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プロローグ

 公爵令嬢のアイリス・グレイ


 ある時、前世で日本人だったことを思い出した私は、乙女ゲームの中に登場する『白薔薇シリーズ』悪役令嬢こと公爵令嬢のアイリス・グレイに転生した事に気がついた。


 前世の記憶を持つ私は、悪役令嬢の悲惨な結末を思い出し、何とか結婚を阻止しようとしていたが、幼なじみの王太子エリオット様に説得され、紆余曲折を経て、とうとう結婚することになったのだった。


 正直、結婚することに不安がなかった訳ではない。今はエリオット様を信じ、前に進もうと思えるまでになったのだ。


 ゲームと現実に違いを感じながらも来月、私はエリオット様と結婚式を迎える。


 結婚式の準備で忙しい私は、数ヶ月前から城の客室に寝泊まりしていた。



*****



 今日は、結婚式に着るドレスの採寸をするために、朝から城の衣装部屋にメイドのサラと来ていた。


「本当にようございました。無事に結婚式を迎えられそうで、何よりです」


 部屋の中に入ると、お針子達が駆けずり回っていた。


「おはようございます、アイリス様!! すぐに、衣装をお持ちしますね!!」


 お針子達のまとめ役、タニアはいつも元気いっぱいだ。将来は自分の店を持つことが夢だと言っている。


「タニア、いつもありがとう。そこでいいかしら?」


「はい!! ありがとうございます」


 私は結婚式用のドレスを着ると、お針子達が周囲に集まってきたので、動かずに立っていた。


 試着してみて、少しずつ手直ししていくのだ。かれこれ、もう10着以上試着している。手直しも一着につき、3回以上はしていた。国内でのパレードもあるため仕方ないのだが、こういった公務を王妃になったら、何度もこなさなくてはならない。そういったことを考えると、王妃になるのは正直ツラいものがある。


 今日もお針子達は素晴らしい動きで、10分も経たないうちに採寸と仮縫いが終わってしまった。


 お針子達の素晴らしさに感嘆の溜め息をもらすと、メイドのサラが声をかけてきた。


「アイリス様、朝早くからお疲れでしょう? 別室にお飲み物をご用意しております。時間までおくつろぎください」


「ありがとう、サラ。いただくわ」


 サラは、公爵家で小さい頃から私についてくれている専属メイドだ。小さいことにもすぐに気がついてくれるので、いつも助けられている。


「ハーブティー、オレンジの味だわ。新しいのかしら?」


「はい、新商品『オレンジティー』でございます」


「美味しい‥‥‥」


「アイリス、採寸は終わったの?」


 気がつくと、いつの間にかエリオット様が側に立っていた。エリオット様も近くの部屋で採寸をしていたらしく、上着を片方の腕に掛けると、テーブルへ近づいてくる。


「はい。これから王妃教育を受けに行くところです」


「その前に、ひと休み?」


「サラが勧めてくれたんです。新商品の『オレンジティー』、美味しいですよ。エリオット様も、ご一緒にいかがですか?」


「ありがとう‥‥‥。私は大丈夫だ。すぐに行かなくてはならなくてね。書類が随分と溜まっているんだ」


「最近、お忙しいと聞いておりますわ。お身体にお気をつけくださいませ」


「ありがとう、アイリス。行ってくるよ」


 エリオット様が私の頬に口づけ、部屋から出ていくと、扉の前に立っていた護衛のジルも、エリオット様の後を追いかける様に部屋を出て行った‥‥‥。サラは私の隣に立って、ニコニコしている。


「サラ、何かいいことでもあったの」


「いえ‥‥‥。いつも仲がよろしくて、羨ましいですわ」


 サラが揶揄(からか)っているのが分かって、私は顔が熱くなるのを感じた。


「‥‥‥もう!! サラ、行くわよ」


「はい、アイリス様」


 サラは笑いを(こら)えながら、一緒に部屋を出たのだった。




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