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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
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パーティーなのです

 魔王城のパーティーはとても煌びやかだ。

 会場には魔法の灯りがいたるところに点いている。

 蝋燭で明るいシャンデリアの周りをオーロラのような光のヴェールがゆったりと回る。

 室内に設えた噴水も、それ自体に光魔法が使われているらしく、水の揺らめきに併せて反射した光が幻想的に色を変え、壁に埋め込まれた光の魔法陣が間接照明になっている。

 庭師の魔竜族ヴィ(ヒュー)リーが育てた草花も、料理長で魔鬼族のボルディーノが作る華やかな九層名物料理各種も彩り豊かで、さすが魔王城と思わせる豪華さだ。

 普段はそれほど豪華な食事を食べていない魔王とその家族だったが、やはり各層からの客を迎えるにはそれなりの物が求められるのだろう。


 ウイングは失態を犯さない程度にはマナーを身につけていたが、わざとマナーを気にせず食べている。

 ダメな魔王候補でいなければならないからだ。

 正直、貴族の紳士・淑女は現状子供だからと笑って済ませているが、皿の料理を掻き込むように食べる父や兄は陰で冷笑を浴びている。

 この二人が素でやっているのか、それとも自分のようにわざとやっているのか、分からないウイングだった。

 ただ三人並んで、マッシュポテトの肉味噌和えのような料理を一心不乱に掻き込んでいると、他の客から「親子ですなぁ」と呟きが漏れる。


 未だウイングは兄とまともな挨拶を交わしていない。


 何しろ次期魔王候補の中で筆頭に数えられる兄である。

 九層の貴族や各階層の主だった者から挨拶を受けるだけでも大変なのだ。

 それは父もウイングもウイングの付き添いをする母も変わりない。


 姉は残念ながら、邪眼が発露していないので魔王候補ではないが、魔王候補を生む素質充分と見られているようで、やはり挨拶で忙しかった。

 何しろ千名以上の魔族が集まっているのだ。


 パーティーも終盤になり、ようやく時間が取れる頃になって、食事にありつける。

 父の、まずは食おう!積もる話はそれからだ!という言葉に全員が従っている状態である。


 今日は各階層代表が土産として持ってきた食材も次々に並べられているので、ウイングとしては興味があちこちに目移りしてしまう。

 立食形式なので、次々と飛んで回りたいところなのだが、あまり家族から離れると夜魔族メイドのディサドラにそれとなく誘導される。

 まだ、全ての挨拶が終わっていないというのが理由だ。

 一応、ウイングもホスト側なので、居場所が分からないと困るのだそうだ。


 ある程度、お腹が満たされてくると、奥の方にあるデザートエリアが気になってくる。

 しかし、食事の合間にも挨拶したいという者がちょくちょく来るので、タイミングが合わず行くにいけない。


 そわそわしていると、近衛騎士団長で叔父のバルディラントが手に山盛りのデザートを持ってやってくる。


「お、それうまそうだな。一個くれ!」


 父のフォークが当たり前のように突き出される。

 だが、それをひらりと避けて、皿はウイングの前に出される。


「兄上、これはウイング様のために持ってきたのです。

 欲しければウイング様に許可を取ってください」


 思わず叔父をキラキラした目で見上げるウイング。

 バルディラントは軽くウイングにウインクして見せる。


「ウイング、父にその『アクマルイの果実』を一切れくれ!」


 父は言うと赤いメロンのような果実にフォークを伸ばす。

 またも、するりと皿を避けるバルディラント。


「どうしますか?」


 ウイングはひとつ頷く。

 それから、ディサドラに少しだけ中座してもいいか聞く。

 ディサドラは辺りを見回して、少しだけですよという風に食べ終わった皿を受け取った。


「叔父さん、ちょっと待ってて欲しいです」


 にこやかに叔父は頷く。


 ウイングは家族用の控えの間に行って、剣を三本取ってくる。

 機会を見て渡そうと用意してあったのだ。


 剣を持ってくるウイングを見て、叔父はニコニコだ。


「これお土産なのです」


 叔父はディサドラに皿を持って貰い、大仰に片膝立ちになると両手で剣を受け取る。


「おお、賜りましょう!」


 叔父は、見てもよろしいか?と言って、剣を抜く。


「これは素晴らしい……」


「風のマナと親和性が高い剣だと思うです。

 叔父さん用に選んだですが、どうですか?」


 叔父が詠唱なしで少しだけ風のマナを剣に呼び込む。

 魔法に慣れれば、宝石(ジュエル)級の魂の器を持つ叔父ならば、詠唱なしで風のマナを呼び込むことも可能だ。

 もちろん、それが威力ある魔法として結実するには、詠唱なしなど精霊持ちでもなければ無理な話ではある。

 だが、お試し程度に呼び込んだ風のマナは、剣を中心に微風を発する。


「おおっ!なんという……。

 これだけの逸品とは……」


 満足そうな叔父を見て、ひと安心なウイングだ。


「おいおい……俺の剣の方が凄いんだからな!」


 客への自慢のため、今も帯剣している父が、自身の剣を抜いて叔父のものと並べると大地のマナを呼び込む。


 大地のマナは剣を淡く光らせ、硬度を高めたことを知らせる。


 どちらも素晴らしい剣だ。


 その内に客たちが集まって、その剣の品評会の様相を呈してくる。


 ウイングは姉にも剣を渡す。

 取り回しが楽な薄刃剣(サーベル)だ。


「あら、私にもお土産?」


 頷くウイングに姉が微笑んで受け取る。


「ありがとう。これでアホな求婚者を切り刻んでやれるわ」


「あ、あの、それは……」


 ウイングが慌てて何か言おうとすると、姉のリオラディッタは悪戯っぽく笑う。


「冗談よ。

 でも、ほんとに吸いつくように手に馴染むのね。

 ありがとう」


 姉に頭を撫でられる。

 ちょっとはにかむウイングである。


 姉の剣は水のマナが舞う剣なので、相性が良いのは確実だ。

 ただ、姉は父や叔父ほど魔法に精通していないので詠唱なしに水のマナを呼び込むとはいかない。


「水のマナよ、我が剣に集え……」


 姉の剣から雫が落ちる。


「あら、お父様の言うとおり。

 本当に親和性が高いのね……」


「リオラディッタはおてんばだから、それで狩りに行くとか言いだすなよ」


 優しげな声は兄のものだ。


「やあね、サヴァルマーナお兄様、それくらい魔王の娘としては習い事の範疇ですのよ」


「まだリオラのおしめが取れない頃に無理やり、広い世界を見せてやるっておぶって狩りに連れ出したのはあなたでしょう、サヴァル」


「それはそうですが、あの時のリオラディッタのはしゃぎようを見れば、おてんばに育つのは火を見るより明らかでしたよ」


 母の声に答える兄はとても穏やかだ。

 それから、兄はウイングに目を移す。


「はじめまして、ウイングだね。

 僕はサヴァルマーナ。

 生きてる中では、一番上の兄だよ」


「は、はじめましてなのです。

 ウイングです、お兄様」


 ウイングは、ペコリと頭を下げる。

 年の差は五十歳以上ある。

 魔王族は長命な割に青年期がとても長い。

 未だ十代と言われても信じられる程に若々しい兄なので、ウイングとしては接し方をどうしたものか迷うが、兄の穏やかさに幾分か助けられる。


「もしかして、その剣はウイングの剣かな?」


 ウイングの持つ最後の一本を見て、兄が問う。

 ウイングは慌てて首を横に振る。


「あの、サヴァルマーナお兄様がどのマナと親和性が高いか知らなかったので、とりあえずなのですが、よか、良かったらお兄様にと思った……です」


 言って、両手で持った剣を兄に渡す。

 兄に渡したのは火のマナと親和性が高い剣だ。

 一般的に地下九層では火のマナに親和性が高い者が多いと言われている。

 誰が取った統計かは知らないが、四割が火、二割が風、一割が水と大地、その他が二割と言われている。


「これは、魔法との親和性が高い剣なの?」


 兄の質問に頷いてから言葉を添える。


「火のマナと相性がいい剣なのです……」


「へえ……火の魔法なら得意な方だよ。

 親和性が高いのは風のマナだけどね」


「あ、それなら後で風のマナと相性が良い剣も渡すです」


「それは、嬉しいね。

 でも、二本も貰ったら悪いよ……」


「いいのです。

 喜んで欲しくて買ったのです!」


「本当かい?それならありがたく貰っておこうかな」


 言って兄も、姉がそうしたようにウイングの頭を撫でる。


 ウイングはなんだか嬉しくて、にやにやしてしまう。

 母はそんな光景を微笑ましく見ていた。


 だが、それを打ち破る出来事が起こる。


「ぜってー俺の剣の方が優秀だ!」


「兄上は剣の目利きなんてできないでしょう?

 悪いですが、そこは譲れませんよ!」


「魔王様方には悪いですが、優秀な剣ということなら、この剣伯爵の異名をとるトノルジンバの剣が一番でしょうな!」


「なんだと!」

「なにを!」


 いつの間にか大人たちの話題は剣談議になっていたようで、あわや一触即発という雰囲気である。


「まあまあ、そういうことでしたら戦ってみるのがいいのではないですかな?」


 七層魔性族、象頭鶏とさかのジーガンが提案する。


「おお、その通りだ!

 我の剣こそは、という者があれば名乗り出るがいい。

 俺が息子から貰った剣こそが最強だと証明してやる!」


「魔王様、どんな剣でもよろしいか?」


 父の言葉に一人の貴族が挑戦的に聞く。


「もちろんだ!魔剣だろうが精霊剣だろうが、全て相手してやる!」


「兄上!?」


「おお!これは頼もしい!

 では、参加者を募って明日トーナメントでも致しましょう!」


 興が乗ったジーガンが参加者を募り出す。


 そんなやりとりを尻目にウイングに話し掛けてきたのは、極北旅団の団長、魔性族のワルトメルガとその副将、多腕のブラーガスだった。


「お久しぶりですな、ウイング様。

 サヴァルマーナ様も随分と立派になられたようで……」


「ワルトメルガさん、お久しぶりなのです」


「おお、ワルトメルガ団長!

 来て下さったとはありがたい。

 極北は相変わらずですか?」


「数メグリ(年)前に『原初の魔物』が起きた時には、もうダメかと腹を括りましたが、ちょうど魔王様とウイング様が居合わせまして、魔王様には返しきれないご恩を戴いてしまいました……」


 チラリ、ワルトメルガが視線を送れば魔王の痛々しくも失った角の痕が見える。


「いえ、魔王として当然のこと、父は本能的に戦いを望みますから、後悔があろうはずもありません。

 お気になさらず……」


「はっ!有り難き幸せに御座います」


「それはそうと、ワルトメルガ団長もかなりの目利き、剣にはうるさいのでは?」


「はっはっはっ……。

 魔王様は相変わらず剛毅なお方ですな。

 魔王様に進呈しようと持ってきた『原初の魔物』の牙より削り出した剣があります。

 その力をお見せしようかと……」


「僕ももらったです!

 あれは良い剣なのです!」


 ウイングが割って入る。


「へえ、それは楽しみですね!」


「サヴァルマーナ様はお出になりませんか?」


「そうですね。ウイングから貰った剣があるので、腕に自信はありませんが出てみようと思いますよ」


「あら、お兄様も出られますの?

 当たっても手加減できませんわよ?」


 姉のリオラディッタが自信ありげに笑う。


「おや、リオラディッタも出るのかい?」


「ええ、せっかくウイングがくれた剣の有用性を示す場ですもの、叔父はともかく、お父様だと気負い過ぎて負けかねませんから……」


「なるほど、そういう可能性もあるか……」


 兄が感心したように頷く。


「さあ、他に参加者はおりませんかな?」


「ジーガン様。三名追加でお願いしますわ!」


 姉が手を挙げる。


「おや、リオラディッタ様。

 ワルトメルガ殿にサヴァルマーナ様もですな」


 こうして急遽、翌日に剣のトーナメントが行われることになる。


 大変なのはメイドのディサドラを始め城で働く者たちだ。

 翌日には会議を予定していたので、客の大部分は泊まるために街の宿をとっていたりするが、強さ自慢、剣自慢が一堂に会する催しとあって、せめてひと目見ようと帰らずに泊まることになった者が大勢いるのだ。


 ベッドを揃えるだけでひと苦労というものだ。


 今日はレンバート先生と話すのは諦めようとウイングは嘆息した。



付録


色々単位。

時間

メグリ(年)

マワリ(日)

三十マワリ(月)


季節は

メブキ(春)

シゲリ(夏)

ミノリ(秋)

ネムリ(冬)


一キザミ(一時間)

一カケ(一分)


あまり分かりにくい単位を使うと自分が混乱するので、このようになっております。


長さ

グミョーン(km)

ミョーン(m)

ミョン(cm)


重さ

ググト(t)

グト(kg)

チト(g)


地下世界のお金

ルーン

ルーン百枚でジン


お金には一ルーンに一マナが封入されている。

魔王城にある特殊技術の産物なので偽造は困難。

逆に言えば、マナの封入物が偽造できればそれは本物。

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