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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
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バールムンク対サアラなのです

ウイングは邪眼を発動させる。ウイングの邪眼は自身の内側に作用するものだ。

神経加速。世界が遅くなる。

同時にルクトレイアの瞳も光を放つ。

身体強化。ルクトレイアがウイングの加速した世界でもなんら問題ない速度で迫る。

魔王族の邪眼は自身に作用するものが多い。

他者の動きを一瞬だけ止めるテセラスタや、破壊の視線を持つエリュセイグドは、魔王族の中でもかなり強力な邪眼持ちに分類される。

しかし、外に向ける視線の効果は大量の糧を使ってしまうので、燃費が悪いとされている。


ルクトレイアの巨大剣はまっすぐにウイングの頭頂を捉えて振り下ろされる。

ウイングも問題なくそれを受け止め……ようとして、その剣がトノルジンバから贈られた銘剣だと思い出して、慌てて受け流した。

下手に受けると、サアラが変じた精霊剣では焼き切ってしまうかも?と考えたのだ。


結果的に、その判断は正しかった。

巨大剣はルクトレイアの膂力と邪眼の力を併せたことで、凄まじい威力を見せた。

刃先が地面を叩いた瞬間、そのエネルギーに耐えられず、地が爆発したのだ。もちろん刃先には傷ひとつ付いていない。

触れただけで鉄をも融かす熱量を誇るサアラの変じた精霊剣でも、バールムンクには痛痒を与えられなかった。


ウイングはその爆風に吹き飛ばされる。

もし、まともに受け止めていたら、ウイングは叩き潰されていたかもしれない。

吹き飛ばされながら、地面を削るようにして急制動を掛けたウイングだったが、ルクトレイアは巨大剣を片手で支えると、一歩踏み込み、自身の腰に剣の腹を当てるようにして、てこの原理で簡単に大地から刃先を抜いた。同時にその回転を牽制代わりにしているらしく、ウイングが跳び込む隙をも潰す。

遠心力がついた巨大剣を上方で両手持ちに直すと、さらに踏み込みながら斜め上から振り下ろしてくる。

受けられない以上、ウイングは避けるしかない。しかし、神経加速を使った自分と同等のスピードによる踏み込みだ。

無理に内側に入り、威力を殺すことも考えたが、パワーがあり過ぎて、威力を殺しきれないだろうと悟る。

ならばと、ウイングは翼を開いてスピードを上げる。

風がバックステップに合わせて身体を押す。


巨大剣がまた地面を爆発させながらめり込む。


「ちっ!」


ルクトレイアが感じぬ手応えに舌打ちする。

もう一度、とルクトレイアが地面から刃先を抜いて、剣を振り下ろそうとした時、ウイングが叫んだ。


「大地のグラウンド・ウォール!!」


思念だけで魔法を使うことはできるが、これはウイングの様式美のようなものだ。

同時に、偶然ではなくウイングの起こした必然であると証明するためでもある。


ルクトレイアの踏み込んだ足元がむくむくと盛り上がる。

踏ん張りが効かなくなり、巨大剣がブレる。

鋭さを無くし、その重さだけで壁にめり込んだ巨大剣が、一瞬とはいえ止まった。

だが、ルクトレイアは手にした巨大剣を壁の奥まで力任せに差し込み、そのまま突撃する。


「ぬあああああっ!!」


ルクトレイアは厚みのある壁を身体ごと突き破った。


「なんとっ!」

「おおっ!」


トノルジンバや魔鬼族の兵士がどよめく。

しかし、壁を突き破ったルクトレイアはウイングを見失った。それは、周りで見ていた者もそうである。


ウイングは直上にいた。

波動の精霊ラッシュがウイングの思念を受けて、その背面に強烈な光を生む。

ルクトレイアはそれを感じた瞬間、目を閉じて光源のあるだろう位置目掛けて巨大剣を振るった。


「僕の勝ちなのです」


そう声が聞こえて、目をやられていた魔鬼族の兵士たちが、声のするほうを見る。

視力を回復した者たちが見たのは、巨大剣を振り切った姿のまま固まるルクトレイアと、その首に伸ばした爪を当てているウイングだった。

精霊剣を振るえば、易々と首を断てただろうことが分かる。

どれだけ再生力に優れた魔王族でも、首を切り離されれば死ぬ。だから、わざと剣を使わず爪を当てるに留めた。

それが分かる。


「鬼姫様が……負けた……」


ウイングにしてみれば能力的な相性の問題だった。

もし、ルクトレイアが神眼のような気配を読む能力を持っていたら、こう簡単にはいかなかっただろう。

気配を読めるのなら、目くらましの光を放っても、急降下するウイングを狙っただろうが、ウイングはそれはないと確信していた。それは、ルクトレイアの舌打ちだ。

一瞬、ウイングを見失ったから出た舌打ち。

あれで、確信したのだ。ルクトレイアの能力は筋力や瞬発力を上げても、感覚器には及んでいない、と。


「くっ……お前の勝ちだ……ウイング」


巨大剣から魔力を抜き、地に落として、ルクトレイアの瞳が放つ光も消えた。


「じゃあ、ゴブリンたちとサヴァル兄様を馬鹿にしたことを訂正して下さいなのです!」


ルクトレイアはウイングを認めたのか、素直に従った。


「ゴブリンたちへの差別を口にした。訂正する。

それから、サヴァルマーナ兄様にも、お前にも、悪いことを言った。この通り謝罪する」


頭を下げる。


「私とて、武功だけを求めて来たつもりはない。一層は守らねばならないと思う気持ちは同じつもりだ。

だが、魔鬼族の軍を預かる身では、好きに動く訳にもいかず……兄様やウイングが好きに動いているのを見て、その、意地の悪いことを言ってしまったのだ……すまない……」


「まあ、分かってくれればいいのです……」


あっさりと謝罪を口にする姉に、ウイングは何とも言えない気持ちになる。

そもそも、姉は事情を知らない。多少、穿ったものの見方をされても仕方のないことでもあるのだ。

とはいえ、事情を説明すれば姉を巻き込む。

それを避けたいウイングとしては、こちらから折れる訳にもいかないのだ。


それから、ウイングたちはサヴァルマーナがいるであろう場所と『デルズランド軍』の陣容といった情報、ルクトレイアの好意によって少々の補給物資などを受けた。

さらには魔鬼族たちが、他の魔王候補者と共闘するのも厭わない、鬼姫様の思う通りに戦って欲しいと言い出したのは、鬼姫様の歯痒い思いの言葉を容れたからか、ウイングという強力なライバルの出現に、なりふり構わず武功をと考えたからかは分からないが、もしかしたらその両方なのかもしれない。


自陣へと戻る道すがら、トノルジンバがようやく合点がいったというように頷きながら、ウイングに言う。


「精霊武装に、単一呪文の魔法行使、ウイング様の力の秘密がようやく分かりました」


「違うですよ、無詠唱で使えるです」


「なんとっ!」


「でも、精霊剣と無詠唱のことは秘密にしておいて欲しいです」


「ウイング様が言われるなら、もちろん誰にも言いませんとも」


ウイングはこの戦で武功を立てることで魔王候補者争いに名を連ねることになる。

目立ちすぎれば、兄の陽動が無駄になるが、ある程度の力を示さなければ魔王候補者として見て貰えない。

さじ加減ひとつなのだ。

兄も単一呪文の行使はつまびらかにしているので、その程度ならば良いだろうという目算だ。


こうして、姉との邂逅を経て、ウイングたちはサヴァルマーナとの合流を目指して動くのだった。

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