百話 日常
およそ半年ぶりとなります。更新が途絶えて申し訳ありませんでした。
色々ありましてお待ちいただいていた皆様にはご迷惑をおかけいたしております。
半年という期間が空いた事により、百話を書き直して再投稿させていただきます。
季節は秋が過ぎ、アレクが王都へと移り住んでから二度目の冬を迎えようとしていた。
あと二ヶ月もすれば十五歳の誕生日を迎え、アレクも晴れて成人となる。
クラスの中では既に成人を迎えた者も出始めており、チームメイトではランバートやエレンが一足先に成人を迎えた。リールフィアは来月が誕生日な為、アレクが一番遅く成人を迎える事となる。
「学園も後五ヶ月で卒業か……」
アレクは部屋の窓から空を見上げながら呟く。
家族を失った時は途方に暮れたものだが、幸いにも周囲の人に恵まれて過ごすことが出来た。
ミリアという師に恵まれたこともあって、本来学園で学ぶ以上の魔法を習得することが出来た。学生という身分の中では並ぶ者の居ないだろうとミリアからもお墨付きを頂いている。
恐らく、冒険者としてもある程度はやっていける実力もあるだろうとアレクは考える。
しかし、親の敵である盗賊団を捜す旅に出るには未だ準備が万全とはいかないのが現状である。
師であるミリアからは王都に居る内に魔導師の資格を得るべきだと言われていた。
魔導師となれば平民として冒険者を生業とするよりも上の身分が保障される為、これから旅をするのに役立つだろうと言うのが理由である。
魔導師と認められる条件の内、全系統の魔法を習得する事は終えていた。残る条件は何か有用な魔道具を作って認められれば良いのだが、そちらはもう少しの所で躓いている。
アレクが研究していたのは、使い魔を制作する事だった。ファンタジーの定番であり、魔法使いが必ず使役している動物達の事である。
しかし、この世界ではエルフ達の精霊を除き、魔法使いが使い魔を保有していない。アレクはそれを作り出そうとしているのだ。
とは言えども、これはアレクにとって浪漫を追い求めるような事であり、卒業までに目処が立たなければ別な魔道具を提出することも視野に入れている。
そして次の問題は、アレクの今の能力が果たして世間で通用するのかという点である。
眷属達を召喚して戦うのであればそれなりに戦えるとエルフの子供達を救い出した一件で証明出来た。しかし、他人の目を気にしなければいけない状況下では眷属を気安く召喚出来ない事が想定される。そうした場合において、アレクのみの戦闘能力でどこまでやれるのだろうと不安に思うのだ。
アレクは魔法使いであり、身体能力自体は決して高くない。不死という特性を持っているが故に負ける事は無いが、あまりそれに頼った戦い方をしては周囲を誤魔化すことが出来なくなってしまう。
少なくとも攻撃を避けたり防げるだけの動きが出来なければ、家族の敵を取るどころか、冒険者としてもやっていけないだろう。
「フィアはついて来てくれるって言ってるけど、眷属の見た目も考えないとなぁ」
そう独り言を呟きながら、アレクは懐から懐中時計を取り出して時間を確認する。
授業が始まる時刻が近づいているのを確認すると、アレクは深く息を吸うと椅子から立ち上がった。
●
昼下がり、いつもの四人で他愛も無い話をしていると、雑談の流れで冒険者として登録するしないの話になった。
「二人は冒険者ギルドに登録しないの?」
アレクがランバートとエレンにそう尋ねると、二人は顔を見合わせてから首を横に振った。
「俺は騎士団に入るから冒険者ギルドに登録する意味が無いんだ」
「私も魔術師団に入るつもりだから。冒険者として活動する予定は無いわね」
二人とも卒業後の進路が決まっているらしく、あっさりとそう言われてしまった。
騎士団や魔術師団は国家が運営する組織であり、安定した収入が得られる為人気のある職だ。将来目指すは近衛騎士や宮廷魔導師だろうか。
貴族であり学園での成績も優秀な二人は、既にそれぞれの団から内定を貰っているようだ。
「そうか……じゃあ卒業すれば会うことも難しくなるね」
二人とも二年近く同じチームで行動を供にしてきた仲間であり、いずれやって来る別れを思うと寂しさを覚えた。
そう呟いたアレクの肩をランバートが軽く叩いて励ます。
「おいおい。今生の別れみたいに言うなよ。四人が揃うことは無理かもしれないけど、俺やエレンの休みの日に会いに来るくらい出来るだろ?」
「そうね。最初の年は無理かもしれないけど、騎士団でも魔術師団でも希望休くらい取れる筈だし。連絡を取り合えば四人揃うことも不可能じゃないわ」
エレンによれば、どちらの団でも入った年はまともに休みなど取れないらしい。次にこのメンバーが一堂に会するのは早くとも二年目以降になるだろう。
「それこそ、アレクは冒険者になるって聞いてたけどフィアはどうするんだ?」
ランバートがそう言ってフィアに卒業後の予定を聞いてきた。
「私もアレク君と一緒に冒険者になるつもり。お父様の領地って未開拓地に接した辺境だから、私も冒険者として力になれればなって」
フィアの家族が住むザンバート領では領地、ひいては国土を拡張する為に領主自ら未開拓地の魔物と戦う事もある。貴族といえども、戦う能力があるならその力を活かすべしという家訓らしい。
そんな父や兄を見て育ったフィアも僅かなりとも助けになればと、戦う技術を得るべく学園に通う事にしたのだった。
「卒業してもアレク君と一緒に組んでいたいしね。いずれ一緒に領地に来てくれればいいなとは思っているけど」
フィアの思いにアレクは曖昧に微笑む。自らの目的を果たすまでにどれほどの年月がかかるかわからない今は下手に約束は出来ないからだ。
「そうだね、いずれはね」
そう言葉を濁して答えるしかなかった。やがて教室にミリアが入ってきた事で会話は中断され、皆は席へと戻っていった。




