結婚式終了後 その夜
とても短いです。
結婚式と披露宴、戴冠式やパレードなんかを終えて、夜も更けたころ、僕とルーナはようやくといっていいのか二人きりになった。
城の僕の寝室は、姉様がやったのか、母様がやったのか、或いは一緒にやったのか分からないけれど、大分飾り立てられていて、あちらこちらにピンクや白、赤の花が飾ってあって、いい香りがする。
ベッドの上にも、真っ白なシーツの上から、花びらがばらまかれていて、頬に熱が集まるのが分かった。
隣を見ると、シンプルな白い部屋着を着たルーナが、やっぱり顔を真っ赤にして、緊張している様子でもじもじと指を動かしていた。
「あのっ‥‥‥私、この日のために色々探してみたのですけれど‥‥‥部分的な変身に関する魔法やお薬はどうも上手くいかなくて‥‥‥ルグリオ様をがっかりさせてしまうかもしれません‥‥‥」
何を言い出すのかと思って緊張していたのだけれど、聞こえてきた内容に呆然としていると、ルーナは何を思ったのか、ぽつぽつと呟きを漏らす。
「お、お義姉様やお姉様たちのような立派なものがあれば良かったのですけれど‥‥‥」
「えっ」
ようやく意識が戻って来て、ついついルーナの胸元を見ると、ルーナはさっと慌てたように腕で隠してしまった。
リンゴよりも真っ赤に染めた頬で、おろおろとする花嫁さんが可愛くて、愛おしくて、僕はその頬にキスをした。
「大丈夫だよ」
ルーナはぽーっとしながら、小さい顔をほころばせた。
「いつも言っているだろう。そんなこと気にしたりしないよ。初めて会った9歳のころから、変わらず、いや、もっとずっと大好きだよ」
「私もずっと大好きです。旦那様になっても、国王様になられても、ずっとずっと大好きです」
甘い香りの中で、甘い台詞を交わしていると、なんだか恥ずかしくて、緊張して、もじもじしてしまって、見つめ合ったり、視線を逸らしたりしていた。
そういうことをするために、設計されている部屋らしく、いつも使う大きな浴場とは別に、この部屋の中にも小さくはないお風呂がある。
浄化の魔法を使った後にも、やっぱりさっぱりしたかったので、順番に使うことにした。
今更、一緒に使うことを躊躇う必要もなかったのだけれど、この後の事を考えたら、何だか恥ずかしかったからだ。
なぜか薄い扉の向こう側からは、水の流れる音が聞こえてきて、もう色々な想像が膨らんでしまって、一人で悶えていた。端から見れば、すごく気持ちが悪かったことだろう。
僕も身体を清め終えて戻って来ると、ベッドの上ではルーナがやっぱり緊張した様子でもじもじと悶えていたけれど、僕の姿を見つけると、身体を固めて姿勢を正した。
「君の麗しい唇に触れてもいいかな」
「ええ」
「君の心臓の鼓動を聞かせて貰っても?」
「もちろんです」
「僕の愛を受け取ってくれるかな」
「はい」
恥じらいながら、可憐に、愛らしく返事をするルーナが愛おしくて、僕は真っ赤に染まったルーナの身体を抱きしめながら、唇を重ねた。
「これからもよろしくね、奥さん」
「はい、旦那様」