伝えたかった事
「あのっ……」
「なに?」
「すっかり忘れていたのですが、ジェイドは……」
「ジェイドは、たまたま居合わせただけなのだろう? オーベルが回復薬を飲ませて、一緒に連れて来たよ」
「生きて――良かった」
あの状況で助からなかったとは思わなかったが、少し気になっていた。
「そんなに彼の事が気になる? 司教の息子だった男だよ?」
「えっと……。彼は私に何かを伝えようとして気絶してしまいました。その何かが気になるのです」
「その何かは、重要なの?」
「分かりません」
「アイリス? ファーゴ王子には、本当に何もされていないの?」
私が頷くと、エリオット様は私の髪を撫でていた手を止めた。
「どこにキスされたの?」
エリオット様の真剣な眼差しに、私は狼狽えつつも自分の唇を指差した。
「ん……」
途端にエリオット様は、噛みつくようなキスをしてくる。
「エリオット様?」
唇を離すと何度も何度も口づけをしてくるので、どうしたらいいのか困ってしまう。
「私は……。私自身が、こんなに心の狭い人間だとは思わなかったよ」
エリオット様は、私に抱きつくと震えていた。心配をかけてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
エリオット様の背中を撫でていたが、しばらくすると部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「アイリス様?」
サラの声が聞こえる。どうやら、買い物から帰ってきたようだ。私はエリオット様から離れると、立ち上がありドアの近くへ行った。
「サラ、起きてるわ」
サラがドアを開けて入ってくると、エリオット様がいることに驚いたのか、立ち止まってしまう。
「お邪魔でしたか?」
後ろを振り返ってエリオット様を見上げたが、エリオット様は、いつものエリオット様へ戻っていた。
「さて。こんな時間に戻ってきたということは、オーベルは振られてしまったのかな?」
「どうでしょう。お一人の方が、良かったみたいですよ」
エリオット様の言葉に、サラは半眼になりながら答えていた。
「手厳しいね」
「そんなことは……」
サラが珍しく言い淀むと、エリオット様は私に就寝の挨拶をして、部屋から出ていった。




