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アリストパネース『蛙』に見るエンプーサ

ARISTOPHANES : THE FROGS.

Line 285 - 305 "Empusa"


エンプーサ Empusa を取り上げた最も古い文献が、この喜劇の台本になるようだ。その性質上、何処まで真面目に受け取ってよいのか甚だ疑問であるけれども、この台詞が喜劇として通じたということは、作者・演者・聴衆に「エンプーサとはそういうもの」とする共通認識があった事にはなろう。とすれば、この事についてもっと真面目な史料が有っても不思議ではないのだが、残念ながらそのようなものは遺っていない。


XA: XANTHIAS クサンティアース、ディオニューソスの下男

DI: DIONYSUS ディオニューソス、クサンティアースの主人


地獄へ向かうため、ディオニューソスはヘラクレスに、クサンティアースはその従者に扮している。

クサンティアース:左様、神かけて!見そなわせ、何やら聞きつけましたぞ。

ディオニューソス:何処、何処だ?

クサンティアース:後ろに。

ディオニューソス:後ろか。

クサンティアース:いや、前に。

ディオニューソス:では前に。

クサンティアース:何てこった、神かけて、デカい獣にありますぞ!

ディオニューソス:どんな奴か?

クサンティアース:無茶苦茶だ!何にでもなるのか……牛だと思ったらラバ、と思ったら今度はすげー美人な女。

ディオニューソス:って、何処だ?俺にも会わせろ。

クサンティアース:それがもう女じゃ御座んせん、犬になった。

ディオニューソス:そりゃエンプーサだな。

クサンティアース:どいつも顔一面、火と輝いておりましたが。

ディオニューソス:その足は青銅であったと。

クサンティアース:左様、海神(ポセイドーン)にかけて!断言しますが、もう片足は牛の糞で。

ディオニューソス:振り返った方がいいか?

クサンティアース:拙(やつがれ)もですかな?

ディオニューソス:(劇場に席を占めるディオニューソス祭司に向かって)祭司よ、貴方と共に酒を酌み交わす仲間に、どうか私も加え給え。

クサンティアース:ヘラクレス王よ、我等はきっと死んでしまいますぞ。

ディオニューソス:俺を呼ぶな、その名を口にするな、後生だから。

クサンティアース:では、ディオニューソス様。

ディオニューソス:いや、それはないだろ。いよいよもって。

クサンティアース:そのまま、おいでくだされ。此方へ、此方へ、旦那!

ディオニューソス:何なんだ、いったい?

クサンティアース:やりましたぞ!全てが上手く行きました、ヘゲロコスが言った通り「嵐過ぎ去れば、イタチもまた出る」と、我等も申してよろしいかと。エンプーサは消え失せました。

XA. Yes, by Zeus ! and lo, I hear some sound.

DI. Where, where is it ?

XA. Behind.

Dl. Go behind.

XA. But it is in front.

DI. Go in front then.

XA. Lo, I behold, by Zeus, a great beast !

DI. What sort of one ?

XA. Terrible ! It takes all shapes at least - at one time a bull, and now a mule, and then again a most lovely woman.

DI. Where is she ? Come, let me go to her.

XA. But no longer again is it a woman, but now (it is) a dog.

DI. It is Empusa then.

XA. The whole face shines with fire at all events.

DI. And it has a brazen leg.

XA. Yes, by Poseidon ! and another of cow-dung, be well assured.

DI. Whither then shall I turn ?

XA. And whither shall I ?

DI. (Addressing the priest of Dionysus, who was seated in the theatre.) Priest, preserve me that I may be your fellow-drinker.

XA. We shall perish, O King Heracles.

DI. Don't call me, man, I beseech you, nor declare my name.

XA. Dionysus then.

DI. Nay, that still less than the other.

XA. Go the way you are going. Hither, hither, master !

DI. But what is it ?

XA. Cheer up ! We have fared well in everything, and it is lawful for us to say, as Hegelochus said, "For after storms again I see a weasel." The Empusa has gone.

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