双子の姉キャトルだ。その後ろでは弟のフュンフェが同意とばかりに頷いている。

 姉弟が不満をこぼすのも当然かもしれない。よほどの事が無い限り前衛であるツヴァイとドライが居れば、後衛はアレク一人で十分なのだ。しかし、それでは姉弟の不満が募るので、時折召喚して双子の機嫌をとっていた。


「今日は最下層。しかもコアのある場所を探索するからね。何があるか分からないから出来るだけ僕の魔力は残して行きたいし、サポートはキャトルとフュンフェに任せるよ」


 アレクの言葉に、双子の姉は任せてとばかりにどこからともなく取り出した大鎌を肩に担いだ。小さな体躯に対し大きすぎるその武器は決して飾りでは無い。姉弟は魔法だけでは無くその大鎌を振るい前衛としても戦うこともできるのだ。


「お父様。アインが出して欲しいと訴えています」


「ん? ああ、ごめん! 今出すから」


 いつの間に姿を現したのか、アレクのすぐ横には半透明な体のアンが浮かんでいた。

 アンからの指摘に、アレクは腰に着けたバッグの中で出たくて暴れていたアインにようやく気付く。

 アレクがバッグを開けると、中からは握りこぶし程の大きさのアインが飛び出した。地面へと着地すると、一瞬で一メートル程のサイズへと変化し大きく伸びをした。


「さて、今日はこのメンバーで最下層のコアを目指す事にする。皆よろしく」


 アレクはそう告げると、クリスタルを用いて最下層である十層へと転移した。



 初めて足を踏み入れた十層は前までの層に比べて天井が高く十メートル程度あるように見えた。

 道幅に比べて天井が異様に高いのには理由がある。事前に調べた情報では、この層には飛行型の魔物が出現するからだ。

 アレク達が奥へ進むと早速何かが羽ばたく音が聞こえてきた。

 現れたのは大きな蝙蝠の姿だった。幅二メートル程もある蝙蝠が三体連なって向かって来る。


「フュンフェとキャトルは魔法で撃ち落として!」


 アレクの指示に従ってリッチの二人は蝙蝠に向かって魔法を唱えようとする。その二人の射線を妨げないようにスケルトンの二人は蝙蝠が姉弟に近づかないようにガードするように動いた。


「《サンダーウェブ》!」


 リッチ姉弟から放たれたのは雷系の魔法によって蝙蝠は身体を痺れさせてフラフラと落下してくる。それに動きを合わせてツヴァイとドライが手に持つ武器でとどめを刺す。

 眷属達の連携は無駄が無く、アレクが手を出すこともなく奥へと進んでいく。

 ダンジョンは下層へ進む度に狭くなっており、一層に比べると半分程の広さであると言われている。それ程時間を掛けることなくアレクは中心である場所へとたどり着くことが出来た。

更新がまたまた開きました。お待たせしており申し訳ありません。

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